乳房MRIにおける適切な画像を得るための撮像ポイント
適切な撮像法で乳房MRI画像を得ることは大切です。乳房MRIの撮像法については乳房MRIマニュアルや画像診断ガイドラインに示されていますが、世代や仕様の異なるMRI機器が存在し、一律にパラメータ設定を行うことは難しいことがあります。診断に最適な画像を得るためのパラメータを構築するうえで、臨床的な観点からどのような画像が望ましいのか、標準的な撮像プロトコルについて、乳房MRIを専門としている6名のエキスパートの先生方にディスカッションして頂きました。
バイエル薬品株式会社
ラジオロジー領域メディカルアフェアーズ
<監修>
獨協医科大学・埼玉医療センター 久保田一徳先生
東京医科歯科大学 藤岡友之先生
名古屋大学 佐竹弘子先生
京都大学 片岡正子先生
京都府立医科大学 後藤眞理子先生
佐賀大学 山口健先生
乳房MRI各撮像法のポイントについて
獨協医大埼玉医療センター 久保田一徳 先生
はじめに
現在、乳房MRI撮像は国内の多くの施設で行われている。撮像目的も多様化し、術前の広がり診断だけではなく副病変や対側病変の検出、診断困難例、治療効果判定、さらにはハイリスク症例を中心としたスクリーニング・サーベイランスでも用いられている。
1990年代後半には片側撮像を主体に乳房MRI撮像が始まり、各施設で独自に様々な撮像方法が検討されてきた。現在は標準的な撮像方法が国内外の各種ガイドライン1,2)でも示され、多くの施設で標準的な撮像方法が可能となっているが、独自の撮像方法が残っていることも少なくない。昨今のMRI装置の進歩もあり、ultrafast dynamic MRIなどの新たな撮像方法も可能な施設も増えてきた。拡散強調画像(diffusion weighted imaging: DWI)についても用途によって様々な撮像方法があり、標準化を行う必要性が出てきている。
これからさらに必要性に迫られる乳房MRIを適切に使用していくためには、標準的な撮像方法がどの施設でも担保された上で、読影が行われる必要がある。それでは、どのような画像が良い画像なのか?それがわかるためには、多数のエキスパートの目をもって画像を見ることが必要と考えた。偏りのない「良い画像」を得るためには、同時に集まって画像を見て、議論を行い、コンセンサスを得ることが大事であろう。そこで、バイエル薬品株式会社の協力により2023年6月30日に乳房MRIのエキスパートの先生方に集まっていただき、各施設の画像を実際に見ながら議論する「乳房MRI アドバイザリーボードミーティング」を開催した。ここではそこでの議論から示されたコンセンサス事項や撮像のポイントについてお伝えする。