イソビスト®注
イオトロラン注射液
イソビスト製品情報
造影剤とは?
1. X線造影剤の造影の仕組み
造影の原理1)
X線画像のコントラストは物質のX線吸収率が異なることから生じているため、単純X線撮影では部位によっては組織間のコントラストがつかず診断することが困難である。
X線画像で、生体にX線を照射した際に、骨は良好に描出できるが、脈管や臓器の描出、病巣を検出するには体内に造影剤を投与して造影検査を行う必要がある。そのため、十分な造影能を持ち安全性が確立したヨード造影剤が必要となる。
ヨード造影剤は、それ自体がX線を吸収するため、ヨード造影剤が存在する部分では造影剤濃度に比例して高いコントラストを得ることが画像上可能となる。
描出の原理1)
造影効果はX線ヨード造影剤の分布によってコントラストが決定される。そのため、ヨード造影剤の排泄過程(腎臓排泄、肝臓排泄)や輸送過程(血流、脳脊髄液の流れなど)、血流の分布、血管透過性や血液関門の有無など、造影部位により造影効果に違いが生じる。
〈参考文献〉
1) 新津守.吉川宏起編集:造影検査マスター・テキスト:2(2007)
2) Speck.U(翻訳監修 山口昂一):Contrast Media:2(1993)
2. 水溶性ヨード造影剤の基礎
水溶性ヨード造影剤の分類
水溶性ヨード造影剤は、いずれもトリヨードベンゼン環を基本構造にもつ。水溶性をもたせる基(側鎖)のタイプにより、イオン性と非イオン性に分類される。さらに 1 分子中のベンゼン環の数によりモノマー型とダイマー型に分けられる。
イオトロランは非イオン性ダイマー型に分類される。
浸透圧
浸透圧は水溶性ヨード造影剤の安全性に密接に関係しているといわれている。
イオン性造影剤から非イオン性造影剤になることで、大幅な浸透圧の低減に成功したが、それでも生体の浸透圧に比べ数倍高い浸透圧 であった。非イオン性ダイマー型造影剤は、非イオン性造影剤をダイマー型にすることで、さらに浸透圧を低減し、臨床使用できる濃 度で体液と等張の浸透圧にすることができ、等浸透圧造影剤と呼ばれる。
粘稠度
造影剤の粘稠度は分子量やベンゼン環に付く置換基の大きさや形状に依存する。非イオン性ダイマー型はモノマー型に比べ分子量も大 きく、粘稠度も高い。
粘稠度は造影剤の投与のし易さにも関わるが、検査の種類によっては粘性が高いことが利点になる場合もある。
浸透圧の原理
水溶液の浸透圧は溶液中の溶質の粒子数に比例する。したがって、造影剤の浸透圧は造影剤 1 分子当たりのヨード原子数(I)と溶液 中の粒子数(P)の関係で表すことができる。
ヨード造影剤の浸透圧を下げるには 2 つの方法がある。1 つは非イオン性にすることで水溶液中での粒子数を減じる方法であり、もう 1 つはダイマー型にすることで 1 分子中のヨード原子数を増やす方法である。
造 影 剤 の タ イ プ | 陰イオン | 陽イオン | 1分子中の ヨード 原子数(I) |
粒子数 (P) |
I/P | 等ヨード数 での 浸透圧比* |
||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
イ オ ン 性 |
モ ノ マ ー 型 | Na+ または meglumine+ |
3 | 2 | 1.5 | 1 | ||
ダ イ マ ー 型 | Na+ または meglumine+ |
6 | 2 | 3 | 1/2 | |||
非 イ オ ン 性 |
モ ノ マ ー 型 | 3 | 1 | 3 | 1/2 | |||
ダ イ マ ー 型 | 6 | 1 | 6 | 1/4 |
Na:ナトリウム mgl:メグルミン(メチルグルカミン)
*イオン性モノマー型ヨード造影剤の浸透圧を1 とした場合の比率
.
イソビストは非イオン性ダイマー型のイオトロランを主成分とする水溶性ヨード造影剤である。 240mgI/mLと300mgI/mLのヨード濃度を有する2製剤があり、製剤により適応が異なる。
3. 有効成分に関する理化学的知見
構造式:
- 一般名:
- イオトロラン(Iotrolan)
- 化学名:
- A diastereomeric mixture of 5,5’ - 〔malonylbis-(methylimino)〕 bis
〔N,N ’ -bis 〔 2,3-dihydroxy-1-(hydroxymethyl)propyl〕
-2,4,6-triiodoisophthalamide〕 (IUPAC)
- 分子式:
- C37H48I6N6O18
- 分子量:
- 1626.23
- CAS登録番号:
- 79770-24-4
- 性 状:
- 本品は白色の粉末または塊で、においはなく、味は甘い。
- 溶解性:
- 本品は水に極めて溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、エタノール (95) に溶けにくく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。
親水性
分配係数は親水性の指標とされる。親水性が高いほど蛋白結合性や細胞表面の刺激性が少なくなると考えられ、造影剤の生物学的活性にかかわる物理的特性といえる。
Mützel, W. et al.:RöFo suppl.128:28-32(1989)
*metrizamideは世界初の非イオン性モノマー型造影剤として使用されたが現在は市販されていない。
【MEMO】
50% 神経機能障害誘発量(ED50(ラット))
ラットの脳槽内にイオトロラン、metrizamideを投与し、50%のラットに反射・運動障害や痙攣などの神経機能障害を惹起する造影剤量(ED50)を求めた。イオトロランのED50値は他剤に比し有意に高かった(P<0.05)。
Muetzel, W.et al.: Invest. Radiol. 19: S140-141(1984)より作図
4. 組成・性状
イソビストの組成・性状
販売名 | イソビスト®注240 | イソビスト®注300 | |
---|---|---|---|
内容量(mL) | 10 | ||
イオトロラン(mg/瓶) | 5125.9 | 6407.5 | |
ヨード濃度(mg/mL) | 240 | 300 | |
1瓶中のヨード含有量(g) | 2.4 | 3.0 | |
添 加 物 |
エデト酸カルシウム 二ナトリウム(mg/瓶) |
1.0 | |
炭酸水素ナトリウム(mg/瓶) | 4.0 | ||
塩化ナトリウム(mg/瓶) | 6.0 | - | |
pH調整剤(2成分) | 適量 | ||
pH | 6.5~8.0 | ||
浸透圧比(生理食塩液に対する比) | 約1 | ||
粘稠度(mPa・s,37℃) | 約3.9 | 約8.6 | |
比重(37℃) | 1.279 | 1.353 |
5. 薬物動態
イソビストの吸収・排泄
1) クモ膜下腔内投与(髄腔内投与)
腎機能の正常な脊髄疾患患者 6 例に腰椎穿刺によりクモ膜下腔内にイオトロラン(190mgI/mL)8mL を投与し、腰部脊髄撮影を行った。続いて血中ヨード濃度、尿中総ヨード排泄量を経時的に測定し、薬物動態を検討した。 その結果、イオトロランのクモ膜下腔から血中への移行は速やかであり、投与後 24 時間までに投与量の約 84% が、48 時間後には約 94% が尿中に排泄された。
渡部恒夫ほか: 薬理と治療14(6):4317-4326(1986)
[MEMO] 造影剤の誤投与
医療事故として脊髄造影にイオン性造影剤を誤って使用したため、不幸な結果を招いた事例が知られている。このような事例から脳・脊髄造影に適応を有さない造影剤には警告欄に脳槽・脊髄造影に使用しない旨の記載がされている。
2)子宮腔内投与(ウサギ)
イオトロラン(300mgI/mL)をウサギ子宮腔内(n=3)に 100mgI/kg を投与したところ、1 日以内に尿及び膣からの流出液中に投与量の約 97%が排泄された1)。本剤は子宮腔内投与後、主に膣口から直接排泄されるとともに、一部腹腔内に移行して、その後速やかに血中に吸収されて尿中に排泄される。
3) 関節腔内投与(ウサギ
イオトロラン(300mgI/mL)をウサギ後肢膝関節腔内(n=3)に 100mgI/kg を投与したところ、24時間以内にほぼ全量が尿中に排泄され、糞中への排泄あるいは投与部位での残存は認められなかった1)。
〈参考文献〉
1) 宮本好明ほか:基礎と臨床27(12):4669-4674(1993)
イソビストの使い方は?
6. 効能・効果
イソビスト®注240
脊髄撮影
コンピューター断層撮影における脳室、脳槽、脊髄造影
関節撮影
イソビスト®注300
子宮卵管撮影
関節撮影
7. 用法・用量
脊髄撮影、コンピュ-タ-断層撮影における脳室、脳槽、脊髄造影
本剤の使用濃度と用量は、撮影部位での必要なコントラストの程度と範囲及び使用X線装置と技術により左右される。通常、撮影部位、穿刺部位に応じて下表の濃度、用量を使用する。
なお、年齢、体重、撮影部位の大きさにより適宜増減する。
効能・効果 | 脊髄撮影 | コンピューター断層撮影における 脳室、脳槽、脊髄造影 |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
撮影部位 | 腰部 | 胸部 | 頸部 | 腰部 | 胸部 | 頸部 | |
穿刺部位 | 腰椎 | 腰椎 | 腰椎又は 頸椎 |
腰椎 | |||
使用濃度 (mgI/mL) |
190~240 | 腰椎 | 240 | 240 | |||
用量(mL) | 6 ~10 | 6 ~10 |
*240mgI/mL以下の濃度に希釈する場合には生理食塩水を用いる。
子宮卵管撮影
通常、成人1回6~10mLを導管より子宮腔内に注入する。
なお、年齢、体重、撮影部位の大きさにより適宜増減する。
関節撮影
通常、成人1回1~10mLを関節腔内に注入する
なお、年齢、体重、撮影部位の大きさにより適宜増減する。
8. 造影検査の実際
以下に紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様の結果を示すわけではありませ
脳・脊髄造影
脊髄腔内に造影剤を投与し、脊柱管内の形状や狭窄の有無等の診断を行う検査 脊柱管狭窄、脊髄腫瘍、椎間板ヘルニアなどの診断
投与経路:脊椎穿刺によるクモ膜下腔内(髄腔内)投与
60歳代女性
腰部脊柱管狭窄症の症例
イソビスト®注240 10mLを注入し脊髄造影検査を行った。
椎間関節部での両L5神経根への圧迫が強いことが特に斜位像で明瞭に確認できた
(国家公務員共済組合連合会 横浜南共済病院 整形外科 三原 久範先生による症例)
重要な基本的注意
検査終了後は、副作用を防止するために患者を数分間座位(垂直位)にさせることにより、造影剤をできるだけ腰部に移動させること。また、検査終了後8時間は患者の頭部を10~15度挙上し、以後も16時間は安静にしておくこと。
子宮卵管撮影
子宮腔内の状態、卵管の疎通性や卵管采の状態等の診断を行う検査
不妊症における卵管疎通性、骨盤腹膜、卵管の癒着などの診断
投与経路:経膣的に子宮口から投与
正常例における子宮卵管造影
注入後
注入後
イソビスト®注300 10mLを用いた子宮卵管造影の症例。
イソビスト®注300を用いた子宮卵管造影により、両側の卵管疎通性は良好で、造影剤の拡散も良好であることが確認できた。
(医療法人 蔵本ウイメンズクリニック蔵本 武志 先生による症例)
【MEMO】 子宮卵管撮影での水溶性造影剤の特長と留意点
水溶性造影剤 | |
---|---|
造 特 長 |
|
造 特 長 |
|
栃木武一:日本産科婦人科学会埼玉地方部会誌22(2):260-264(1992)
関節撮影
関節腔内の状態、関節腔外への漏出、関節軟骨の異常などの診断を行う検査
半月板損傷、靭帯損傷などの診断
投与経路:経皮的に関節腔へ投与
MRI T2WI:
棘上筋腱の損傷が観察されるがその大きさや形状は不明瞭である
イソビスト®注240 による関節造影:
肩峰下包へのイソビストの漏出が観察された.
- 肩の腱の損傷においては, 損傷の度合いをMRIにおいて正確に判定するのは難しい
- 今回の症例においても、MRIで損傷は観察されたがその大きさや形状は不明瞭であった.
- イソビストを用いた関節造影によって損傷の大きさと形状を評価することができた
イソビスト®注240 による関節造影:
肩峰下包へのイソビストの漏出が観察された.
(名古屋第二赤十字病院 整形外科 深谷泰士先生による症例)
イソビストを投与するにあたって注意することは?
9. 注意を要する症例
一般的にいわれているヨード造影剤による副作用発現リスクの高い患者のほか、適応により注意を要する対象症例が異なる。
脳・脊髄造影
痙攣、てんかんの既往や素質のある患者
脳・脊髄造影で禁忌として設定されている。
抗痙攣剤投与中の患者では、その投与を継続するとともに、痙攣発作の発現を 注意深くモニタリングする必要がある。
髄腔内に造影剤を投与した場合、クモ膜下腔と中枢神経の間には特別な関門が ないため、造影剤は容易に神経細胞と接触する
フェノチアジン系化合物等の抗精神病薬の服用者
これらの薬剤との併用により痙攣発作の発現の可能性が増大するとする報告が あり、少なくとも検査前48時間から検査後12時間は抗精神病薬の投与を中止す るよう、併用注意に記載されている。
アルコール中毒患者
痙攣閾値の低下が生じる可能性があり、慎重投与に記載されている。
子宮卵管撮影
妊婦又は妊娠している可能性のある患者
子宮卵管撮影ではX線照射を伴うため、禁忌として設定されている。
骨盤腔内に急性炎症性疾患のある患者
造影剤注入の際に膣や頚管の病原菌が押し上げられたり、造影剤の刺激により 症状が悪化するおそれがある。
【MEMO】 髄液圧低下症
髄液の漏出など何らかの原因により髄液圧が低下すると頭痛を主症状とする髄液圧低下症を呈する。立位、座位で増悪し、臥位で改善する特徴がある。
脳・脊髄造影では適用上の注意に「本剤の注入量より多量の脳脊髄液を除去しないこと」と記載されている。
10. 造影剤投与時の注意事項
バイアル製剤の名称及び特徴
※滅菌状態でないので、ゴム栓穿刺前にアルコール清拭等が推奨される
【MEMO】 製品の滅菌について
造影剤がバイアルに充填され、密封された容器の状態で、高圧蒸気滅菌(121℃ 20分間)を行っている。
11. 副作用等
脊髄撮影、コンピューター断層撮影における脳室、脳槽、脊髄造影
承認時及び使用成績調査での調査症例6,158例中、493例(8.0%)に副作用が認められ、主な副作用は頭痛303件(4.9%)、嘔気86件(1.4%)、頭重感42件(0.7%)、嘔吐38件(0.6%)、発疹32件(0.5%)、瘙痒20件(0.3%)、背部痛20件(0.3%)等であった。(再審査終了時)
対象 | 時期 | ||
---|---|---|---|
承認時迄の調査 | 使用成績調査の累計 | 計 | |
調査施設数 | 48 | 308 | 345 |
調査症例数 | 453 | 5,705 | 6,158 |
副作用発現症例数 | 93 | 400 | 493 |
副作用発現件数 | 146 | 552 | 698 |
副作用発現症例率(%) | 20.53 | 7.01 | 8.01 |
副作用発現率の一覧
副作用の種類 | 副作用発現件数(%) | ||
---|---|---|---|
承認時迄の調査 | 使用成績調査の累計 | 計 | |
皮膚・皮膚付属器障害 | 8 例(1.77) | 31 例(0.54) | 39 例(0.63) |
発疹 | 6(1.32) | 26(0.46) | 32(0.52) |
瘙痒 | 6(1.32) | 14(0.25) | 20(0.32) |
蕁麻疹 | - | 2(0.04) | 2(0.03) |
中枢・末梢神経系障害 | 9 例(1.99) | 28 例(0.49) | 37 例(0.60) |
しびれ(感) | 5(1.10) | 8(0.14) | 13(0.21) |
めまい | 3(0.66) | 8(0.14) | 11(0.18) |
痙攣 | - | 6(0.11) | 6(0.10) |
頸部硬直 | 3(0.66) | 2(0.04) | 5(0.08) |
麻痺 | 1(0.22) | 2(0.04) | 3(0.05) |
四肢硬直 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
意識障害 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
見当識障害 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
髄液異常 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
知覚障害 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
バビンスキー徴候 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
運動障害 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
自律神経系障害 | 4 例(0.88) | 12 例(0.21) | 16 例(0.26) |
発赤 | 4(0.88) | 7(0.12) | 11(0.18) |
低血圧 | - | 4(0.07) | 4(0.06) |
血圧上昇 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
多汗 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
聴覚・前庭障害 | - | 2 例(0.04) | 2 例(0.03) |
耳鳴 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
聴力障害 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
精神障害 | - | 3 例(0.05) | 2 例(0.03) |
幻聴 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
浮遊感 | - | 2(0.04) | 2(0.03) |
消化管障害 | 27 例(5.96) | 81 例(1.42) | 108 例(1.75) |
嘔気 | 23(5.08) | 63(1.10) | 86(1.40) |
嘔吐 | 9(1.99) | 29(0.51) | 36(0.58) |
口内乾燥 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
食欲不振 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
胃不快感 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
肝臓・胆管系障害 | - | 8 例(0.14) | 8 例(0.13) |
AST(GOT)上昇 | - | 2(0.04) | 2(0.03) |
ALT(GPT)上昇 | - | 4(0.07) | 4(0.06) |
ビリルビン値上昇 | - | 2(0.04) | 2(0.03) |
肝機能異常 | - | 2(0.04) | 2(0.03) |
代謝・栄養障害 | - | 6 例(0.11) | 6 例(0.10) |
血清総蛋白減少 | - | 4(0.07) | 4(0.06) |
LDH 低値 | - | 2(0.04) | 2(0.03) |
Aℓ-P 低下 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
血中コレステロール低下 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
心拍数・心リズム障害 | - | 1 例(0.02) | 1 例(0.02) |
不整脈 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
呼吸器系障害 | 1 例(0.22) | 1 例(0.02) | 2 例(0.03) |
息苦しい | 1(0.02) | 1(0.02) | 2(0.03) |
赤血球障害 | - | 1 例(0.02) | 1 例(0.02) |
赤血球減少 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
ヘマトクリット値減少 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
ヘモグロビン減少 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
血小板出血凝血障害 | - | 2 例(0.04) | 2 例(0.03) |
血小板減少(症) | - | 2(0.04) | 2(0.03) |
泌尿器系障害 | - | 5 例(0.09) | 5 例(0.08) |
排尿障害 | - | 2(0.04) | 2(0.03) |
BUN 上昇 | - | 2(0.04) | 2(0.03) |
血中クレアチニン上昇 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
尿蛋白陽性 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
一般的全身障害 | 75 例(16.56) | 308 例(5.40) | 383 例(6.22) |
頭痛 | 65(14.35) | 238(4.17) | 303(4.92) |
頭重(感) | 1(0.22) | 41(0.72) | 42(0.68) |
腰痛 | - | 14(0.25) | 14(0.23) |
背(部)痛 | 8(1.77) | 12(0.21) | 20(0.32) |
下肢痛 | 2(0.44) | 7(0.12) | 9(0.15) |
発熱 | 9(1.99) | 7(0.12) | 16(0.26) |
ほてり | - | 3(0.05) | 3(0.05) |
顔面潮紅 | - | 3(0.05) | 3(0.05) |
顔面浮腫 | - | 2(0.04) | 2(0.03) |
胸痛 | - | 2(0.04) | 2(0.03) |
気分不良 | - | 2(0.04) | 2(0.03) |
上肢脱力感 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
下肢脱力感 | - | 1(0.02) | 1(0.02) |
部分の数字は副作用発現症例数(%)を示す。(バイエル薬品社内集計)
イソビスト®注300子宮卵管撮影
承認時及び使用成績調査での調査症例3,548例中206例(5.8%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められ、主な副作用は腹痛〔注入中〕109件(3.1%)、腹痛〔注入後〕56件(1.6%)、嘔気28件(0.8%)、発熱22件(0.6%)、発疹15件(0.4%)等であった。(再審査終了時)
対象 | 時期 | ||
---|---|---|---|
承認時迄の調査 | 使用成績調査の累計 | 計 | |
調査施設数 | 10 | 200 | 204 |
調査症例数 | 97 | 3,451 | 3,548 |
副作用発現症例数 | 12 | 194 | 206 |
副作用発現件数 | 19 | 259 | 278 |
副作用発現症例率(%) | 12.37 | 5.62 | 5.81 |
副作用の種類 | 副作用発現件数(%) | ||
---|---|---|---|
承認時迄の調査 | 使用成績調査の累計 | 計 | |
皮膚・皮膚付属器障害 | - | 18 例(0.52) | 18 例(0.51) |
蕁麻疹 | - | 1(0.04) | 1(0.03) |
瘙痒感 | - | 8(0.23) | 8(0.23) |
発疹 | - | 15(0.43) | 15(0.42) |
中枢・末梢神経系障害 | - | 2 例(0.06) | 2 例(0.06) |
ふるえ | - | 1(0.03) | 1(0.03) |
しびれ | - | 1(0.03) | 1(0.03) |
自律神経系障害 | - | 6 例(0.17) | 6 例(0.17) |
顔面蒼白 | - | 1(0.03) | 1(0.03) |
発赤 | - | 5(0.14) | 5(0.14) |
冷汗 | - | 1(0.03) | 1(0.03) |
聴覚・前庭障害 | - | 1 例(0.03) | 1 例(0.03) |
耳鳴 | - | 1(0.03) | 1(0.03) |
消化管障害 | 3 例(3.09) | 34 例(0.99) | 37 例(1.04) |
嘔気 | 1(1.03) | 27(0.78) | 28(0.79) |
嘔吐 | 1(1.03) | 8(0.23) | 9(0.25) |
下痢 | 2(2.06) | 4(0.12) | 6(0.17) |
白血球・網内系障害 | - | 2 例(0.06) | 2 例(0.06) |
好酸球増多(症) | - | 1(0.03) | 1(0.03) |
白血球増多(症) | - | 1(0.03) | 1(0.03) |
一般的全身障害 | 12 例(12.37) | 162 例(4.69) | 174 例(4.90) |
顔面浮腫 | 1(1.03) | 3(0.09) | 4(0.11) |
胸部苦悶感 | - | 2(0.06) | 2(0.06) |
頭痛 | 2(2.06) | 1(0.03) | 3(0.08) |
腰痛 | - | 2(0.06) | 2(0.06) |
発熱 | 3(3.09) | 19(0.55) | 22(0.62) |
腹痛(注入中) | 2(2.06) | 107(3.10) | 109(3.07) |
腹痛(注入後) | 7(7.22) | 49(1.42) | 56(1.58) |
CRP 上昇 | - | 1(0.03) | 1(0.03) |
部分の数字は副作用発現症例数(%)を示す。(バイエル薬品社内集計)
イソビスト®注240関節撮影
承認時及び使用成績調査での調査症例648例中6例(0.9%)に副作用が認められ、主な副作用は発疹2件(0.3%)、瘙痒感2件(0.3%)、嘔気2件(0.3%)等であった。(再審査終了時)
イソビスト®注300関節撮影
承認時及び使用成績調査での調査症例637例中5例(0.8%)に副作用が認められ、主な副作用は発疹3件(0.5%)、疼痛2件(0.3%)等であった。(再審査終了時)
救急処置の準備
造影剤の副作用を予知する方法は確立しておらず、一定の頻度で発現することが知られている。また、稀ではあるが重篤な副作用も発現することがあるので、造影剤の投与に際しては常に救急処置の準備が求められる。 脳・脊髄造影で、大量に頭蓋内に流入した場合には、痙攣発作の発現のおそれがあるので、フェノバルビタール等バルビツール酸誘導体又はジアゼパム等を24~48時間経口投与すること。
救急処置の準備
造影剤の副作用を予知する方法は確立しておらず、一定の頻度で発現することが知られている。また、稀ではあるが重篤な副作用も発現することがあるので、造影剤の投与に際しては常に救急処置の準備が求められる。 脳・脊髄造影で、大量に頭蓋内に流入した場合には、痙攣発作の発現のおそれがあるので、フェノバルビタール等バルビツール酸誘導体又はジアゼパム等を24~48時間経口投与すること。
準備しておくべき緊急治療薬・器具
放射線診療において準備しておく治療薬および器具は、それぞれの施設で放射線科医の技量および緊急蘇生医等の緊急対応度により異なってくる。緊急を要するアナフィラキシーに対する治療薬を第一選択に準備する必要がある。また、使用量・使用法を添付しておくことが緊急時の投与ミスを防ぐ。
緊急治療薬・投与法(アナフィラキシー治療を中心に
緊急薬
アドレナリン(1mg/mL):0.3mg(0.3mL)筋注
(エピペン®成人用:0.3mg自動注入)
輸液(生理食塩液、リンゲル液)
〈準緊急薬
アトロピン硫酸塩(0.5mg/mL):1アンプル静注
フェニレフリン塩酸塩 (1mg/mL):生理食塩液10倍希釈にて0.1mgずつ静注
エフェドリン塩酸塩(40mg/mL):生理食塩液10倍希釈にて4mgずつ静注
〈他の準備薬〉
グルカゴン(1mg、1mL溶解液):1mgを2分間で静注
ステロイド:メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、プレドニゾロン
ヒスタミン遮断薬:ジフェンヒドラミン塩酸塩、ラニチジン塩酸塩
β2作動薬:定量噴霧吸入器(インヘラー)
器具
○パルスオキシメータ ○血圧計 ○心電図 ○除細動器・AED
○酸素・酸素吸入器 ○定量噴霧吸入器
重要な基本的注意
投与量と投与方法の如何にかかわらず過敏反応を示すことがある。本剤によるショック等の重篤な副作用は、ヨード過敏反応によるものとは限らず、それを確実に予知できる方法はないので、投与に際しては必ず救急処置の準備を行うこと。
1. アドレナリン
アドレナリンは造影剤によるアナフィラキシーおよびショックにおける第一選択薬として重要である。アドレナリンはαおよびβ受容体刺激作用を持ち、α刺激作用は、末梢血管拡張抑制作用により昇圧作用を示し、さらにその血管収縮作用は血管浮腫および蕁麻疹の軽快につながる。β刺激作用は陽性の変力作用および変時作用をあらわし、心収縮力を増強するとともに、気管支収縮を抑制する。また、細胞内cyclic AMP濃度を高めることにより、各種炎症細胞からのケミカルメディエーターの放出を阻害する。
アナフィラキシーの第一選択薬として重要であるものの、大量の投与はhyperadrenalism(高血圧や頻脈)を引き起こし、脳出血や心筋虚血の危険性も併せ持つ。急変時は、0.3mgを筋注し、反応を見ながら、5分毎に同量を追加していく方法が行われる。アナフィラキシー補助治療剤として一般に販売されているエピペン®は、キャップをとって、大腿前面に押し当てると自動的にアドレナリン(0.3mgまたは0.15mg、各0.3mL)が筋注される用具であり、放射線診療においても緊急対処用に安全かつ有効に使用できると考えられる。
2. 輸液
静脈路の確保は、急変時の各種治療薬投与や急速な循環血液量増加目的に必要である。急速輸液のためには、20ゲージ以上の太い留置針の確保が望まれる。造影剤静注後は、通常細胞外液組成のリンゲル液(乳酸、酢酸、炭酸添加のいずれでも)で維持されるが、急変時にはまず全開急速投与を行う。造影剤注入後に静脈路を閉塞していた場合や注入中に急変が発生した場合は、造影剤注入路と別の静脈路確保が必要となる。また、出血など明らかな循環血液量減少時や昇圧薬に抵抗性の低血圧が持続する場合は、昇圧薬の再投与とともに、血漿増量剤としての膠質液(HES、低分子デキストラン)の急速投与も考慮するが、それ自身がアレルギー反応を起こしうることに注意が必要である。
3. 酸素
酸素投与はあらゆる急変に重要である。迷走神経反射、低血圧、心筋虚血など造影剤によらない緊急事態では、低酸素症が主要な合併症となり、また、治療としてのアドレナリン投与等は低酸素症の原因となりうる。鼻カニューラや通常のフェースマスクでは、高流量の酸素を使用しても吸入酸素濃度をあまり上昇させることができないため、非再呼吸タイプのマスクや酸素リザーバーが付いたマスクが役に立つ。自発呼吸停止の可能性を考えると、リザーバをもったアンビューバック、ジャクソンリース回路、麻酔器を準備しておくことが望ましい。いずれの場合も、呼気ガスを再吸入させないために、通常の分時換気量の2倍ほどの高流量(6-12L/分)酸素供給装置の準備が望まれる
4. 緊急治療器具
パルスオキシメータは呼吸・循環系の簡便かつ有用なモニタとして診療中はつねに装着すべきである。バイタルサインのチェックには脈の確認から血圧の測定および心電図波形の確認が重要である。また、心室細動・心室頻拍の出現時には一刻も早い除細動が不可欠となる。しかしながら、蘇生非専門医にとって、心電図波形の確認および除細動器使用は時間を要することが推察される。AED(automated external defibrillator)は音声指示に従って2枚の電極を装着すると自動的に心電図解析と除細動を行う機器であり、蘇生非専門医にとっては迅速かつ安全な器具として有用であろう。
また、最近の除細動器は、このAEDモードを備えており、心電図モニター画面、パルスオキシメータ、体外式ペーシング等を併せ持っている。
12. 包装
製品名 | イソビスト®注240 | イソビスト®注300 |
---|---|---|
容量 | 10mL | 10mL |
包装単位 | 5 瓶 | 5 瓶 |
13. 関連情報
製品名 | イソビスト®注240 | イソビスト®注300 |
---|---|---|
統一商品コード | 341104290 | 341104306 |
JAN コード | 4987341104290 | 4987341104306 |
GS1-RSS コード(販売包装単位) | 14987341104297 | 14987341104303 |
HOT 番号 | 1118711020101 | 1118704020101 |
薬価基準収載医薬品コード | 7219414A3039 | 7219414A2032 |
レセプト電算コード | 620003697 | 620003698 |
使用期限 | 5 年 | 5 年 |
製造販売承認 | 2006年1月30日 | 2006年2月16日 |
薬価基準収載 | 2006年6月9日 | 2006年6月9日 |
発売年月日 | 1987年8月28日 | 1991年12月9日 |
子宮卵管造影検査における
イソビスト®注300の使用例
子宮卵管造影検査におけるイソビスト®注300の臨床応用
イソビスト®注300による子宮卵管造影
通常,成人1回6~10mLを導管より子宮腔内に注入する.なお,年齢,体重,撮影部位の大きさにより適宜増減する.
撮影タイミング | コメント | 造影剤量,時間 | |
---|---|---|---|
❶ 子宮・卵管陰影確認直後 | 腹腔陰影と重ならず卵管陰影 からの情報が得られる |
3~5mL程度 | |
❷ 腹腔内流入確認,拡散開始直後 | 卵管周囲の情報が得られる | 全量で10mL程度 | |
❸ 側面撮影 (注入終了後,子宮に造影剤が残存している間に撮影) |
子宮の位置関係,ダグラス窩の 状況の観察 |
ー | |
子宮内に残存する造影剤の吸引除去(可及的範囲) | |||
❹ 終末撮影 | 腹腔内での広がりをみる | (水溶性) 5~10分後 |
症例 ① 正常例における子宮卵管造影
医療法人 蔵本ウイメンズクリニック
蔵本 武志 先生
注入後像
両側卵管疎通性は良好,造影剤の拡散も良好である.
拡散像(注入後15分)
診療上の有用性について
本例では,イソビスト®注300を用いた子宮卵管造影により,両側の卵管疎通性は良好で,造影剤の拡散も良好であることが確認できた.その後,タイミング5回目で妊娠.
症例 ② 卵管水腫例における子宮卵管造影
医療法人 蔵本ウイメンズクリニック
蔵本 武志 先生
注入後像
両側卵管疎通性は認めるも,左卵管は水腫様,右卵管は卵管采周囲癒着が疑われる.
拡散像(注入後15分)
15分後の拡散像で,左卵管は水腫様に造影剤が貯留したまま残っている.
診療上の有用性について
本例で,イソビスト®注300を用いた子宮卵管造影を実施したが,両側卵管の状態は不良であったことから,ART*に進むことになった.顕微授精後の融解胚移植で妊娠.
*ART(Assisted Reproductive Technology;生殖補助医療技術)イソビスト®注300を用いた子宮卵管造影では本症例のように卵管采周囲の癒着等の所見が短時間で判定できるケースがあり,患者さんの検査負担の軽減につながる可能性がある
症例 ③ 不妊症/卵管・子宮鏡の正常例
医療法人 小塙医院
小塙 清 先生
1回目撮影(投与30秒後)
卵管全体が描出され,一部,骨盤腔,卵管采への流出が見られる
2回目撮影(投与5分後)
左卵管の一部に造影剤が残存しているが,骨盤腔内全体への造影剤拡散が見られる.
診療上の有用性について
不妊症患者に対する全身検査の一環として,イソビスト®注300を用いた子宮卵管造影検査を実施した.投与後5分の撮影で,腹腔内における造影剤拡散が認められ,両側の卵管が正常であることが確認できた. イソビスト®注300を用いた子宮卵管造影では,本症例のように骨盤腔内流出が短時間で判定できるケースがあり,患者さんの検査負担の軽減につながることがある
子宮卵管造影検査における水溶性造影剤のベネフィット
微細な所見見 | 1日で診断 |
---|---|
組織親和性が高いので,微細な所見が得られる | 拡散が速く1日で終末撮影まで行える |
残像がない | 低リスク |
吸収が速いため,長く造影剤の残像を残さない | 長期残留して肉芽腫や癒着を起こす心配がない 血管内に入っても塞栓を生じる恐れがない |
栃木武一: 日本産科婦人科学会埼玉地方部会誌 1992; 22(2): 260-264.より改変
1)Uzun O, et al. Respirology. 2004; 9(1): 134-136.
2)Lindequist S, et al. Radiology. 1994; 191(2): 513-517.
3)栃木武一: 日本産科婦人科学会埼玉地方部会誌 1992; 22(2): 260-264.
イソビスト®注300を用いた子宮卵管造影検査に おいて読影しやすい画像を得た症例
ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したものであり、全ての症例が同様の結果を示すわけではありません
水溶性造影剤を用いた子宮卵管造影検査における撮像法の工夫
子宮卵管造影法は,不妊症における子宮,卵管の器質的異常や疎通性を確認するスクリーニング検査であり,油性造影剤あるいは水溶性造影剤が用いられる.水溶性造影剤は,血管内に入って塞栓を生じたり,長期に残存して異物肉芽腫や癒着を起こす恐れがなく,1日で診断可能といった特性を有する1).今回,水溶性造影剤であるイソビスト®注300を用いた撮像法を工夫したところ,より読影しやすい画像が得られたので,その症例について報告する.
イソビスト®注300による子宮卵管造影
通常,成人1回6~10mLを導管より子宮腔内に注入する.なお,年齢,体重,撮影部位の大きさにより適宜増減する.
撮影タイミング | コメント | 造影剤量,時間 | |
---|---|---|---|
❶ 子宮・卵管陰影確認直後 | 腹腔陰影と重ならず卵管陰影 からの情報が得られる |
3~5mL程度 | |
❷ 腹腔内流入確認,拡散開始直後 | 卵管周囲の情報が得られる | 全量で10mL程度 | |
❸ 側面撮影 (注入終了後,子宮に造影剤が残存している間に撮影) |
子宮の位置関係,ダグラス窩の 状況の観察 |
ー | |
子宮内に残存する造影剤の吸引除去(可及的範囲) | |||
❹ 終末撮影 | 腹腔内での広がりをみる | (水溶性) 5~10分後 |
症例 ① X線透視装置のコントラストを事前に上げる
医療法人 正育会 春木レディースクリニック
春木 篤 先生
注入直後
右卵管は卵管峡部で閉塞,左卵管も卵管峡部周囲の壁が不正であり,卵管周囲癒着を疑わせる所見であった.
注入5分後
注入圧を上げたが,依然として右卵管は卵管峡部で閉塞.左卵管は疎通性が確認されたものの,卵管峡部にて高度の狭窄ありと診断した
撮像時の工夫
撮影時の X 線透視装置のコントラストを事前に上げることにより,油性とほぼ同様の所見が得られ,狭窄部位や卵管周囲癒着などの読影も可能となる.
本検査の有用性
両側卵管ともに閉塞あるいは狭窄部位が明瞭に特定できたため,卵管鏡下卵管形成術の実施にあたり,事前にカテーテル操作のシミュレーションが可能であった.
症例 ② 画像拡大,白黒反転操作を行う
医療法人 啓樹会 西村ウイメンズクリニック
西村 満 先生
使用機種 |
スキャナー |
東芝 BLR-100Aによるデジタル撮影 |
---|---|---|
デジタル画像処理 |
FUJIFILM C@RNACORE(CC-WS674) |
撮影画像
拡大後
白黒反転処理後
画像解説と本検査の有用性<
両側卵管疎通性は良好,拡散も良好であった.読影にはほとんど支障なく,また白黒反転画像により読影しやすくなる場合があり,さらにズーム機能を用いることにより正確な読影が可能であった. 造影検査後の妊娠率はさほど低下した印象はない.腹腔内への造影剤の残留もなく,甲状腺機能への影響もほとんど見られない.ガラスシリンジの洗浄も容易である
子宮卵管造影検査で,機器の調整により見やすい画像を得る
今回紹介した症例では,① X線透視装置のコントラストを上げる ② 白黒反転,ズーム処理といった工夫を行うことで,より読影しやすい画像を得ることが可能になった. イソビスト®注300を用いた子宮卵管造影は,これらの工夫と以下に示す特性によって,よりよい画像診断に貢献できるものと考えられる.
微細な所見 | 1日で診断 |
---|---|
組織親和性が高いので,微細な所見が得られる | 拡散が速く1日で終末撮影まで行える |
残像がない | 低リスク |
吸収が速いため,長く造影剤の残像を残さない | 長期残留して肉芽腫や癒着を起こす心配がない 血管内に入っても塞栓を生じる恐れがない |
栃木武一 : 日本産科婦人科学会埼玉地方部会誌 1992; 22(2): 260-264.より改変
1)栃木武一 : 日本産科婦人科学会埼玉地方部会誌 1992; 22(2): 260-264.
開発の経緯
イオトロラン(イソビスト240)は脳槽・脊髄撮影を目的として、シエーリング AG(現:バイエル)により開発された2量体型の水溶性非イオン性造影剤です。非イオン性造影剤としてメトリザミド(アミパーク※)、イオパミドール(イオパミロン)等につぐ造影剤で、1987年、世界ではじめて本邦で承認・市販されました。
引き続いて1991年イソビスト240の効能として関節撮影が追加承認されました。同時にイソビスト300が子宮卵管・関節造影剤として承認されました。
※本邦では既に販売を終了しています。
製品の特徴及び有用性
イオトロランは1分子中に6個のヨウ素を含む2量体型非イオン性化合物で、2個の3ヨ-ド芳香環が4個の大きな親水基でマスクされた構造を有しています。このため300mgI/mLの濃度までその浸透圧濃度を体液と等張にすることができ、生体成分との相互作用も弱く、化学的にも安定した造影剤です。
副作用等発現状況の概要は以下の通りです。
イソビスト®注240
脊髄撮影
コンピューター断層撮影における脳室、脳槽、脊髄造影
承認時及び使用成績調査での調査症例6,158例中、493 例(8.0%)に副作用が認められ、主な副作用は頭痛303件(4.9%)、 嘔気86件(1.4%)、頭重感42件(0.7%)、嘔吐38件(0.6%)、発疹32件(0.5%)、そう痒20件(0.3%)、背部痛20件(0.3%)等であった。(再審査終了時)
関節撮影
承認時及び使用成績調査での調査症例648例中6例(0.9%)に副作用が認められ、主な副作用は発疹2件(0.3%)、そう痒感2件(0.3%)、嘔気2件(0.3%)等であった。(再審査終了時)
イソビスト®注300
子宮卵管撮影
承認時及び使用成績調査での調査症例3,548例中206例(5.8%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められ、主な副作用は腹痛[注入中]109件(3.1%)、腹痛[注入後]56 件(1.6%)、嘔気28件(0.8%)、発熱22件(0.6%)、発疹15件(0.4%)等であった。(再審査終了時)
関節撮影
承認時及び使用成績調査での調査症例637例中5例(0.8%)に副作用が認められ、主な副作用は発疹3件(0.5%)、疼痛2件(0.3%)等であった。(再審査終了時)