浜松医科大学 放射線診断学講座
五島 聡 先生 市川 新太郎 先生 棚橋 裕吉 先生
浜松医科大学医学部附属病院 放射線部
大庭 孝志 先生
肝胆膵疾患のいずれにおいても,原発巣の検出,質的診断,病期診断,治療効果判定,術後合併症スクリーニングには多相撮像による血流情報が必須となる1).悪性腫瘍患者においては治療後に経過 観察となることが多く,この際には門脈相での造影CT撮像が一般的である.原発性肝癌および転移性肝癌の検出についてはEOB・プリモビストによる造影MRIが推奨されているものの1),MRI検査のスループットなどの問題もあり,依然として造影CTは臨床現場で頻繁に用いられている.肝細胞癌においては肝動脈相での濃染に引き続き,門脈相もしくは平衡相におけるwash outや被膜濃染により質的診断がなされる.多血性肝細胞癌はもとより,乏血性肝細胞癌においても内部の多血化を検出することで治療対象となるため,肝動脈相の最適化は重要である.また手術,ラジオ波焼灼術,肝動脈塞栓術などの局所療法においても肝内の脈管との関係を明らかにすることは治療戦略において重要である.胆囊癌,胆管癌,膵癌においては,腫瘍細胞成分と線維性間質成分の割合により濃染パターンは異なる.腫瘍細胞成分が多い場合は肝動脈相での濃染を認めることが多く,一方で線維性間質成分が豊富な場合は平衡相で遷延性濃染を来す.いずれも切除範囲の決定や肝転移の検索のため,門脈相や平衡相も併せた診断が必要である.肝転移の検出において,造影CTの検出能には限界があるため,適切なプロトコルで撮像された造影CTにより疑わしい所見が検出されれば,積極的にEOB・ プリモビスト造影MRIを追加することが望まれる.
今回使用しているGE社製Revolution CTは0.625mm×256列の検出器を搭載している.従来の100倍とされる発光感度を有するガーネットシンチレーターと高性能ジェネレーターを用い,さらに高性能3Dコリメーターにより散乱線を効率的に除去している.このため0.25msecでのultrafast kV switchingによるデュアルエナジー撮像においても高性能な画質と精度の高い定量性を持ち合わせている.またGSI Xtream Smart Workflowを搭載することで,撮像中であっても同時並行計算を行うことが可能であるため,デュアルエナジー撮像においてもルーチン撮像に支障を来すこともない.さらに面検出器CTとして用いることも可能であり,Perfusionや4D-DSAなどの血流解析においても活躍している.こうした高い基本性能を持つなかで,新たに搭載されたDeep Learning画像再構成によりデュアルエナジー撮像や低電圧撮像においても良好なノイズ除去が可能となり,臨床での活躍の場が益々広がってきたと言える.
参考文献
1)画像診断ガイドライン2021年版.日本医学放射線学会編,2021,金原出版
イオプロミド注「BYL」に関連する症例をご案内いたします。
症例 イオプロミド注「BYL」
アテゾリズマブ+ベバシズマブ導入後の腫瘍血流評価の1例
浜松医科大学
Revolution CT True Fidelity 2.0 Edition With GSI Xtream
GE
2021
症例イオプロミド注「BYL」
ダイナミックCTによる肝門部領域胆管癌進展範囲診断の1例
浜松医科大学
Revolution CT True Fidelity 2.0 Edition With GSI Xtream
GE
2021
症例イオプロミド注「BYL」
ダイナミック造影CTにて典型的な画像所見を示した膵頭部癌の1例
浜松医科大学
Revolution CT True Fidelity 2.0 Edition With GSI Xtream
GE
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症例イオプロミド注「BYL」
4D-CTを用いて頭部皮膚多血性腫瘍に対する塞栓術前プランニングを行った1例
浜松医科大学
Revolution CT True Fidelity 2.0 Edition With GSI Xtream
GE
2021