症例・導⼊事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

小脳テント部髄膜腫における造影MRI所見

施設名: 順天堂大学医学部附属順天堂医院
執筆者: 放射線科 鎌形 康司 先生、 放射線部 長澤 徹 先生
作成年月: 2026年10月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

髄膜腫はくも膜細胞由来の代表的な脳実質外腫瘍で、成人に発生する原発性中枢神経腫瘍の中でも頻度が高い。多くは良性で緩徐に増大するが、発生部位や腫瘍径によっては脳実質や脳神経を圧排したり、静脈洞への進展や狭窄を伴ったりすることがあり、さまざまな神経症状を呈する。MRIでは硬膜に接する脳実質外腫瘤として認められ、T1強調像、T2強調像、拡散強調像、造影T1強調像などを組み合わせて、腫瘍の局在、内部性状、周囲脳実質への影響、血管や静脈洞との関係を評価する。造影MRIは、腫瘍境界や硬膜付着部、内部の増強パターンを把握するうえで重要であり、治療方針の検討や術後フォローにも用いられる。

アムベルビストを用いたMRI検査の方法

手順と撮像 Sequence Parameter

手順と撮像 Sequence Parameter

撮像パラメータ

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撮像名撮像シー
ケンス
撮像
時間
TR
(msec)
TE
(msec)
TI
(msec)
FA
(deg)
b-value
(s/mm²)
Fat Sat
(種類)
ETL,TF
(数)
Parallel
Imaging
(倍速数)
NEX,
Averages
(加算回数)
拡散強調画像DWI EPI1分27秒400078-901000--33
T2強調画像Fast Spin
Echo
1分19秒450090-130--1921
T1強調画像Fast Spin
Echo
1分15秒28001980090--821
FLAIR(3DSag)3D Fast Spin
Echo
4分07秒6000123175090--13721
T2*画像Gradient Echo55秒47011-20---21
造影T1強調
画像(3DSag)
Fast SPGR4分07秒6.83.15---SPAIR-1.751
造影T1強調
画像(TRA)
Fast Spin
Echo
1分15秒28001980090--821

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撮像名FOV
(mm)
面内分解能
(mm)
リード方向
(matrix数)
位相方向
(step数)
Slice厚
(mm)
Slice Gap
(mm)
Slice枚数Deep Learning Recon
(有無)
拡散強調画像2401.9x1.91281283.6040無
T2強調画像2400.6x0.84122885124無
T1強調画像2400.7x0.93522565124無
FLAIR(3DSag)2401.1x1.12242241-190無
T2*画像2400.8x1.13202285124無
造影T1強調
画像(3DSag)
2200.8x0.72883200.8-200無
造影T1強調
画像(TRA)
2400.7x0.93522565124無

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MRI装置3.0T Discovery MR750w(GE ヘルスケア)
自動注入器MRI用造影剤注入装置 ソニックショットGX(根本杏林堂)
ワークステーション-

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造影条件 注入量(mL)注入速度(mL/sec)撮像タイミング
アムベルビスト7.51.5造影剤投与後2分
後押し用
生理食塩水
201.5
注射針
G数
22ー

症例

症例背景

60歳代、 男性、 75kg、 髄膜腫(髄膜皮性髄膜腫[meningothelial meningioma]、WHO grade 1相当)
家族がくも膜下出血で、心配になり他院で脳MRI施行、偶発的に右錐体骨後面から小脳テントにかけての腫瘤を指摘。当院紹介となり、頭部MRIで精査された。

図1.造影後T1強調3D GRE画像(軸位断)
右錐体後部の硬膜に付着する脳実質外腫瘤を認め、内部のやや不均一な造影効果と微細な血管構造(矢印)が確認できる

図2.造影後T1強調3D GRE画像(冠状断)
小脳テントの硬膜付着部や、静脈洞など周囲構造との関係を明瞭に確認できる

図3.1ヶ月前の造影後T1強調3D GRE画像(軸位断)
腫瘤の大きさや性状に明らかな変化は認められない

図4.1ヶ月前の造影後T1強調3D GRE画像(冠状断)
腫瘤の大きさや性状に明らかな変化は認められない

症例解説

右錐体後部および右小脳テントの硬膜に広く付着する約4 cmの脳実質外腫瘤を認め、全体として淡い増強効果を示している(図1、2)。右小脳半球は圧排され、周囲には浮腫を示唆する信号異常を伴う。腫瘤による占拠性効果により、第四脳室、橋および延髄にも軽度の偏位を認める。腫瘤は右S状静脈洞に接しているが、明らかな静脈洞内への進展は認められない。1か月前にはガドビストを用いたMRI検査が、今回と同一MRI装置・同一撮像プロトコルで施行されているが、腫瘤の大きさや性状に明らかな変化は認められない(図3、4)。本症例では、腫瘤内部の微細な血管構造や不均一な増強パターンも前回検査と視覚的に明らかな差異は認めなかった。その後、手術が施行され、髄膜皮性髄膜腫(meningothelial meningioma、WHO grade 1相当)と診断された。

当該疾患の診断における造影MRIの役割

髄膜腫の画像診断では、非造影MRIでも腫瘍の局在、脳実質外病変としての特徴、周囲脳実質の浮腫や圧排所見を評価できるが、造影MRIを加えることで、腫瘍境界、硬膜付着部、内部の増強パターン、隣接する硬膜や静脈洞との関係をより詳細に把握することができる。特に小脳テントや錐体部など解剖学的に複雑な部位では、造影後T1強調像を用いて、腫瘍と血管、硬膜、静脈洞など周囲構造との位置関係を多断面で確認することが重要である。また、腫瘍内部の均一性や不均一性、壊死・嚢胞性変化の有無、腫瘍周囲の硬膜増強なども診断の参考となる。術前には腫瘍の進展範囲や静脈洞との関係を把握することが手術計画に寄与し、術後には残存腫瘍や再発の評価に用いられる。

本症例では、右錐体後部から右小脳テントに広く付着する腫瘤の範囲および内部の増強パターンを評価するとともに、右S状静脈洞に接しているものの、明らかな静脈洞内進展を認めないことを確認した。1か月前にはガドビストを用いた造影MRIが施行されており、今回と同一MRI装置、同一撮像プロトコルで撮像されていた。腫瘍サイズや形態に明らかな変化がないことを確認したうえで、両検査の画像所見を比較した。本症例では、腫瘍内部の微細な血管構造や不均一な増強パターンは前回検査と概ね同様に観察された。なお、造影画像の信号強度や増強の程度は、造影剤の特性だけでなく、撮像条件、造影後の撮像開始時刻、患者体格や循環動態などの影響も受けるため、異なる検査間で比較する際にはこれらの条件を考慮する必要がある。造影MRI単独ではなく、非造影画像を含めた総合的な評価が重要である。

MRI技術や撮像プロトコル設定について

脳腫瘍の造影MRIでは、造影前画像で腫瘍の局在と内部性状を把握し、造影後T1強調像で増強パターン、境界、硬膜付着部、周囲構造との関係を評価する。本症例では、造影前後の軸位T1強調2D FSE画像を取得し、造影後には高空間分解能の3D T1強調GRE画像を追加した。2D FSEは造影前後で同一断面に近い条件で撮像することで増強の有無や程度を確認しやすい。一方、3D GREは薄いスライス厚で等方性に近いデータを取得でき、小脳テントや錐体部のような複雑な解剖に沿った腫瘍の進展範囲を多断面再構成で評価しやすい。信号を定量比較する場合には、撮像条件や受信感度の影響を受ける絶対信号値だけでなく、同一画像内の正常白質などを参照した相対信号も確認する。嚢胞性・壊死性成分を含む病変では造影される充実成分を中心に評価し、薄い壁や微小構造では部分容積効果に注意する。アムベルビストは承認用量である0.1 mL/kgを投与した。造影剤注入から撮像開始までの時間も造影効果に影響するため、経時比較では可能な限り同様のタイミング、装置、シーケンス条件を用いる。T2強調像、FLAIR、拡散強調像なども併用し、周囲浮腫、壊死、出血、拡散特性を含めて総合的に診断する。

  • 9.特定の背景を有する患者に関する注意 【電子添文より抜粋】

    9.8 高齢者
    患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。