症例・導⼊事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

造影MRIによる子宮体癌の画像診断

施設名: 順天堂大学医学部附属浦安病院
執筆者: 放射線科 鈴木 皓佳 先生、 佐藤 秀二 先生、 鈴木 通真 先生
作成年月: 2026年9月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

子宮体癌は、子宮内膜に発生する悪性腫瘍であり、その発生にはエストロゲンが関与し、その他にも肥満や糖尿病、未経産などがリスクとされている。子宮体癌は従来、エストロゲンに依存する1型、エストロゲンに依存しない2型に大きく分類され、1型には子宮体癌全体の大部分を占める類内膜癌が含まれ、閉経前後の発
生が多く、子宮内膜増殖症との関連も言われている。予後は比較的良いことが多い。また、2型は1型と比較して高齢の閉経後、特に60歳以上で好発し、高悪性度
で浸潤や転移を来しやすく、予後不良な漿液性癌や明細胞癌が含まれる。どちらも、不正出血を契機に発見されることが多く、治療は手術が基本で、組織型や筋層浸潤、転移の有無により化学療法や放射線治療が行われる場合もある。

アムベルビストを用いたMRI検査の方法

手順と撮像 Sequence Parameter

手順と撮像 Sequence Parameter

撮像パラメータ

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撮像名撮像シー
ケンス
撮像時間TR
(msec)
TE
(msec)
FA
(deg)
b-valueFat Sat
(種類)
ETL,TF
(数)
Parallel
Imaging
(倍速数)
NEX,
Averages
(加算回数)
息止め
(有無)
Localizer T2 SagittalSingleShot FSE0:16687.82129.7790/130--10621無
T2 SagittalFSE
(PROPELLER)
2:21615390.0290/111--2621.52無
T2 AxialFSE
(PROPELLER)
2:19513486.590/111--2421.59無
T1 AxialFSE
(PROPELLER)
2:3170515.890/111--731.67無
T1 FatSup AxialFSE
(PROPELLER)
2:2871915.890/111-CHESS1531.63無
DWIEPI2:24752275.590/1811000CHESSEPI factor 6425無
3D T1 SagittalLAVA FLEX2:305.981.8215-2point-Di xon12
CS:1.3
1無
T1 oblique AxialFSE1:366766.2790/111--321無

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MRI装置GE SIGNA Architect
自動注入器ー
ワークステーションー

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造影条件 注入量(mL)注入速度(mL/sec)撮像タイミング
アムベルビスト7one shot1分、4分
後押し用
生理食塩水
ーーー

症例

症例背景

60歳代、女性、70kg、子宮体癌(漿液性癌)
主訴:不正出血
既往:虫垂炎、腸閉塞

図1.T2強調像(矢状断)
子宮峡部を主体とした腫瘤が認められ、前方の頸部間質に浸潤が疑われる(矢頭)。子宮内腔は拡張し液貯留した状態で、背側に出血成分を示唆する液面も認められる。

図2.T1強調像(左)、脂肪抑制T1強調像(右)
腫瘤は低信号を呈し、出血や脂肪を示唆する所見はない。

図3.拡散強調像(b=1000)(左)、ADC map(右)
拡散強調像で著明な高信号、ADC値は低値(0.75×10-3mm2/sec)を呈する。

図4.脂肪抑制造影T1強調像(矢状断)
腫瘤は子宮筋層より弱い増強を呈し、内腔の貯留ともコントラストが明瞭である。明らかな筋層浸潤は認めない。。

図5.脂肪抑制造影T1強調像(子宮体部軸断)
体部後壁に増強を伴った不整な突出が認められ、基部を疑う(矢頭)。

症例解説

画像診断で子宮体癌が疑われ、遠隔転移も見られなかった。生検でもHigh-grade serous carcinomaの診断であった。そのため、腹式子宮全摘、両側卵管卵巣切除および大網切除が施行された。術後の病理所見でも、同じくHigh-grade serous carcinomaの診断で、子宮筋層1/2未満への浸潤と、一部に頸部間質浸潤も認められた。子宮漿膜を超える浸潤は見られなかった。両側卵巣および大網には病変は見られなかった。以上の所見から、FIGO2018分類でⅡ期と診断された。術後経過は良好で、明らかな合併症を認めることなく、術後8日目に退院となった。

当該疾患の診断における造影MRIの役割

子宮体癌の画像診断において、MRI、特に造影剤を使用したMRIは非常に重要な役割のある検査である。正常では、一般にT2強調像で内膜が高信号、junctional zoneが低信号、筋層が中等度信号を呈し、子宮体癌は内膜よりわずかに低く、筋層よりわずかに高い信号を呈するが、特にⅠ期相当で発見されることの多い子宮体癌はサイズも小さいことも多く、T2強調像では病変の分離が困難であることも多い。一方で、脂肪抑制造影T1強調像では、正常では内膜、筋層共に高信号を呈し、子宮体癌はこれらよりも弱い増強を呈すため、病変の分離が容易になる。筋層浸潤の評価に関しても、ダイナミックの早期相で内膜直下の筋層にsubendometrial enhancement と呼ばれる増強効果が全周性に保たれる場合には筋層浸潤なしと判断され、妊孕性温存治療を検討するために重要である。
さらに、筋層浸潤が1/2を超えるか否かの判定にもT2強調像に脂肪抑制造影T1強調像を加えることで精度が上がるとされている。特に、大きな腫瘤が子宮筋層を拡張、菲薄化させている場合、T2強調像で腫瘤が子宮筋層と同程度の信号強度である場合、卵管角部など子宮筋層が子宮の他の部位に比べて生理的に薄い部位に腫瘤が及んでいる場合、あるいは平滑筋腫や腺筋症によって子宮の解剖学的構造が変形している場合などでは、造影剤の使用により病変の境界がより明瞭となるため、有効となる。また、Ⅱ期となる頸部間質浸潤の評価にも、T2強調像での間質の低信号の破綻の有無と共に、造影剤投与後4‒5分の遅延相で間質の増強効果の破綻の有無の確認が有効とされている。これらは拡散強調像を加えることで、さらに診断を補完することができる。
ガドリニウム造影剤使用における注意点として、造影剤アレルギーや腎性全身性線維症などがあるものの、子宮体癌の検査では上述のように、T2強調像と拡散強調像を併用することでも存在診断や筋層浸潤の評価はある程度可能と考えられ、患者背景を考慮した検査を選択することも重要である。

MRI技術や撮像プロトコル設定について

当院では、女性骨盤領域における子宮および付属器のMRI検査において、呼吸運動、消化管蠕動および子宮自体の蠕動によるモーションアーチファクトを低減するため、radial samplingを利用したPROPELLER法を積極的に用いている。PROPELLER法は体動に強いという利点を有する一方、撮像時間の延長やブラーリングによる空間分解能の低下、コントラスト低下などが課題とされてきた。当院で使用しているMRIシステムには、これらの課題を改善した新しいPROPELLERシーケンスが導入されており、造影前の2D撮像において、モーションアーチファクトを抑制しながら良好なコントラストと空間分解能を有する画像を取得している。
さらに、畳み込みニューラルネットワークを応用したディープラーニング再構成技術を併用することで、画像ノイズの低減と空間分解能の向上を図っている。造影後の撮像には2point-Dixon法を利用したLAVA FLEXシーケンスで3Dボリューム撮像を行っている。脂肪抑制効果の高い3Dデータとして取得することで、任意断面の作成が可能となる。当院では、子宮体部および子宮頸部の解剖学的走行に合わせ、病変の評価に適した真の軸位断となるよう再構成した画像を臨床画像として提供している。また、3Dボリューム撮像による広い撮像範囲を生かすことで、子宮周囲組織への浸潤や骨盤内の多臓器への浸潤、リンパ節転移などの評価にも活用している。このように当院では、PROPELLER法によるモーションアーチファクト低減、ディープラーニング再構成による画質向上、LAVA FLEXによる高分解能3D造影撮像を組み合わせることで、女性骨盤MRIにおける高画質化と診断能の向上を図っている。

  • 9.特定の背景を有する患者に関する注意 【電子添文より抜粋】

    9.8 高齢者
    患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。