バイエル画像検査室
MR室
DSC-MRIとDCE-MRIの違いを教えてください。

MRI撮像の方法としてDSC(Dynamic Susceptibility Contrast)とDCE(Dynamic Contrast Enhanced)という手法があるということを聞きました。その違いについて教えてください。
DSC-MRIとDCE-MRIは、造影剤を用いたダイナミックおよびパーフュージョンMRIの撮像技術です。違いについて一度整理してみましょう。

Fig.1 DSC-MRIとDCE-MRI
J. Ferré, M. Shiroishi and M. Law, Advanced techniques using contrast media in neuroimaging., Magn Reson Imaging Clin N Am 20 (2012) 699–713より引用
DSC-MRIは、3-5ml/s程度の急速静注された高濃度Gd造影剤の流入によって引き起こされる磁化率変化に伴うT2/T2*短縮効果によるMRI信号の動的な変化を測定する手法です。頭部パーフュージョン検査の撮像手法として用いられます。撮像には、磁化率変化を鋭敏に捉えられるGradient echo系のEPIシーケンスが用いられるのが一般的ですが、Spin echo系のEPIシーケンスが用いられる場合もあります。Gd造影剤のファーストパスにおける信号変化を捉えることを目的としており、造影後1-2min程度にわたって連続的に画像を取得します。取得されたデータセットより、血流量(regional Cerebral Blood Flow; rCBF)や血液容積(regional Cerebral Blood Volume; rCBV)、平均経過時間(Mean Transit Time; MTT)、ピーク到達時間(Time to Peak; TTP)などのパラメータを算出し、灌流状態を評価します。代表的な使用例としては、虚血性脳疾患において、積極的治療の対象となる組織(ペナンプラ)が存在するか否かを評価する目的での使用が挙げられます。
一方、DCE-MRIは、2ml/s程度で静注されたGd造影剤の流入によって引き起こされるT1短縮効果によるMRI信号の動的な変化を測定する手法です。体幹部のダイナミック検査の手法として広く用いられています。撮像には、短時間で撮像できる3D gradient echo系シーケンス(VIBE, LAVA, THRIVE等)が用いられ、造影剤投与後の数分間にわたり連続的に画像取得が行われます。
DCE-MRIでは目的に応じて、半定量解析および定量解析が行われます。
半定量解析では、任意に関心領域(ROI)を設定し、ROI内の時間信号強度曲線(time intensity curve; TIC)を作成します。造影早期の信号上昇やwash-outの有無など、TICの形状を評価することで腫瘍の良悪性やカテゴリー分類に役立てられます。
定量解析では、取得されたデータセットからToftsモデル等の薬物動態モデルを用いた解析を行うことで、Ktrans(造影剤の血漿中から組織の血管外細胞外腔への移行係数)、ve(組織内の血管外細胞外腔容積の占める割合)、vp(血漿容積の占める割合)、kep(造影剤の組織の血管外細胞外腔から血漿中への移行係数)といった定量値を得ることが可能で、腫瘍の血管新生や透過性などの評価に役立てられます。

Fig2. 薬物動態モデル

Fig.3 DSC-MRIとDCE-MRIのまとめ
撮像コントラストにも違いがあるのですね。DSCとDCEの違いについてよく理解できました。検査目的に応じて最適な手法を選択していきたいと思います。