症例・導入事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

腹部ダイナミックCTでの膵動静脈奇形の術前プランニング

施設名: 昭和医科大学藤が丘病院
執筆者: 放射線科 竹山 信之 先生
作成年月: 2026年8月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

症例背景

40歳代、男性、60kg、膵動静脈奇形

検査目的

主訴: 左背部痛・左側腹部痛。
現病歴、他院の腹部エコー検査で膵動静脈奇形と急性膵炎の診断
検査目的:膵尾部切除術前精査目的に膵ダイナミックCT施行

使用造影剤

イオプロミド370注100mLシリンジ「BYL」 / 100mL

症例解説

腹部エコー検査、造影ダイナミックCT、内視鏡下超音波検査(EUS)にて、膵動静脈奇形と診断された。急性膵炎の治療・改善後に、膵体尾部切除・脾臓同時切除が施行された。術後は膵液瘻・仮性膵嚢胞が出現したが、治療により改善された。自覚症状は改善された。

画像所見

図1.早期動脈相冠状断
膵尾部の膵実質内には点状・結節状・網状の著明な濃染(矢印)が認められ、拡張・蛇行した多数の異常血管の集簇(nidus)と思われる。脾静脈の流出静脈の早期描出(動静脈シャント)が認められる(矢頭)。

図2.早期動脈相横断像
膵尾部の膵実質内には点状・結節状・網状の著明な濃染(矢印)が認められ、拡張・蛇行した多数の異常血管の集簇(nidus)と思われる。脾静脈の流出静脈の早期描出(動静脈シャント)が認められる(矢頭)。

図3.後期動脈相横断像
膵尾部の膵実質内には点状・結節状・網状の造影効果の持続が認められ、拡張・蛇行した多数の異常血管の集簇(nidus)と思われる。

図4.門脈相横断像
膵尾部の膵実質内には点状・結節状・網状の造影効果の持続が認められ、拡張・蛇行した多数の異常血管の集簇(nidus)と思われる。

図5.平衡相横断像
膵尾部の膵実質内には点状・結節状・網状の造影効果の持続が認められ、拡張・蛇行した多数の異常血管の集簇(nidus)と思われる。

図6.早期動脈相と後期動脈相の融合画像(VR像)
膵尾部の膵実質内には点状・結節状・網状の著明な濃染(矢印)が認められ、拡張・蛇行した多数の異常血管の集簇(nidus)と思われる。

撮影プロトコル

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使用機器CT機種名/メーカー名LightSpeed VCT/GE社
CT検出器の列数/スライス数64例/64スライス
ワークステーション名/メーカー名SYNAPSE/FUJI FILM Medical

撮影条件

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撮影時相単純早期動脈相後期動脈相門脈相平衡相
管電圧 (kV)120100100100100
AECSDSDSDSDSD
(AECの設定)100-600mA100-600mA100-600mA100-600mA100-600mA
ビーム幅(mm)4040404040
撮影スライス厚(mm)0.6250.6250.6250.6251.25
焦点サイズmediummediummediummediummedium
スキャンモードHelical scanHelical scanHelical scanHelical scanHelical scan
スキャン速度(sec/rot)0.350.350.350.350.35
ピッチ0.5310.5310.5310.5311.375
スキャン範囲腹部骨盤腹部骨盤腹部骨盤腹部骨盤腹部骨盤
撮影時間 (sec)77774.2
撮影方向頭⇒足頭⇒足頭⇒足頭⇒足頭⇒足

再構成条件

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 単純早期動脈相後期動脈相門脈相平衡相
ルーチン:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm)5mm / 5mm1.25mm / 1.25mm1.25mm / 1.25mm1.25mm / 1.25mm1.25mm / 1.25mm
ルーチン:再構成関数/逐次近似応用法Standard/ASIR 40%Standard/ASIR 40%Standard/ASIR 40%Standard/ASIR 40%Standard/ASIR 40%
3D/MPR用:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm)ーーーーー
3D/MPR用:再構成関数/逐次近似応用法ーーーーー

造影条件

自動注入器機種名/メーカー名デュアルショットGX7 / 株式会社根本杏林堂
造影剤名イオプロミド370注シリンジ100mL 「BYL」

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撮影プロトコル早期動脈相後期動脈相門脈相平衡相
造影剤:投与量 (mL) 100
造影剤:注入速度 (mL/sec)、注入時間 (sec)4.0、25
生食:投与量 (mL)40
生食:注入速度 (mL/sec)、注入時間 (sec)4.0、10
スキャンタイミング固定法
ディレイタイム造影剤注入開始25秒後造影剤注入開始55秒後造影剤注入開始90秒後造影剤注入開始180秒後
留置針サイズ (G)20
注入圧リミット (psi or kg/cm2)9

膵動静脈奇形の診断は、造影ダイナミックCTによる早期動脈相が中心的役割を担います。右上肢から20Gもしくは22Gのルートをキープして、370mgI造影剤を急速注入し、早期動脈相を撮影します。

当該疾患の診断における造影CTの役割

膵動静脈奇形の診断では、造影ダイナミックCTによる早期動脈相が中心的役割を担います。診断の本質は、単なる「膵内の多血性病変」ではなく、早期動脈相にて「膵実質内または膵周囲に拡張・蛇行した多数の異常血管の集簇や異常血管網(nidus)」「点状・結節状・網状の著明な濃染」「流入動脈の拡張」「門脈・脾静脈・上腸間膜静脈などの流出静脈の早期描出(動静脈シャント)」を確認することにあります。ダイナミックCTの利点は、血管造影を行わずに、膵動静脈奇形と診断できます。さらに、CTは膵臓だけでなく、胃・十二指腸・胆道への進展、膵炎および膵周囲炎症、膵管拡張、膵管内出血、仮性動脈瘤や活動性出血、門脈・脾静脈血栓、門脈圧亢進、胃・食道静脈瘤、肝内の動静脈奇形など、病変全体一度に評価できます。流入血管・nidus・流出静脈を描出は、経動脈的塞栓術の必要性、複数の流入動脈の有無、膵切除範囲などの治療計画に有用です。注意点としては、早期動脈相を省略しないことにあります。通常の門脈相のみの腹部造影CTではnidusの濃染が不明瞭になる、門脈の早期描出を証明できない、膵周囲静脈瘤と誤認するなどの可能性があります。疑った場合は早期動脈相を含む再検査を検討します。

CT技術や撮像プロトコル設定について

今回の造影CTは血管奇形の撮影であり、370mgI/mL・100 mLを注入速度4 mL/secと生理食塩水40 mLの同速度で後押しするプロトコル(総ヨード量は37gI、単位時間あたりのヨード投与量 1.48gI/sec、造影剤注入時間 25秒、生理的食塩水10秒間注入)である。体重あたり617mgI/kgは十分量なヨード量であり、肝・胆・膵病変の術前プロトコルと同様に、単純CT撮影後、造影剤注入開始25sec後の早期動脈相にて腹腔動脈・脾動脈の血管解剖と膵動静脈奇形の描出、55secの後期動脈相で門脈分岐・脾静脈分岐の描出、90secの門脈相で肝静脈分岐の解剖の把握、平衡相で全身の撮影とした。単純CT以外は100kVp撮影としており、被曝を抑えている。