イオパミロン®︎注
イオパミロンとは
「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。
イオパミロンは非イオン性の水溶性ヨード造影剤です
イオパミロンは,1986年に発売された尿路・血管用の非イオン性の水溶性ヨード造影剤です.
主成分であるイオパミドールは,基本骨格である3ヨードベンゼン環を親水性の側鎖でマスクした非イオン性造影剤であり,水溶液中で陽イオンと陰イオンに解離しないため,イオン性造影剤に比べ浸透圧が低減され(物理化学的性質 参照),生体内の電解質バランスへの影響も小さいとされています.
イオパミドールの構造式

イオパミドールの分子模型

イオパミロンの効能又は効果
イオパミロン注 | イオパミロン注シリンジ | ||||
150 | 300 | 370 | 300 | 370 | |
コンピューター断層撮影における造影 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
静脈性尿路撮影 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ディジタル X 線撮影法による静脈性血管撮影 | - | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ディジタル X 線撮影法による動脈性血管撮影 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
脳血管撮影 | - | ◯ | - | ◯ | - |
血管心臓撮影(肺動脈撮影を含む) | - | - | ◯ | - | ◯ |
大動脈撮影 | - | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
選択的血管撮影 | - | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
四肢血管撮影 | - | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
逆行性尿路撮影 | ◯ | ◯ | - | ◯ | - |
物理化学的性質
イオパミロンは低浸透圧・低粘稠度の造影剤です
イオパミドールのヨード濃度別の浸透圧比・粘稠度(37℃)
ヨード濃度(mgI/mL) | 浸透圧比(生理食塩液に対する比) | 粘稠度(mPa・s) |
150 | 約1 | 1.5 |
300 | 約3 | 4.4 |
370 | 約4 | 9.1 |
イオパミロン注電子添文2023年6月改訂(第4版),イオパミロン注シリンジ電子添文2025年4月改訂(第7版)から
イオパミドール(非イオン性造影剤)とイオン性造影剤(アミドトリゾ酸),非イオン性ダイマー型造影剤(イオトロラン)の実測浸透圧(37℃)・粘稠度(20〜37℃)〔平均値(標準偏差)〕1)
造影剤 | ヨード濃度※1 (mgI/mL) | 実測浸透圧※2 (mOsm/kg H2O) | 粘稠度※3(mPas) | ||
37℃ | 20℃ | 25℃ | 37℃ | ||
アミドトリゾ酸 | 301.4(3.2) | 1,502(16) | 9.3(0.1) | 7.6(0.0) | 4.9(0.0) |
イオパミドール | 303.9(1.7) | 640(6) | 8.4(0.1) | 6.9(0.1) | 4.5(0.0) |
イオトロラン | 303.9(5.8) | 294(3) | 17.5(0.0) | 13.9(0.0) | 8.5(0.0) |
1:蛍光X線分析装置により測定, ※2:蒸気圧法, ※3:細管式粘度計により測定
正常ヒト血漿浸透圧基準値:275~290 mOsm/kg H2O
参考:造影剤の物理化学的性質が及ぼす影響
1. 浸透圧
造影剤の浸透圧が高い場合,循環血液量の増大,血管拡張,血管内皮細胞の傷害,凝固・線溶系への影響,血液脳関門の破綻,注入時の疼痛や熱感,利尿,心臓血管撮影時の心機能低下等を生じる要因となるとされており2),特に新生児や幼児は浸透圧負荷の影響を受けやすいと考えられています3). 一般に水溶液の浸透圧は溶液中に含まれる粒子の数に比例して増大するため,溶液中の粒子数を減少させれば造影剤の浸透圧を低下させることができます.造影能に影響するヨード濃度を低下させることなく粒子数を減少させる方法として,以下の2つがあります4).
- ① 非イオン性にする方法(イオン性造影剤は水溶液中で陽イオンと陰イオンに解離し2つの粒子となるため)
- ② 1分子中のヨード原子数を増やす方法
非イオン性造影剤は①の原理に基づき開発されました.非イオン性ダイマー型造影剤は①と②の両方を行っています。
2. 粘稠度
造影剤の粘稠度が高いと,径の細いカテーテルで投与する場合に造影剤流量が低下したり,点滴速度が遅くなったり,造影能に影響を及ぼします3, 4).また,急速静注時の穿刺部位における針先の反跳によるトラブルや,造影剤の漏出など,操作性における問題が生じる可能性があります4).
3. イオン毒性
イオン性造影剤は陽イオンと陰イオンに解離することにより,生体内で維持されている電解質バランスに影響する可能性が指摘されています2).その結果,中枢神経系の細胞膜電位の変化によるてんかん発作や,Caイオン濃度の低下による心室細動等の要因となりうると考えられています2).
1)Krause W, et al. Invest Radiol 1994; 29(1): 72-80. 〔利益相反:本論文の著者らはSchering AG(現Bayer AG)の社員である.〕
2)Stolberg HO & McClennan BL. Curr Probl Diagn Radiol 1991; 20(2): 49-88.
3)ACR Committee on Drugs and Contrast Media. ACR Manual On Contrast Media. 2024 https://www.acr.org/Clinical-Resources/Contrast-Manual
4)新津 守,吉川宏起 編集. 造影検査マスター・テキスト. 2007, メジカルビュー
出典:イオパミロン 特定項目製品情報概要 2025年6月改訂
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