― Centargoの魅力 ―
使い勝手の良さだけではなく、環境負荷軽減に貢献する
和歌山県立医科大学附属病院


和歌山県立医科大学附属病院
中央放射線部
西山 卓志 先生
造影CT検査を増やしたい
過去10年に遡って、当院のCT検査数の推移を検証したところ、単純検査数は増えているが、造影検査数の伸びは僅かであった。この状況を劇的に変えるには、何かワークフローを見直す必要があると判断し、Centargo(マルチペーシェントCT インジェクション システム)を導入することになった。
元々、余剰造影剤の廃棄量の低減に関心があったことから、導入前に、使い勝手も含めてCentargoの性能評価を確認するため、実機を用いた試験運用する機会を得たので、その結果も併せて、初期使用経験を紹介する。
受付で待機している患者の流れが良くなった
造影プロトコルに関しては、主治医の依頼と、放射線科医のチェック内容を照らし合わせ、総合的に診療放射線技師(以下、技師)が判断する。その際、過去の検査内容を、そのままコピーしたと見られる依頼もあるため、慎重に検査内容を確認することを心がけている。
使用する造影剤は、技師と看護師で、検査内容と問診票に記載されている体重を照らし合わせ11種類のシリンジ製剤(濃度[370, 350, 300, 240mg/mL])から選択する。
前室がないため、単純CTを撮影した後にCTの寝台上で末梢静脈路を確保した後に、造影剤を注入し撮影に進む。
Centargoを導入してからは、シリンジ製剤の選択やインジェクタへのセットが、空シリンジへの生食充填も含めて不要になった。当院のように、検査の途中でルート確保を行わなければならない施設にとって、これらの煩雑な作業が省けるメリットは大きい(図1)。
当院のCT室ワークフロー

図1 当院のCT室ワークフロー(グレー枠:Centargoでは不要な業務)
実際、予約枠以外で受付けている緊急検査をスムーズに実施できるようになり、機器に直接触ることのない放射線科受付のスタッフから「待機している患者の流れが良くなり、予約枠が溢れて患者対応に追われる状況が少なくなった」と、好意的なコメントを得た。
当初、不安視していた製品トレーニング(取扱説明)についても、一度聞けば、誰でも問題なく使えるようになるほど操作性がシンプルであるため、教育に関連する業務負担も低減した。
撮影方法については、造影剤と生理食塩水との同時注入が容易に行えるようになったことで、注入方法の選択肢が広がった。さらに、全ての検査で生食の後押しを実施している。些細なことだが、生食の後押しを行うとルートの中が生食で満たされるので、床に溢れても汚れないという利点がある。
看護師の立場からすると、シリンジの選択やエア抜きの作業そのものが必要なくなり、従来よりも患者観察に充てる時間が増え、満足度が高い。
造影剤の廃棄量が 1/4以下に低減
シリンジ造影剤の場合は、再利用できない余剰造影剤の廃棄が発生する。例えば、図2の撮影条件であれば、[600mgI/kg腹部造影CT検査]では廃棄量が11mL、造影剤の低減が可能な[仮想単色X線画像(VMI)]の場合も、容量の少ないシリンジ製剤(50mL)を用いても廃棄量は27mLとなり、一検査あたりは少量ではあるが積み重ねると相当な廃棄量になる。
試用期間中に余剰造影剤の廃棄量について検証した。Centargoは、必要量のみ造影剤注入するシステムであるため、その日の最終検査の使用量を念頭に、本体内部の造影剤タンクに充填されている造影剤量を調整することで、余剰造影剤を最小限にすることができる。そのため、CT1台あたりの一日の廃棄量を比較してみると、シリンジ製剤の場合は192mL、Centargoでは44mLとなり、1/4以下に低減された(図3)。
造影剤破棄の現状(シリンジ製剤の場合)

図2 造影剤廃棄の現状(シリンジ製剤の場合)
一日あたりの造影剤廃棄量の比較

図3 一日あたりの造影剤廃棄量の比較(従来のインジェクタ vs. Centargo)
シリンジ製剤を使い続ける限り、再利用できない余剰造影剤の廃棄問題は解決しない。Centargoは、CT装置の性能向上を背景とした造影剤の低減にもスムーズに対応でき、造影剤量の適正使用に繋がり、環境負荷の低減にも貢献する。
感染性廃棄物の発生量が1/3に低減
感染BOXが8分目に至るまでのCT稼働時間を比較したところ、シリンジ製剤では平均11時間、Centargoでは37時間と、3倍以上の感染性廃棄物の低減効果があった。
なにもしなくてもCentargoを導入するだけで、当院の場合は-¥181,707/年のコスト削減になる(図4)。
Centargoは、病院経営や看護師の負担軽減、患者の経済的・時間的負担の軽減、全てにおいて革新的なシステムだと感じた。
感染性廃棄物発生量の比較
感染BOXが8分目に至るまでのCT稼働時間の比較

図4 感染性廃棄物の発生量の比較(従来のインジェクタ vs. Centargo)
![[感染BOXに廃棄する物品]](/sites/g/files/vrxlpx8716/files/2025-05/publication-radfan-vol23_n2_2-3-img-new-05.png)
Point
[感染BOXに廃棄する物品]
- チューブ
- 生食シリンジ
- スパイク針 のみ

Point
加温器に並べられたバイアル製剤(30瓶)
前日から使用する分を加温できるので、慌てて途中で追加する必要がない
まとめ
いくら“環境に配慮している”とか“患者ケアの時間が増える”と言っても、使い勝手や作業効率が悪いと普及はしない。しかしCentargoは予想していた以上に使い勝手も良く、病院の経営や環境負荷軽減にも貢献する。
シリンジ製剤を使用するインジェクタで十分だと思っていても、余剰造影剤の廃棄に関する問題を解決するためには、Centargoが次の一手になる。将来的には、CT装置とより高度な連携ができるようになれば、よりヒューマンエラーを低減できると思う。造影剤とインジェクタを扱うメーカーとして、SDGsやヨードの枯渇問題などの環境負荷軽減に今後も取り組んで欲しい。

和歌山県立医科大学附属病院
〒641-0012 和歌山県和歌山市紀三井寺811番地1
TEL 073-447-2300
許可病床数(一般病床:760床、精神病床:40床)
CT担当技師:7名(診断用CT3台/治療用CT1台)
看護師:2名
検査補助員:1名
- CT撮影件数/Day:単純検査 113件
造影検査 57件
合計 170件
管理医療機器:多相電動式造影剤注入装置
販売名:Centargo CTインジェクションシステム
認証番号:302AABZX00091000
製造販売元:バイエル薬品株式会社
管理医療機器:造影剤用輸液セット
販売名:Centargo ディスポーザブルセット
認証番号:303AABZX00003000
製造販売元:バイエル薬品株式会社