症例・導⼊事例
※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
心臓大血管CTによるTAVI術前プランニング
施設名: 愛媛大学医学部附属病院
執筆者: 愛媛大学大学院医学系研究科放射線医学 大原 健太郎 先生、澤田 峻 先生、末国 宏 先生、城戸 輝仁 先生
作成年月: 2026年5月
※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。
症例背景
症例背景
80歳代、女性、49kg、大動脈弁狭窄症、高血圧症
検査目的
TAVI術前精査目的に心臓大血管CT施行
使用造影剤
イオプロミド370注100mL「BYL」/ 60mL
症例解説
前医心エコー検査で重症大動脈弁狭窄症(AS)を指摘され、TAVI施行目的に当院を紹介受診した。TAVI術前CTで大動脈弁周囲構造(弁輪、Valsalva洞、ST junction、左室流出路、冠動脈)やアクセスルートの評価を行った後、TAVIが施行された。術後4日の心エコー検査では大動脈弁口通過血流速度や平均圧較差の改善を認めた。
画像所見
撮影プロトコル
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| 使用機器 | CT機種名/メーカー名 | Revolution Apex Elite / GE |
| CT検出器の列数/スライス数 | 256 / 512 | |
| ワークステーション名/メーカー名 | Synapse Vincent Ver.6.8.0001 / Fujifilm Medical Systems |
撮影条件
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| 撮影時相 | カルシウムスコア | pre-contrast CT | 動脈相(心臓) | 動脈相(大血管) | 心筋遅延造影CT |
| 管電圧 (kV) | 120 | 80 | 100/120 | 100 | 80 |
| AEC | on | on | on | on | on |
| (AECの設定)ノイズインデックス | 20 | 20 | 25 | 25 | 10 |
| ビーム幅 | 160 | 160 | 160 | 40 | 160 |
| 撮影スライス厚(mm) | 2.5 | 2.5 | 0.625 | 0.625 | 0.625 |
| 焦点サイズ | Small | Small | 体格(mA)に応じて | Large | Large |
| スキャンモード | Axial | Axial | Axial | Helical | Axial |
| スキャン速度(sec/rot) | 0.28 | 0.28 | 0.234 | 0.28 | 0.28 |
| ピッチ | NA | NA | NA | 0.984:1 | NA |
| スキャン範囲 | 心臓 | 心臓 | 心臓 | 胸部から膝下 | 心臓 |
| 撮影時間 (sec) | 0.3 | 0.3 | 1.2 | 7.5 | 0.3 |
| 撮影方向 | NA | NA | NA | 頭→足 | NA |
再構成条件
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| カルシウムスコア | pre-contrast CT | 動脈相(心臓) | 動脈相(大血管) | 心筋遅延造影CT | |
| ルーチン:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm) | 2.5 / 2.5 | 0.625 / 0.625 | 0.625 / 0.625 | 5.0 / 5.0 | 0.625 / 0.625 |
| ルーチン:再構成関数/逐次近似応用法 | Stnd / ASiR-V:0% | Stnd / DLIR:強 | Stnd / DLIR:中 | Stnd / DLIR:弱 | Stnd / DLIR:強 |
| 3D/MPR用:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm) | NA | NA | NA | 1.25 / 1.25 | NA |
| 3D/MPR用:再構成関数/逐次近似応用法 | NA | NA | NA | Stnd / DLIR:弱 | NA |
造影条件
| 自動注入器機種名/メーカー名 | MEDRAD® Centargo/Bayer |
| 造影剤名 | イオプロミド370注100mL「BYL」/ 60mL |
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| 撮影プロトコル | カルシウムスコア | pre-contrast CT | 動脈相(心臓) | 動脈相(大血管) | 心筋遅延造影CT |
| 造影剤:投与量 (mL) | ー | ー | NA | ー | |
| 造影剤:注入速度 (mL/sec)、注入時間 (sec) | ー | ー | 希釈造影法 (図8参照) | ー | |
| 生食:投与量 (mL) | ー | ー | 希釈造影法 (図8参照) | ー | |
| 生食:注入速度 (mL/sec)、注入時間 (sec) | ー | ー | 希釈造影法 (図8参照) | ー | |
| スキャンタイミング | ー | ー | 希釈造影法 (図8参照) | ー | |
| ディレイタイム | ー | ー | NA | ー | |
| 留置針サイズ (G) | ー | ー | 20 | ー | |
| 注入圧リミット (psi) | ー | ー | 225 | ー | |
- 当院では希釈造影法を使用し、テスト撮影で得られた患者個人のTime-attenuation curve (TAC)に基づいて撮像タイミング・投与造影剤量を決定することで、造影効果を安定化させている(図8)。まず、テスト注入を行い(20%希釈造影剤50mlを5秒注入し、生理食塩水40mlを5秒注入)、上行大動脈に関心領域(ROI)を置き、間欠的に撮影を行うことでTACを得る。得られたTACからピーク時間とピークより1秒前の造影効果及びベースのCT値を得る。仮に、目標とする大動脈のCT値が350HU、造影前の大動脈のベースCT値が50HU、20%希釈造影剤のテストピーク1秒前CT値が150HUであった場合、本番で必要な希釈率A%は以下の式のように計算できる。
(350-50) HU : (150-50) HU = A%:20%
A% = 20% × (350-50) / (150-50)
また、撮影タイミングに関してはテスト注入のピーク時間の1秒前をターゲットとし、設定を行っている。 - 動脈相(心臓)の画像は症例の体格に合わせて、100 kVpと120 kVpを使い分ける。体重<100 kgかつBMI<30 kg/m2であれば100 kVpでの撮影が推奨される。
- 心筋遅延造影CTはMRIと比較してコントラストが低いため、撮像パラメーターはコントラスト向上のために最適化する。70または80 kVpといった低電圧撮影が推奨され、管電流については画質維持のため過度に低下させないことが推奨される。ECVを算出するために同じ管電圧でpre-contrast CTを撮像している。
当該疾患の診断における造影CTの役割
TAVI術前CTは、大動脈弁輪測定、冠動脈閉塞リスク評価、最適透視角(perpendicular view)の予測、さらに大動脈から腸骨・大腿動脈までのアクセス評価を一括して担う検査であり、術前の非侵襲的検査のゴールドスタンダードとされている。弁輪面積・周囲長だけでなく、Valsalva洞(右冠尖・左冠尖・無冠尖)・ST junction・左室流出路の径や石灰化、冠動脈入口部の高さ、アクセスルートの血管径・蛇行・石灰化などを総合的に判断して、デバイス選択と手技戦略を決定する。
一方、重症ASでは通常の冠動脈CTと異なり、β遮断薬や硝酸薬の使用が制限されることが多いため、冠動脈評価に適した画像は得られないことが多い。それでも近年、TAVI術前CTによる冠動脈評価の意義が注目されつつあり、明らかな閉塞性病変がなければ侵襲的冠動脈造影は安全に省略できる可能性が示唆されている。
加えて、心筋遅延造影CTを追加すると、心筋の遅延造影や心筋細胞外容積分画(ECV)を評価でき、通常の術前CTに心筋性状評価を上乗せできる。特に、AS患者の約8~16%にATTR心アミロイドーシスが併存するとされており、遅延造影CTは心アミロイドーシスの検出や予後予測にも有用であるとされている。当院では高度腎機能障害の症例を除いて、基本的に心筋遅延造影CTを追加撮像するようにしている。
CT技術や撮像プロトコル設定について
TAVI術前CTの最適撮像プロトコルは施設や使用する装置により様々であるが、当院ではGE社のRevolution Apex Eliteを用いて、心電図同期下に心臓CTを撮像し、その後、心電図非同期下で大血管CTを撮像するという2回撮影法を採用している。造影プロトコルに関しては希釈造影法を用いて、最適な冠動脈、大血管の造影効果が得られるように工夫している(図8)。
心筋遅延造影CTはMRIと比較して、コントラストが低いため、撮像パラメーターはコントラスト向上のために最適化することが重要である。当院では80 kVpの低電圧下で、450 mgI/kg程度のヨードを投与して撮影している。撮像タイミングは造影剤投与終了8分後としている。
使用上の注意【電子添文より抜粋】
9.特定の背景を有する患者に関する注意
- 9.1.11 高血圧の患者
- 血圧上昇等、症状が悪化する恐れがある
- 9.8 高齢者
- 患者の状態を観察しながら使用量を必要最小限にするなど慎重に投与すること。本剤は主として、腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続するおそれがある。[8.6、9.2.1、9.2.2 参照]