症例・導⼊事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

CT perfusionを用いた脳梗塞の診断

施設名: 熊本大学大学院生命科学研究部
執筆者: 画像動態応用医学共同研究講座 上谷 浩之 先生、放射線診断学講座 平井 俊範 先生
作成年月:2024年10月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

症例背景

60歳代、男性、61kg、急性期脳梗塞

検査目的

構音障害、左上下肢失調を主訴に来院し、一過性脳虚血発作疑い。ICD植込み後のため、CT angiographyで脳血管評価目的。

使用造影剤

イオプロミド370注シリンジ100mL「BYL」/ 50mL

症例解説

発症5日目に脳血管評価目的でCT angiographyの撮像依頼あり。MRI撮像ができないため、脳梗塞評価も兼ねて、全脳の多時相CT angiographyを撮像し、同一の収集データからCT perfusion画像も評価した。TIAの臨床診断であったが、単純CTとCT perfusionの所見から急性期~亜急性期ラクナ梗塞と診断した。

画像所見

図1.単純CT
橋傍正中右側に軽度低吸収域あり。

図2.CBF map
同部に軽度CBF低下あり。

図3.CBV map
同部に軽度CBV低下あり。

図4.CT angiography
多時相撮影から最適化したCT angiographyで主幹動脈に有意狭窄なし

撮影プロトコル

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使用機器CT機種名/メーカー名Aquilion ONE genesis edition / Canon Medical Systems
CT検出器の列数320列
ワークステーション名/メーカー名Vitrea / Canon Medical Systems

撮影条件

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撮影時相単純1-16相17-20相
管電圧 (kV)120100100
AECなしなしなし
管電流時間 (Eff.mAs)280mAs(439)100mAs100mAs
ビーム幅 (mm)80×0.5320×0.5320×0.5
撮影スライス厚 (mm)40160160
焦点サイズSmallSmallSmall
スキャンモードヘリカルvolumevolume
スキャン速度(sec/rot)111
ピッチ0.63711
スキャン範囲全脳全脳全脳
撮影時間 (sec)8.411
撮影方向頭→足固定固定

再構成条件

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 単純1-16相17-20相
ルーチン:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm)5 / 50.5 / 0.50.5 / 0.5
ルーチン:再構成関数/逐次近似応用法AIDR3D / AiCEAIDR3D / AiCEAIDR3D / AiCE
3D/MPR用:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm)0.5 / 0.50.5 / 0.250.5 / 0.25
3D/MPR用:再構成関数/逐次近似応用法AIDR3D / AiCEAIDR3D / AiCEAIDR3D / AiCE
※追加項目欄時間分解能2秒時間分解能5秒

造影条件

メーカー名根本杏林堂
造影剤名イオプロミド370注シリンジ

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撮影プロトコル1-16相17-20相
造影剤:投与量 (mL)50
造影剤:注入速度(mL/sec)、注入時間 (sec)5、10
生食:投与量 (mL)35
生食:注入速度 (mL/sec)、注入時間 (sec)5、7
スキャンタイミング固定法固定法
ディレイタイム造影剤注入開始5秒後16相目の5秒後
留置針サイズ (G)20
注入圧リミット (psi or kg/cm2)

造影剤を急速注入開始5秒後から撮影を行い、1-16相目は2秒ごと、17-20相は5秒ごとの撮影を行い、動脈相は時間分解能を高く設定し、被ばく低減のため静脈相はやや間隔を開けて撮像している。静脈が脆弱である場合は注入速度を3mL/secに低下させ、撮像開始時間を8秒からに変更する。

当該疾患の診断における造影CTの役割

急性期脳梗塞に対する血栓回収療法の適応判断においてCT perfusionの有用性が報告されている1-3)。CT perfusionは迅速にTmaxやCBFなどからischemic coreやpenumbraの評価が可能であり、また自動解析ソフトを用いることで客観的な定量評価が可能となる。320列CTで撮像すると、同じ撮影データから最適なCT angiographyやCT venography、多時相CT angiographyが再構成可能であり、脳梗塞の機序評価や血栓回収療法の治療戦略決定において有用である。本症例のようにMRI禁忌患者においては特にCT angiographyやCT perfusionが有用であった。

  • 1) N Engl J Med. 2015;372:11-20.
  • 2) N Engl J Med. 2018;378:11-21.
  • 3) N Engl J Med. 2018;378:708-718.

CT技術や撮像プロトコル設定について

320列CTは寝台を移動することなく、1回のvolume撮影で16cmの範囲を撮像でき、時間分解能が高い全脳撮影が可能である。また、多時相のデータを収集するため、時間外にCTに不慣れな放射線技師が対応しても最適なCT angiographyを再構成することができる。なるべく右肘部から20Gでルート確保を行い、5mL/sで50mLの造影剤注入と同じ速度で生理食塩水の注入を行うこととし、注入速度を下げる場合は、撮像開始時間を遅らせている。

使用上の注意【電子添文より抜粋】

  • 9.特定の背景を有する患者に関する注意

    9.8 高齢者
    患者の状態を観察しながら使用量を必要最小限にするなど慎重に投与すること。本剤は主として、腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続するおそれがある。[8.6、9.2.1、9.2.2 参照]