症例・導⼊事例
※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
両側頸動脈小体腫瘍および右頸静脈孔グロームス腫瘍のMRI所見
施設名: 東京科学大学病院
執筆者: 放射線診断科 横山 幸太 先生、 放射線部 濱中 隆宏 先生
作成年月: 2026年9月
※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。
はじめに
頭頸部傍神経節腫は、主として副交感神経系の傍神経節から発生する血流豊富な神経内分泌腫瘍で、頸動脈小体、迷走神経、頸静脈球、鼓室などに生じる。多くは緩徐に増大するが、発生部位に応じて脳神経障害、嚥下・発声障害、拍動性耳鳴などを来し得る。両側性・多発性病変では遺伝的背景を伴うこともあり、頭頸部全体を含む画像評価と長期的な経過観察が重要となる。MRIは軟部組織コントラストに優れ、腫瘍と頸動静脈、頭蓋底、脳神経走行との関係を多方向から評価できる。特に脂肪抑制併用造影T1強調像は、血流豊富な腫瘍の境界と進展範囲を明瞭化し、経時的な大きさの比較に必要な情報を提供する。
アムベルビストを用いたMRI検査の方法
手順と撮像 Sequence Parameter
撮像パラメータ
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| 撮像名 | 撮像シー ケンス | 撮像 時間 | TR (msec) | TE (msec) | TI (msec) | FA (deg) | b-value (s/mm²) | Fat Sat (種類) | ETL,TF (数) | Parallel Imaging (倍速数) | NEX, Averages (加算回数) |
| T2 STIR COR | TSE | 2:03 | 6600 | 60 | 230 | 160 | - | STIR | 17 | 3 | 2 |
| T1 AXI in-phase | 3D dixon | 2:35 | 5.89 | 2.46 | ー | 12 | - | DIXON | ー | 3 | 2 |
| T1 AXI out-phase | 3D dixon | 2:35 | 5.89 | 3.69 | ー | 12 | - | DIXON | - | 3 | 2 |
| T1 AXI FS | 3D dixon | 2:35 | 5.89 | 2.46 | ー | 12 | - | DIXON | ー | 3 | 2 |
| STIR DWI | EPI | 1:26 | 6500 | 70 | 240 | - | 0.900 | STIR | 96EPIfactor | 2 | 1.3 |
| T2 AXI | TSE | 2:09 | 5300 | 86 | ー | 160 | - | - | 19 | 3 | 1 |
| +CE T1FS AXI | 3D GRE | 2:33 | 4.7 | 1.71 | ー | 12 | - | SPAIR | ー | 3 | 2 |
| +CE T1FS SAG | 3D GRE | 2:31 | 5 | 2.46 | ー | 11 | - | SPAIR | ー | 3 | 2 |
| +CE T1FS COR | 3D GRE | 2:30 | 6.21 | 2.46 | ー | 11 | - | SPAIR | ー | 3 | 2 |
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| MRI装置 | Siemens MAGNETOM Cima.X |
| 自動注入器 | ー |
| ワークステーション | - |
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| 造影条件 | 注入量(mL) | 注入速度(mL/sec) | 撮像タイミング | |
| アムベルビスト | 5.2 | 手押し注入 | ー | |
| 後押し用 生理食塩水 | ー | ー | ー |
症例
症例背景
66歳、女性、52 kg、多発性頭頸部傍神経節腫(両側頸動脈小体腫瘍、右頸静脈孔グロームス腫瘍)
既知の両側頸動脈小体腫瘍および右頸静脈孔グロームス腫瘍の大きさ・進展範囲の経時評価
症例解説
66歳女性、体重52 kg。既知の両側頸動脈小体腫瘍および右頸静脈孔グロームス腫瘍について、病変の大きさと進展範囲の経時評価を目的にMRIを施行した。右頸静脈孔および両側頸動脈分岐部に腫瘤を認めた。病変はT1強調像で周囲筋と概ね等信号、T2強調像および拡散強調像で高信号を呈したが、非造影画像のみでは一部の境界が周囲組織と不明瞭であった。脂肪抑制併用造影T1強調像では各病変が強く造影され、腫瘍辺縁と進展範囲を確認しやすかった。半年前の従来の細胞外液性ガドリニウム造影剤を用いた検査と、今回のアムベルビストを用いた検査を同一装置で比較したところ、本症例では病変の視覚的描出に明らかな差を認めなかった。ROI内平均信号値は背景雑音の標準偏差を用いたS/Nではなく、病変/筋肉信号強度比として評価し、両検査間で大きな差を認めなかった。
当該疾患の診断における造影MRIの役割
頭頸部傍神経節腫は血流が豊富で、造影MRIでは強い造影効果を示すことが多い。単純T1強調像、T2強調像および拡散強調像でも病変の存在部位や内部性状を評価できるが、頭頸部には脂肪、筋、血管、唾液腺、骨髄など多様な組織が近接し、頭蓋底では解剖も複雑であるため、非造影画像のみでは腫瘍辺縁が周囲組織と連続して見える場合がある。脂肪抑制併用造影T1強調像では背景脂肪の信号を抑えつつ腫瘍の造影効果を捉えられるため、最大径の計測、頭蓋内・頭蓋外への進展、頸静脈孔や頸動脈間隙への広がり、頸動静脈との位置関係を把握しやすい。多発例では、既知病変だけでなく頭頸部のほかの好発部位を同一検査内で確認することも重要である。一方、強い造影効果は本疾患に特異的ではなく、血管性病変や他の多血性腫瘍との鑑別には、発生部位、血管偏位、flow void、拡散所見などを総合する必要がある。頸動脈の分岐や狭窄、腫瘍による血管包囲の評価にはMR angiographyを、骨破壊の評価にはCTを、機能的な全身検索が必要な場合には核医学検査を適宜組み合わせる。経過観察では、装置、撮像断面、スライス厚、脂肪抑制法および造影後の撮像時相を可能な範囲でそろえ、同じ基準で径を計測することが望ましい。信号値は受信コイル、装置のゲイン、撮像条件および造影後の時間に左右されるため、異なる検査間の比較では絶対値のみで判断せず、筋肉などの参照組織を用いた比と視覚評価を併用する。本症例でも、脂肪抑制併用造影T1強調像が病変境界と進展範囲の把握に寄与した。
MRI技術や撮像プロトコル設定について
撮像には3T MRI装置MAGNETOM Cima.Xを使用した。本装置は最大傾斜磁場強度200 mT/mのGemini Gradientsを備える。今回の頭頸部MRIでは、単純T1強調像、T2強調像、拡散強調像に加え、脂肪抑制併用造影3D T1強調像を取得した。両側頸動脈小体から右頸静脈孔まで複数の病変が存在するため、頭蓋底から頸部を連続して含む撮像範囲を設定し、左右差を同一画像上で比較できるようにする。造影3D T1強調像は薄い等方性ボクセルで収集すると、横断像、冠状断像、矢状断像および病変軸に沿った多断面再構成が可能となり、頭蓋底病変の進展と血管との関係を評価しやすい。3Tでは頸部の空気、歯科材料、肩周囲に起因する磁化率変化や脂肪抑制の不均一が生じ得るため、撮像中心の設定、シミング、頭頸部の固定を確認し、DWIでは歪みと信号低下の程度にも注意する。今回のアムベルビストは5.2mL(体重52 kgに対して約0.1 mL/kg)を手押し投与した。比較対象とした半年前の検査では、同一装置で従来の細胞外液性ガドリニウム造影剤10.4 mLを手押し投与し、脂肪抑制併用3D T1強調像を撮像していた。経時比較では同じ解剖レベルと表示条件を用い、病変辺縁の描出と大きさを視覚的に確認した。ROI計測では、血管内腔、flow void、部分容積効果を避けて各病変にROIを置き、同一画像内の筋肉を参照した病変/筋肉信号強度比を算出した。信号の絶対値は検査間で変動し得るため、この比も視覚評価を補足する症例内指標として扱い、単独で造影剤の性能差を示すものとは解釈しない。詳細なTR、TE、FOV、ボクセルサイズなどは撮像プロトコル表に記載する。
9.特定の背景を有する患者に関する注意 【電子添文より抜粋】
9.8 高齢者
患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。