症例・導入事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

典型的TICを呈した耳下腺多型腺腫の1例

施設名: 福岡歯科大学医科歯科総合病院
執筆者: 放射線診断分野 川波 哲 先生、放射線診断科 稲冨 大介 先生
作成年月: 2026年7月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

多型腺腫(PA: pleomorphic adenoma)は唾液腺腫瘍のうち最も頻度が高い良性腫瘍で、女性に多く認める。耳下腺では浅葉に発生することが多く、その他の顎下腺、小唾液腺、涙腺にも発生する。良性腫瘍ではあるが、約25%の症例で経過観察中に悪性転化を起こすリスクがあり、臨床的低悪性度腫瘍として認知されている。典型的な多型腺腫のMRI所見は、境界明瞭、辺縁分葉状で、病変中央の充実部がT2強調像で高信号、拡散強調像の高いADC値の軽度高信号を示し、辺縁部がT2強調像で被膜様の低信号を呈し、ダイナミックガドリニウム造影T1強調像の信号時間曲線(TIC: time intensity curve)では病変中央部が漸増型の増強パターンを示す。

アムベルビストを用いたMRI検査の方法

手順と撮像 Sequence Parameter

手順と撮像 Sequence Parameter

撮像パラメータ

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撮像名撮像シー
ケンス
撮像
時間
TR
(msec)
TE
(msec)
TI
(msec)
FA
(deg)
b-valueFat Sat
(種類)
ETL,TF
(数)
Parallel
Imaging
(倍速数)
NEX,
Averages
(加算回数)
T2W
PROPELLER
COR
FSE
PROPELLER
2:375815103.4-142--2421.5
STIR
PROPELLER
COR
FSE
PROPELLER
2:03815568.5180142-STIR2621
T1WI
PROPELLER
COR
FSE
PROPELLER
2:3961116-142--421.5
T2WI
PROPELLER
AX
FSE
PROPELLER
2:03559899.3-142--2421.5
STIR
PROPELLER
AX
FSE
PROPELLER
1:30819969.4180142-STIR2621
T1WI
PROPELLER
AX
FSE
PROPELLER
2:1061116-142--421.5
PROPELLER
DWI Ax
FSE
PROPELLER
3:56562073.6-1101000CHESS161.51.5
DWI MUSE AxEPI2:47395980-901000--1.52
+Gd Dynamic
LAVA Flex
LAVA
Flex(DIXON)
4:15
(17sec×15Phase)
8.51.8-15-DIXON-21
+Gd T1WI
Flex COR
FSE
Flex(DIXON)
2:4749610-142-DIXON321
+Gd T1WI
Flex AX
FSE
Flex(DIXON)
3:0661710-142-DIXON421
+Gd 3D T1WI
FS Cube SAG
Cube
HyperSense
5:1953911-90-CHESS2821.5

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撮像名FOV
(mm)
面内分解能
(mm)
リード方向
(mm)
位相方向
(step数)
Slice厚
(mm)
Slice Gap
(mm)
Slice枚数Deep Learning Recon
(有無)
T2WI
PROPELLER
COR
2200.6×0.635635640.525無
STIR
PROPELLER
COR
2200.8×0.828828840.525無
T1WI
PROPELLER
COR
2200.8×0.828828840.525無
T2WI
PROPELLER
AX
2200.6×0.635635640.525無
STIR
PROPELLER
AX
2200.8×0.828828840.525無
T1WI
PROPELLER
AX
2200.8×0.828828840.525無
PROPELLER
DWI Ax
2202.3×2.3969640.525無
DWI MUSE Ax2602.3×2.311211240.525無
+Gd Dynamic
LAVA Flex
2501.0×1.22562003-1.572無
+Gd T1WI
Flex COR
2200.7×1.032022440.525無
+Gd T1WI
Flex AX
2200.7×1.032022440.525無
+Gd 3D T1WI
FS Cube SAG
2400.9×0.92562561-0.5320無

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MRI装置SIGNA Architect 3.0T MRI - GE Healthcare
自動注入器sonic shot 7 - 根本杏林堂
ワークステーション-

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造影条件 注入量(mL)注入速度(mL/sec)撮像タイミング
アムベルビスト4.9215 Phaseの連続撮像
1 Phase(Pre)終了後に
注入開始
後押し用
生理食塩水
15.72

症例

症例背景

20歳代、女性、49kg、耳下腺多型腺腫
左下顎部腫脹

図1.造影剤注入モニタ画面
22G留置針を使用し,注入速度2ml/secで造影剤投与後に生理食塩水をフラッ シュ、最大圧30PSIと従来品と比較して注入圧が低い.

図2.T1強調像
左耳下腺に低信号腫瘤を認める

図3.T2強調像
腫瘤は境界明瞭な分葉状を呈し、内部は著明な高信号を示す

図4.拡散強調像
軽度の高信号を示す(ADC=2.57x10-3mm2/s)

図5.ガドリニウム造影後脂肪抑制T1強調像
内部不均一な増強効果を示す

図6.TIC: time intensity curve
造影剤の注入開始より漸増型の増強パターンを示す

症例解説

左耳下腺腫瘍の生検を施行後、治療介入のタイミングを考慮するため、造影MRIによる経過観察を行う予定である。

当該疾患の診断における造影MRIの役割

耳下腺腫瘍の精査におけるガドリニウム造影T1強調像は、微小な腫瘍性病変の検出や腫瘍の性状判定に有用なことが知られ、適切な生検部位を同定したり、不必要な外科手術を回避したりすることができる。耳下腺腫瘍で最も頻度が高い多型腺腫では、拡散強調像とダイナミックガドリニウム造影T1強調像が鑑別診断を進めるうえで有用であり、拡散強調像の高ADC値、ダイナミックガドリニウム造影後のTICで漸増型を示す。なお、細胞成分に富むcellular PAでは拡散強調像の低ADC値、ダイナミックガドリニウム造影後のTICで急増漸減型を示し、唾液腺悪性腫瘍やWarthin腫瘍との鑑別が問題となる。

また、造影MRIを用いて年余にわたる経過観察が行われることが予測される際には、Gdキレート安定性が高く、腎性全身性線維症(NSF: nephrogenic systemic fibrosis)や小脳歯状核や淡蒼球へのGd残存などの潜在的リスクを軽減した製剤の使用が望まれる。またガドリニウム使用量の低減は、生活環境への汚染の問題にもよりよいだろう。

MRI技術や撮像プロトコル設定について

頭頚部/口腔領域のMRIでは嚥下、呼吸、舌運動などによるモーションアーチファクトが問題となるため、GE社製MRIのモーション補正シーケンスであるPROPELLERを併用、冠状断像でT1強調像、T2強調像、脂肪抑制T2強調像を、軸位横断像でT1強調像、T2強調像、脂肪抑制T2強調像、拡散強調像の撮影を行い、ガドリニウム造影後のダイナミック撮影、3D脂肪抑制T1強調像を行っている。造影検査ではガドリニウム製剤を注入速度2ml/sec、生理食塩水の後押しにて使用している。なおガドリニウム造影後の3D脂肪抑制T1強調画像では、Dixon法を使用し、歯科治療後の補綴物による局所磁場の大きな乱れによる画質劣化を生じないようにしている。

参考文献

1)Yabuuchi H, Kamitani T, Sagiyama K, et al. Characterization of parotid gland tumors: added value of permeability MR imaging to DWI and DCE-MRI. Eur Radiol. 2020 Dec;30(12):6402-6412.
2)Parillo M, Vaccarino F, Falzone A, et al. Use of gadolinium-based contrast agents in head and neck cancer diagnosis, staging, and monitoring: current applications and future perspectives. Eur Radiol. 2026 May;36(5):3648-3660.