症例・導⼊事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

Dynamic MRIを施行した腹腔内巨大神経内分泌腫瘍

施設名: 恵佑会札幌病院
執筆者: 放射線診断科 IVRセンター 児玉 芳尚 先生、放射線科・画像診断部門 小池 剛史 先生
作成年月: 2026年7月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

神経内分泌腫瘍は、神経内分泌細胞から発生する腫瘍であり、様々な部位から発生しうる。消化器や肺が好発部位で、腹部であれば、消化管、膵臓などが多い。腹膜や後腹膜などの神経節から発生する場合もある。ホルモンを分泌する機能性のものと、非機能性のものに分けられる。機能性のものは、インスリン、ガストリン、セロトニンなどを過剰分泌し、低血糖、難治性潰瘍、顔面紅潮、下痢などを引き起こす。非機能性のものは、無症状のまま経過するため、大きなものが多い。治療は完全切除が基本ですが、切除不能例や再発例では、薬物療法や放射線内用療法なども行われるようになってきた。

アムベルビストを用いたMRI検査の方法

手順と撮像 Sequence Parameter

手順と撮像 Sequence Parameter

撮像パラメータ

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撮像名撮像シーケンス撮像時間TR
(msec)
TE
(msec)
FA
(deg)
b-value (s/mm²)Fat Sat (種類)ETL,TF (数)Parallel Imaging (倍速数)NEX,Averages (加算回数)息止め
(有無)
Dual FFE Tra (上腹部)FFE14sec
×2
161.23in 2.3
out 1.15
60SENCE
2.0
1
Dual FFE Tra (下腹部)14sec
×2
T2w_Tra_BH Tra (上腹部)TSE17sec13410.12909046SENCE
2.4
1
T2w_Tra_BH Tra (下腹部)17sec14353.2790
T2wFs_Tra_RT Tra(上腹部)TSE2:482385.378090SPIR21SENCE
3.0
1呼吸同期
T2wFs_Tra_RT Tra (下腹部)2:482552.9580
DWI_b1000_Tra_FB adb (上腹部)Single shot SE EPI2:48400067.81901000SPAIR73SENCE
2.0
1
DWI_b1000_ Tra_FB adb (下腹部)2:48400067.81
Dual FFE Cor (上腹部)FFE11sec
×2
169.14in 2.3
out 1.15
60SENCE
2.0
1
Dual FFE Cor (下腹部)11sec
×2
T2w_Cor_BH Tra (上腹部)TSE13sec
×2
800809058SENCE
3.0
1
T2w_Cor_BH Tra (下腹部)13sec
×2
80080
Dyn_eTHRIVE_Tra_BH3D TFE14sec
×4
3.31.6110SPAIR46CS-SENCE
2.8
1
CE T1wFs Cor3D TFE14sec3.081.4812SPAIR16CS-SENCE
3.5
1
CE T1wFs Sag3D TFE17sec3.081.4812SPAIR16CS-SENCE
3.5
1

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撮像名FOV
(mm)
面内分解能 (mm)リード方向 (matrix数)位相方向
(step数)
Slice厚
(mm)
Slice Gap
(mm)
Slice枚数Deep Learning Recon
(有無)
k-space
Dual FFE Tra (上腹部)3701.59×1.45RL
232
AP
206
504488Cartesian
Dual FFE Tra (下腹部)44
T2w_Tra_BH Tra (上腹部)3701.40×1.61RL
264
AP
230
504488Cartesian
T2w_Tra_BH Tra (下腹部)44
T2wFs_Tra_RT Tra (上腹部)3701.68×1.68248248504488MultiVane
T2wFs_Tra_RT Tra (下腹部)44
DWI_b1000_Tra_FB adb (上腹部)4103.01×2.81RL
136
AP
143
504488Cartesian
DWI_b1000_Tra_FB adb (下腹部)44
Dual FFE Cor (上腹部)2304501.61×1.45FH
184
RL
166
502525Cartesian
Dual FFE Cor (下腹部)23025
T2w_Cor_BH Tra (上腹部)2304501.40×1.61FH
199
RL
175
502525Cartesian
T2w_Cor_BH Tra (下腹部)23025
Dyn_eTHRIVE_Tra_BH3801.51×1.70RL
252
AP
224
40148Cartesian
CE T1wFs Cor4001.49×1.70FH
268
RL
235
4087Cartesian
CE T1wFs Sag4001.49×1.70FH
268
AP
235
40110Cartesian

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MRI装置Ingenia Elition 3.0T X
自動注入器Nemoto sonic shot 7
ワークステーション

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造影条件 注入量(mL)注入速度(mL/sec)撮像タイミング
アムベルビスト7.71Dynamic
後押し用
生理食塩水
201

症例

症例背景

30歳代、男性、77kg、神経内分泌腫瘍
下部消化管内視鏡検査にて、粘膜下腫瘍を疑われ、CTにて、15cm大の腹腔内腫瘤を指摘された。精査目的にて、MRIが撮像された。

図1.T1強調像 (左: In phase, 右: Out of phase)
腹腔内に肝臓と比較し、T1強調像で低信号の腫瘤影が認められる。境界は明瞭で、内部の脂肪もみられない。

図2.T2強調像 (左: 息止めFast Spin Echo, 右: 脂肪抑制呼吸同期Fast Spin Echo)
腹腔内に肝臓と比較し、T2強調像で高信号の腫瘤影が認められる。境界は明瞭で、内部も比較的均一で、液状変性などは認めない。

図3.Coronal Image (左: T2強調像, 右: 造影T1強調像)
腹腔内に巨大な腫瘤影が認められ、境界は明瞭であるが、二こぶ状の雪だるまのような形態を示している。

図4.拡散強調像 (左:反転画像, b=1000, 右: ADC map)
拡散強調像では高信号を示している。ADCではそれほど低信号ではない。

図5.造影dynamic MRI (左上: 造影剤投与前, 右上: 30秒後, 左下: 70秒後,右下: 180秒後)
造影dynamic MRIでは、30秒後の後期動脈相から比較的均一に強い濃染像が認められる。その後の門脈相、平衡相でも強い濃染が持続している。

症例解説

CT、MRIにて、巨大多血性腹腔内腫瘍のリンパ節転移と画像診断された。鑑別疾患としては、神経内分泌腫瘍、消化管間質腫瘍、脂肪肉腫などが鑑別疾患として挙げられた。Dynamic CTでの比較的均一な早期濃染像が認められたため、まれではあるが、神経内分泌腫瘍が診断の第一と考えられた。リンパ節転移もあり、根治切除は困難と判断され、治療方針の決定のため、組織型を確定するために経皮生検が行われた。経皮生検の結果、神経内分泌腫瘍と診断された。生検検体では、核分裂像は乏しくG1相当と考えられた。リンパ節転移もあり、根治切除は困難と判断され、薬物療法またはペプチド受容体放射線性核種療法が選択された。

当該疾患の診断における造影MRIの役割

腹腔内腫瘍の鑑別疾患として、神経内分泌腫瘍、消化管間質腫瘍、肉腫などが挙げられる。
これらの鑑別は非常に難しいが、血流動態や壊死の有無などはある程度参考になると考えられる。
脂肪肉腫の鑑別には、脂肪の有無が重要である。MRIは脂肪の有無の鑑別には非常に有用なモダリティである。粗大な脂肪に関しては、脂肪抑制画像により鑑別可能であり、微細な脂肪に関しても、T1強調像のchemical shift imagingにより、検出が可能である。これにより、脂肪がない場合は、脂肪肉腫の可能性は下がる。
次に血流動態であるが、dynamic MRIにより明瞭に描出可能である。

神経内分泌腫瘍は多血性腫瘍で、動脈相で強く濃染することがよく知られている。Dynamic MRIを行うことにより、血流動態が判明し、重要な鑑別が得られる。また、壊死の有無の診断に有用である。大きな腫瘍では内部壊死を伴うことが多く、これは、神経内分泌腫瘍、消化管間質腫瘍、肉腫でも同様である。ただし、神経内分泌腫瘍は、Grade1では比較的均一で、あまり壊死は見られず、Grade2以上では内部に壊死を伴うことが知られている。本症例では、動脈相で均一に強い濃染が見られ、大きさに比較し、内部壊死をほとんど伴っていないことから、神経内分泌腫瘍のGrade1が最も疑われた。ただし、GISTや肉腫でも濃染し、壊死が少ない腫瘍も可能性としてははあり得るため、最終診断には生検を要すると考えられる。

MRI技術や撮像プロトコル設定について

MRIは、Philips社製 Ingenia Elition 3.0T X装置を使用しています。検査前の準備として、今回のような腎臓~骨盤腔検査では、なるべく腸管ガスの影響を排除するため、MRI検査前にトイレに行くことを受付時にお願いしています。また検査前説明では撮像時の体動アーチファクトを抑制してブレのない画像を得るために腹帯使用の必要性と息止め方法のトレーニングを行なっています。息止め時間は患者さんの状態を見て判断し、高速撮影技術であるSENCE, Compressed SENCEを使い分けて撮像しています。脂肪抑制T2強調画像横断像はマルチショットで撮像していますが、動きの影響を少なくするため、Radial収集であるMultiVaneで行い、ショットの長さを呼気時に合うように調整して撮像しています。また呼吸同期にはPhilips MRI装置に搭載されている、AI技術と赤外線カメラを使った非接触型の呼吸検知システムVitalEyeを用いることで安定した同期撮像を行っています。腎臓~骨盤腔の横断像は撮像範囲が広いため、上腹部と下腹部に分けて撮像したのち2シリーズの画像を統合してPACSへ送信しています。範囲が広く、撮像時間もかかるため、上腹部のみ各シーケンスをまとめて撮像した後に、続けて下腹部をまとめて撮像することでリファレンススキャンの回数を減らし、時間短縮を行なっています。また造影前のT1強調画像とT2強調画像の冠状断撮像についてはB1不均一の影響を少なくするため、上腹部と下腹部を分けて撮像した後に上下画像を統合しています。当院の造影剤注入条件は、注入量は体重あたり0.1mL/kgで生理食塩水20mLを後押ししています。ダイナミック撮像の場合はインジェクターにて造影剤の注入速度1.0mL/secで投与し、続けて生理食塩水1.0mL/secで後押し撮像しています。