Centargoが変える検査効率と臨床価値
― 2台運用のかたち

近畿大学病院 中央放射線部
森 陸翔 先生
北口 茂聖 先生

 現在、当院では1日あたり約70件の造影CT検査を実施しているが、検査予約枠は常時満枠の状態にあり、多数の予約待機患者が発生している。人的資源の配置と検査室増設による検査時間短縮は現実的ではなく、予約待機日数短縮が喫緊の課題であった。そこで当院では、2025年2月に造影CT検査の効率化および安全性向上を目的として造影剤自動注入システム「Centargo」を導入した。さらに、2025年11月の病院移転に伴い2台目を追加導入している。本稿では、当院におけるCentargoの使用経験を報告するとともに、今後の運用方法に関する展望について検討する。

当院の造影CT検査数とCentargo導入に至る経緯

 近畿大学病院(以下、当院)は、2025年11月に堺市に新設された「おおさかメディカルキャンパス」へ移転し、CT装置4台体制での運用となった。内訳は、単純CT検査優先機1台、造影CT検査優先機2台、救急撮影および高機能病棟患者優先機1台である。検査件数は、1日あたり単純CT検査が約80~120件、造影CT検査が約60~80件、救急撮影および高機能病棟患者CT検査が約30~50件である。旧病院時より、単純CTおよび造影CT検査はいずれも常に予約枠が満枠であり、移転直前から検査予約待ちは2~3ヵ月に及ぶ状況であった。本来であればCT装置の増設による検査処理件数向上が理想的であるが、設置スペース、初期導入コスト、ならびに運用に必要な人的資源の確保を総合的に考慮すると、現実的な選択肢とは言い難い。そのため、既存のCT装置を最大限に活用し、検査のスループット向上、すなわち1検査あたりの所要時間短縮が重要な課題となっていた。これを受け、2025年2月より新病院移転を見据えてCentargoを先行導入し、運用を開始した。旧病院での運用において、診療放射線技師およびCT担当看護師からの評価が高かったことから、新病院移転時に追加で1台を導入し、現在は造影CT検査優先機2台すべてにおいてCentargoを使用している。

検査の安全性向上および時間短縮

1)エア抜きの自動化

 Centargo導入前の造影剤注入器(以下、注入器)では、シリンジへのチューブ接続およびエア抜きを手動で行っていたため、空気混入の可能性が否定できず、空気塞栓のリスクおよび画像アーチファクトが存在していた1)。実際に撮影画像において、心腔内への空気混入が確認される症例も認められた。一方、Centargoでは、造影剤の本体への充填ならびに溶液の脱気、使用チューブのエア抜きが自動化されており、体内への空気混入は著しく減少した2)。 
 その結果、検査の安全性向上および時間短縮に寄与している。

2)造影剤選択機会の減少

 従来の注入器では、患者の体重や検査内容に応じて約10種類のシリンジ製剤から造影剤を選択する必要があり、選択ミスが発生する可能性があった。Centargoでは、使用造影剤が1種類に限定されているため、造影剤選択ミスが生じず、準備時間の短縮による時間効率が向上した。

3)血管外漏出リスクの低減

 造影CT検査では薬剤を高速注入するため、血管外漏出が発生する可能性がある。当院では、静脈ルート確保後、検査前に滴下確認および逆血確認が取れた場合に造影検査を施行している。従来は、いずれか一方の確認が困難な場合、生理食塩水シリンジを用いたスリル確認を追加したうえで検査を実施する運用であった。Centargo導入後は、本体から生理食塩水によるテストインジェクションを簡便に実施できるようになり、実際の造影検査と同等の注入速度での事前確認が可能となった。その結果、テストインジェクション後に問題が認められない場合のみ本検査を施行する体制へと変更された。
 この運用により、従来の低速確認では検出が困難であった高速注入時にのみ発生する血管外漏出や、ルート接続不良を未然に防げるようになった。

4)セットアップ時間の短縮

 従来のシリンジ製剤用注入器の運用では、生理食塩水による後押し(以下、生食後押し)が必要な検査において、空シリンジへの生理食塩水の充填、造影剤シリンジの選択、注入器への装着といった複数の準備工程を要していた。これらの作業には、約150秒を要していた。
 一方、Centargoでは患者ごとに延長チューブを交換するのみで準備が完了するため、セットアップ時間は約30秒となり、約2分の時間が短縮した。短縮された時間を活用し、従来はCT担当看護師が主に実施していた抜針業務を診療放射線技師も担当する体制へと移行したことで、タスクシェアリングが進み、CT検査全体の効率化が図られた(表1)。
 さらに、従来は1台のCT装置に対して診療放射線技師2名体制での検査実施が基本であったが、休憩時間等により人員が減少した場合においても、造影 CT検査を比較的円滑に実施できるようになった。その結果、造影CT検査件数の増加につながった。

 従来の工程Centargo
所要時間(秒)161.4±19.227.8±2.7

表1 CT勤務3年以下の新人技師による準備時間の違い(計5名)

実際の運用におけるメリット

1)生理食塩水との同時注入

 当院では、350mgI/mLの高濃度造影剤を使用している。しかし、体重が軽い患者に対してダイナミックCT検査を施行する場合、造影剤投与量が減少し、その結果、注入速度を低下させざるを得ない状況が生じる。注入速度の低下は、最大CT値の減少を招く要因となる。Centargoでは、造影剤と生理食塩水の同時注入が可能であり、造影剤濃度を実質的に希釈することで、必要な注入速度を維持したまま造影剤投与を行うことができる。
 表2に、肝臓ダイナミックCT検査における造影プロトコルを示す。本プロトコルでは、造影剤投与量を600mgI/kg、注入時間を30秒と設定している。従来は、患者体重に応じて造影剤濃度の異なる薬剤を選択する必要があったが、Centargo導入後は、体重区分における造影剤と生理食塩水の注入割合を変更するのみで対応が可能となった。
 さらに、実質的な造影剤使用量を抑制することで、造影剤交換回数の減少による時間効率が向上した。加えて、造影剤使用量の削減は医療廃棄物の低減にも寄与している。

表は横スクロールでご覧いただけます。

体重区分希釈濃度造影剤生食注入速度注入量造影剤使用量
36kg280mgI/mL80%20%2.6mL/s78mL62mL
38kg280mgI/mL80%20%2.7mL/s81mL65mL
40kg280mgI/mL80%20%2.8mL/s85mL68mL
42kg280mgI/mL80%20%2.9mL/s88mL71mL
44kg315mgI/mL90%10%2.8mL/s83mL75mL
46kg315mgI/mL90%10%3.0mL/s88mL80mL
48kg-350mgI/mL100%0%2.7mL/s81mL-81mL-

表2 体重別の造影剤注入プロトコル(肝ダイナミック検査600mgI/kg 30秒注入350mgI/mL造影剤使用)

2)生理食塩水による後押し効果

 当院では従来、3 D volume rendering(VR)画像の作成が必要な検査に限り、生食後押しを追加し、それ以外の検査では生食後押しを実施していなかった。Centargo導入後は、患者ごとに生理食塩水を充填する必要がなくなり、簡便に使用可能となったことから、すべての造影CT検査において生食後押しを行うプロトコルへ変更した。プロトコル変更後、鎖骨下静脈内に滞留する造影剤が減少し、全体的な造影効果の向上が認められた(図13)
 変更後プロトコルの一例として、肝臓ダイナミックCT検査における検討を示す。当院では従来、肝臓ダイナミック検査において造影剤投与量600mgI/kg、注入時間30秒とし、生食後押しは実施していなかった。Centargo導入後は、同プロトコルに10mLの生食後押しを追加した。
 本検討では、同一患者においてプロトコル変更前後で肝臓ダイナミックCT検査を施行した28例を対象とした。後期動脈相における腹部大動脈および門脈相における門脈本幹のCT値を測定し、生食後押しの有無による各CT値の平均値を算出し比較した(図2)。 その結果、門脈は同等のCT値(p=0.267)となり、腹部大動脈のCT値は生食後押し追加後に上昇を示した(p=0.021)。

生食後押しを行っていない注入プロトコルにおける鎖骨下静脈内での造影剤の滞留

図1

生食後押しを行っていない注入プロトコルにおける鎖骨下静脈内での造影剤の滞留

図2 注入器による大動脈と門脈のCT値の違い

図2

注入器による大動脈と門脈のCT値の違い

3)感染医療廃棄物の減少

 従来のCT検査においては、穿刺針、造影用延長チューブ、および造影剤シリンジのすべてが感染性医療廃棄物として扱われており、全検査室を合算すると、1日当たり約30 Lの感染性医療廃棄物が発生していた。これに対し、Centargoの導入により造影剤シリンジがバイアルへと変更された。造影剤容器は患者ルートへ直接接続されない構造であることから、非感染性医療廃棄物として分類される。その結果、感染性医療廃棄物の発生量は約30Lから6Lへと減少し、従来の約20%にまで削減された。この削減は、廃棄物回収に要する費用の低減をもたらし、病院全体のコスト削減に寄与した。

Centargo2台運用の有用性

 前述のとおり、当院では検査準備時間の短縮および将来的なタスクシフトを見据え、Centargoを2台同時に稼働させる運用体制について検討を行ってきた。当院は外来・入院を含めた造影CT検査件数が多く、近年では検査予約待機患者の増加が恒常的な課題となっている。このような背景から、検査準備工程の簡略化および自動化による業務効率化を目的として、Centargoの導入が検討された。
 Centargoは従来必要であったシリンジ交換作業を不要とし、造影剤準備に要する時間を1検査あたり約2分短縮できることを述べた。当院における造影CT検査件数は1日あたり約60~80件であり、そのうち約半数で生食後押しを実施すると仮定した場合、1日あたり約60~80分の時間短縮が見込まれる。この短縮時間を検査枠として再配分することで、1日あたり6~7件程度の造影CT検査を追加実施でき、検査予約待機期間の短縮に寄与することが示唆される。
 さらに、Centargoを2台体制で運用することにより、検査準備に生じていた待機時間が短縮され、検査工程全体のスループットが向上すると考えられる。造影剤準備に伴う人的負担の軽減により、診療放射線技師は患者の処置室から検査室への移動補助や、検査終了後の抜針といった周辺業務を分担することが可能となる。一方で、看護師は造影用ルートの確保業務に専念できるため、検査の安全性向上にも寄与する。このように、2台体制でのCentargo運用は、検査部門全体のワークフロー改善および多職種連携の最適化に資するものと考えられる。
 また、Centargo導入による造影剤使用量の最適化は、コスト削減の観点からも重要である。従来のシリンジタイプ造影剤では、1患者につき1本の使用が原則であり、体重に応じて造影剤濃度を選択した場合であっても一定量の残液が発生し、廃棄を避けることが困難であった。当院の実測データでは、1検査あたり約15mLの造影剤残液が生じている。一方、Centargoは本体に充填した造影剤から必要量のみを使用するため、検査ごとの造影剤ロスは原則として発生しない。
 当院において検査件数と造影剤バイアル使用本数を比較した結果、Centargoを2台体制で運用した場合、1日あたり5本以上の使用本数削減が確認された。特に、入院患者に対するCT検査費用はDPC制度により包括されるため、造影剤使用量の削減は病院の経済的負担軽減に直結する。廃棄されていた造影剤は、Centargo導入により入院患者の造影検査に充てることができた。
 課題点として、現在Centargoは2台とも業務開始前に準備を行い、業務終了時に片付けおよび清掃を実施しているため、実質的な稼働時間は約8時間に留まっている。本来は24時間稼働による運用が望ましいが、業務開始時には片付け、清掃および準備を行う時間的余裕がない。そこで、1台を業務開始時に片付け・清掃および準備を行う装置、もう1台を業務終了時に片付け・清掃および準備を行う装置として役割分担する運用を導入することで、いずれか一方を24時間体制で使用可能とし、Centargoが使用できない時間帯を解消することを検討した。従来は、就業時間内に2台とも造影剤を空にするよう調整する必要があり、運用上の負担が大きかった。しかし、本運用に変更することで、一方のCentargoでは片付けを行わないため、造影剤の調整は1台分のみで済むこととなり、結果として造影剤管理の負担軽減が期待される(図3)。

図3 Centargo2台体制の運用(オレンジ:稼働、青:非稼働)
図3 Centargo2台体制の運用(オレンジ:稼働、青:非稼働)

図3

Centargo2台体制の運用(オレンジ:稼働、青:非稼働)

おわりに

 以上より、Centargoを2台体制で運用することは、検査スループットの向上、患者予約時間の短縮、業務効率化およびタスクシフトの推進、ならびに造影剤使用量削減による経済的効果の観点から有用であり、当院の診療体制において合理性の高い運用形態であると考えられる。

参考文献

1)

Ie SR et al: Air embolism after intravenous injection of contrast material. South Med J 92(9): 930-3, 1999

2)

McDermott MC et al: Proactive Air Management in CT Power Injections: A Comprehensive Approach to Reducing Air Embolization. IEEE Trans Biomed Eng 68(3): 1093-103, 2021

3)

室賀浩二ほか:造影剤注入持続時間および生理食塩水後押し方法の違いにおける生理食塩水後押し効果の検討 .日放技誌 68(6): 711-9, 2012

指定管理医療機器:多相電動式造影剤注入装置
販売名:Centargo CTインジェクションシステム
認証番号:302AABZX00091000
製造販売元:バイエル薬品株式会社

管理医療機器:造影剤用輸液セット
販売名:Centargo ディスポーザブルセット
認証番号:303AABZX00003000
製造販売元:バイエル薬品株式会社

Centargo製品ページへ戻る