症例・導⼊事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

動脈相を2相撮像することでAdamkiewicz動脈と根髄静脈および前脊髄静脈を描出可能であった1例

施設名: 長崎大学病院
執筆者: 放射線科 小池 玄文 先生、 石橋 顕治 先生
作成年月: 2026年7月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

症例背景

50歳代、男性、69kg、解離性胸腹部大動脈瘤

検査目的

慢性大動脈解離術後に残存する解離性胸腹部大動脈瘤術前のAdamkiewicz動脈同定目的

使用造影剤

イオプロミド370注シリンジ / 98mL

症例解説

慢性大動脈解離(Stanford A)に対して、10年前に大動脈基部形成術+全弓部置換術が施行された。残存する解離性胸腹部大動脈瘤が増大傾向であったため、胸腹部大動脈置換術が施行された。術後の経過は良好で、今後はCTでfollowの予定である。

画像所見

図1.動脈相1相目冠状断像
脊髄前面を走行するAdamkiewicz動脈が描出され、左第11肋間動脈と連続しているように見える(赤→)。

図2.動脈相1相目冠状断像 MIP
脊髄前面を走行するAdamkiewicz動脈が描出され、左第11肋間動脈と連続して いる(赤→)。

図3.動脈相2相目冠状断像
Adamkiewicz動脈より1椎体上のレベルにヘアピン状に走る血管を認めるが(黄→)、肋間動脈との連続は認めず、根髄静脈および前脊髄静脈と考えられる。

撮影プロトコル

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使用機器CT機種名/メーカー名Precision / Canon
CT検出器の列数160列 / 0.25mm
ワークステーション名/メーカー名ZIO-VGR / AMIN

撮影条件

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撮影時相単純早期動脈相後期動脈相
管電圧 (kV)120100100
AECSD12/3mmSD16/3mmSD16/3mm
 (AECの設定)AIDR 3D WeakAIDR 3D WeakAIDR 3D Weak
ビーム幅0.5×800.25×1600.25×160
撮影スライス厚(mm)0.50.250.25
焦点サイズL1AutoAuto
スキャンモードNRSHRSHR
スキャン速度 (sec/rot)0.50.50.5
ピッチ65129129
スキャン範囲胸部から骨盤胸部から骨盤胸部から骨盤
撮影時間 (sec)101010
撮影方向頭⇒足頭⇒足足⇒頭

再構成条件

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 単純早期動脈相後期動脈相
ルーチン:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm)3.0 /2.41.0 /1.01.0 /1.0
ルーチン:再構成関数/逐次近似応用法AIDR 3D eMildAice Body Sharp StandardAice Body Sharp Standard
3D/MPR用:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm)ー0.25 / 0.20.25 / 0.2
3D/MPR用:再構成関数/逐次近似応用法ーAice Body Sharp StandardAice Body Sharp Standard

造影条件

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自動注入器機種名/メーカー名デュアルショットGX7 / Nemoto
造影剤名イオプロミド370注シリンジ100ml

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撮影プロトコル早期動脈相後期動脈相
造影剤:投与量 (mgl/kg/sec) 28.0
造影剤:注入時間 (sec)20
生食:投与量 (mL)35
生食:注入速度 (mL/sec)、注入時間 (sec)ー
スキャンタイミングBT法(横隔膜上大動脈/200HU)
ディレイタイムトリガー後12秒
留置針サイズ (G)20
注入圧リミット (kg/cm2)10,0

1回の息止めで動脈相を2回撮像しMPRを作成。造影剤はAortaのCT値が450HU以上となるように注入

*早期相から後期相まで連続し頭⇒足 足⇒頭と連続撮像。
息止めも1回で2相撮像となり、息止め時間は20秒程度。頭⇒足(10秒)+ 足⇒頭(10秒)

当該疾患の診断における造影CTの役割

胸腹部大動脈瘤に対する手術治療において、Adamkiewicz動脈(AKA)の術前同定は手術術式に影響を与えるばかりでなく、術後の対麻痺などの脊髄虚血リスクを低減させるために極めて重要である。
造影CTでは胸腹部大動脈とAKAを分岐する肋間動脈や腰動脈、側副血行路を同時に描出可能であり、更に高精細CTを用いることでAKAの連続性の描出も向上する。
CTにおけるAKAの診断で最も注意すべきは、大前根髄質静脈(GARV)も類似したヘアピンパターンを描くためAKAとGARVを区別する必要がある。その為には大動脈~AKAまで一連の血管経路の連続性を証明することのほかに、2相撮像を行うことで動静脈を区別する方法が挙げられる。
造影CTの欠点として通常の胸腹部大動脈瘤、大動脈解離の検査と異なり、高濃度造影剤を急速注入するためヨード量が増加してしまう。腎機能低下の患者には、検査前後での輸液や希釈造影法、造影剤濃度の変更などを考慮する必要がある。また低管電圧撮影や再構成法を組み合わせることで、被ばく低減と描出精度向上の両立を行う。

CT技術や撮像プロトコル設定について

高精細CT(Aquilion Precision  Canon社製)では検出器厚0.25mm×0.25mmと従来型CTと比較し、空間分解能が向上しており、Adamkiewicz動脈(AKA)の連続性の描出が向上した。
撮像条件ではCT値を上昇させるために管電圧100kVpを使用し、被ばく線量は従来CTと同程度となるように設定を行っている。
造影剤はAortaのCT値が450HU以上となるように370mgI/mlの高濃度造影剤をFractional Dose 28.0mgl/kg/sec、注入時間20秒でBolus Tracking法を用いている。
撮像では一度の息止めで動脈2相撮像を行っている。息止め時間が20秒を超えることもあるため事前に息止めの説明と練習を行う。1相目で大動脈から肋間動脈、AKA,前脊髄動脈までの連続性を描出し、2相目で根髄静脈および前脊髄静脈を描出しMPRを作成することで前脊髄動脈と大前根髄質静脈の区別が容易となる。また胸腹部大動脈瘤や大動脈解離では、最適な造影タイミングを得られない可能性があるが、動脈2相撮像を行うことで、外れた1相目のAKAを2相目で描出することも可能である。
画像再構成では脊髄内のCNRを向上させる為、空間分解能を維持したまま高いノイズ低減効果が得られるDeep Learning Reconstructionをルーチンとし使用しているが、椎間孔から脊柱管内に入るところで骨と近接し連続性が不明瞭の際は、逐次近似再構成法を追加している。