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T1緩和度(r1)に影響を与える因子とは
MRI造影剤の勉強をしていたところ、造影剤の種類によってT1緩和度(r1)に違いがあることが分かりました。構造の違いが影響しているとは思うのですが、具体的に何が影響してT1緩和度(r1)に違いが生じるのでしょうか。
最近はT1緩和度(r1)を向上させた低用量Gd造影剤も話題ですね。T1緩和度(r1)に影響を与える因子は、分子構造だけでなく、室温や磁場強度などの撮影環境等、様々あります。まず緩和度の定義を確認し、分子構造にフォーカスしてT1緩和度(r1)に影響を与える因子について整理してみましょう。
緩和度
緩和度とは、緩和時間を短縮させる能力の指標です。磁性体(造影剤)の濃度と緩和率(R1=1/ΔT1もしくはR2=1/ΔT2)をプロットした際の直線の傾きから求めることができます1)。縦緩和時間の緩和率より得られたものをT1緩和度(r1)、横緩和時間の緩和率より得られたものをT2緩和度(r2)と呼びます。
Fig.1 T1緩和度(r1)の算出方法例
緩和率が大きい(緩和速度が速い)、すなわち緩和度が大きいほど、緩和時間の短縮効果が大きくなります。一般的にT1緩和度(r1)が大きいほど、T1は短縮され、T1強調画像において信号が高くなります。
T1緩和度(r1)に影響を与える因子
Gd造影剤の緩和機構として、配位圏内緩和(Inner-Sphere relaxation)と配位圏外緩和(Outer-Sphere relaxation)の大きく2つ分けることができます2)。配位圏内緩和は、Gdイオンに水分子が直接配位した場合(IS)に生じます。また第二配位圏において、水分子が水素結合することで生じる緩和機構(2S)も存在しますが、その影響はわずかと考えられており、多くは無視されるか、配位圏内緩和の寄与として扱われています。配位圏外緩和は、水分子がGdイオンの外配位圏に近づくこと(OS)で生じます。配位圏外緩和の寄与を変化させることは難しいと考えられており、高緩和能造影剤の開発においては、配位圏内緩和の効果をより高めることに焦点が当てられています3)。
Fig2. (A)Gd-DOTAの構造および緩和機構、(B) ガドリニウムキレートの模式図
3)Berthe Sandra Sembo-Backonly et al., RSC Adv.,2021,11, 29762-29785より引用
配位圏内緩和に影響を与える因子として、今回は3つの要素について説明します2)-5)。
① 配位水数(q)
配位水数とは、1つの金属イオンに結合する水分子の数を指します。1つの金属イオンに結合できる水分子の数が多いほど、緩和度が大きくなります。
一方、配位水数が増えるほど、キレート配位子の結合原子数が少なくなり、安定度定数が減少するため、キレート錯体の安定性が低下し、内因性の金属イオンとの置換に対し脆弱になるとされています6),7)。
Fig3. 配位水数の異なるMRI造影剤の例(Gadobutrol/Gadopiclenol)
8)Martin Bendszus et al., J. MAGN. RESON. IMAGING 2024;60:1774–1785より一部改変
② 配位水との交換速度(kex, kex=1/τm)
配位圏内における水分子の滞在時間(τm)の逆数で、金属イオンと結合した水分子とバルク水との間の化学交換の効率を表す指標。およそ10~100ns程度9),10)が最適とされており、水分子の滞在時間が適度に短くすることで緩和度は大きくなると考えられています。
③ 回転相関時間(τR)
キレート錯体の回転時間を表す指標。
回転相関時間が大きい、すなわち回転が遅いほど、緩和度が大きくなることが知られています。高分子化(高分子量)することで回転相関時間を遅くし、緩和度を高めることができます。
Fig4. 高分子化により回転相関時間を大きくしたMRI造影剤の例(Gadoquatrane)
8)Martin Bendszus et al., J. MAGN. RESON. IMAGING 2024;60:1774–1785より引用
普段、あまり考えずに使用している造影剤ですが、造影剤の種類によって少しずつ構造に違いあり、緩和度だけでなくキレート安定性などにも影響しているのですよ。
技師長、なんだか頭が痛くなってきました。早退しても良いでしょうか、、、
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1) Martin Rohrer et al., Investigative Radiology 2005; 40(11): 715-724
2) Éva Tóth, Lothar Helm and André E. Merbach, Contrast Agent I Magnetic Resonance Imaging 2002; 61-101
3) Berthe Sandra Sembo-Backonly et al., RSC Adv. 2021; 11: 29762-29785
4) Kenneth N. Raymond and ValeÂrie C. Pierre, Bioconjugate Chem. 2005; 16: 3−8
5) Vincent Jacques et al., Investigative Radiology 2010; 45(10): 613-624
6) Lorke J et al., Investigative Radiology 2022; 57(19): 629-638
7) Leon-R LM et al., JMR Imaging 2015; 42(3): 545-565
8) Martin Bendszus et al., JMR Imaging 2024; 60: 1774–1785
9) Loredana Leone wt al., Front. Chem. 2018; 6: 158
10) Daniel T. Schuhle et al., The Loyal Society of Chemistry 2010; 39:185-191