症例・導⼊事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

環軸椎間神経鞘腫の術前CT

施設名: 徳島大学病院
執筆者: 放射線診断科 松下 知樹 先生、 原田 雅史 先生、 医療技術部 湯浅 将生 先生
作成年月: 2026年9月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

症例背景

30歳代、女性、80kg、頚椎椎間孔神経鞘腫

検査目的

歩容異常や易転倒性を契機に環軸椎間のダンベル型神経鞘腫が疑われて摘出術の方針となり,術前検査のために4D-CTが施行された.

使用造影剤

イオプロミド370注「BYL」 / 50mL

症例解説

腫瘍摘出術が施行され,神経鞘腫(ancient schwannoma)と診断された.手術に伴う合併症なく,神経症状は改善傾向であり,リハビリを行っている.

画像所見

図1.静脈相 冠状断
環軸椎間左側でダンベル型の嚢胞性腫瘍があり,頸髄を圧迫している.

図2.後期動脈相 水平断
嚢胞性腫瘍がみられるが,表示条件によっては同定が難しい.

図3.後期動脈相(骨サブトラクション)水平断
図2と同一断面.腫瘍の左腹側に細径な椎骨動脈がみられる.

図4.VR画像 後面
腫瘍とそれを取り囲む頚椎や動脈との位置関係が明瞭である.

撮影プロトコル

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使用機器CT機種名/メーカー名Aquilion One Insight Edition / Canon
CT検出器の列数320
ワークステーション名/メーカー名ZIO station / REVORAS

撮影条件

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撮影時相単純動脈相静脈相平衡相
管電圧 (kV)808080

80

管電流時間 (Eff.mAs)90 mAs100 mAs100 mAs

100 mAs

ビーム幅160 mm160 mm160 mm

160 mm

撮影スライス厚(mm)0.50.50.5

0.5

焦点サイズSmallSmallSmall

Small

スキャンモードVolumeVolumeVolume

Volume

スキャン速度 (sec/rot)1.01.01.0

1.0

ピッチーーー

ー

スキャン範囲頭頚部移行部頭頚部移行部頭頚部移行部

頭頚部移行部

撮影時間 (sec)111

1

撮影方向固定固定固定

固定

再構成条件

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 単純動脈相静脈相静脈相
ルーチン:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm)0.5 / 0.50.5 / 0.50.5 / 0.50.5 / 0.5
ルーチン:再構成関数/逐次近似応用法Brain CTA / AiCE L2Brain CTA / AiCE L2Brain CTA / AiCE L2Brain CTA / AiCE L2
3D/MPR用:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm)0.5 / 0.50.5 / 0.50.5 / 0.50.5 / 0.5
3D/MPR用:再構成関数/逐次近似応用法Brain CTA / AiCE L2Brain CTA / AiCE L2Brain CTA / AiCE L2Brain CTA / AiCE L2

造影条件

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自動注入器機種名/メーカー名MEDRAD® Centargo CT Injection System / バイエル薬品株式会社
造影剤名イオプロミド370注シリンジ 100mL 「BYL」

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撮影プロトコル4D撮像
造影剤:投与量 (mL)50
造影剤:注入速度(mL/sec)5
生食:投与量 (mL)40
生食:注入速度(mL/sec)5
スキャンタイミング固定
ディレイタイムー
留置針サイズ (G)20
注入圧リミット (kg/cm2)1.5

4D-CT 撮影を行った.造影効果を高めるため低管電圧で撮像している.最適な動脈相や静脈相の画像は造影剤注入開始12秒以降からの連続スキャンによって後方視的に取得できる.

当該疾患の診断における造影CTの役割

後頭骨-環椎と環椎-軸椎の間は他のレベルと異なり,いわゆる椎間孔が存在せず,骨性要素に乏しい.そのため腫瘍は外側に向かって発育しやすい.さらに,上位頚椎レベルでは脊柱管径が比較的に大きいことも相まって,症状の出現時には腫瘍が大きく発育していることがしばしばある.また,この部位に生じた腫瘍は椎骨動脈やその周囲の静脈叢と近接しやすいため,術前評価として血管との位置関係の把握は最重要項目の一つである.そのため,適切な造影CT撮像によって,それらの位置関係や左右差などを明瞭に描出する必要がある.椎骨動脈との位置関係によっては手術に際しての近位動脈確保も考慮されるほか,術中に椎骨動脈と腫瘍の剥離が困難な場合には腫瘍亜全摘に留めることも考慮される.また,術前画像をナビゲーションシステムとして用いることで,より手術の安全性を高めることができる.本疾患の造影CT画像は,術前の計画および術中の安全性向上のいずれにも関わる重要な役割を担っている.

参考 内藤堅太郎: 上位頸髄神経鞘腫. 脊椎脊髄 37 (4):259‒265,2024

CT技術や撮像プロトコル設定について

頭頚部の明瞭な血管描出を目標としており,高濃度のヨード造影剤を選択し,急速静注することが必要である.さらに生理食塩水で後押しを行うことでボーラス性を高めている.
本症例では4D撮像を行なって腫瘍の遠位側にあたる頭蓋内の血流情報も可能な範囲で同時に取得することを目指した.