画像診断に絶対強くなるツボをおさえる!

画像診断に絶対強くなる
ツボをおさえる!

Part2 胸腹部領域

06

胸腺のサイズを評価する 〜「5の倍数の法則」を使う!〜

Alt tag

 CTやMRIなどの画像診断において,胸腺のサイズが正常かどうかを判定するのは意外に簡単ではなく,画像を見ながら「ウーン」と唸ってしまうことも少なくない.その主な理由として,年齢により胸腺のサイズは大きく変化することがあげられる.
  「胸腺のサイズが正常かどうか?」の判定には,年齢を考慮した「5の倍数の法則」を使うとよい2)

Alt tag

胸腺サイズの「5の倍数の法則」

  • 胸腺のサイズ,すなわち腫大しているかどうかは「厚さ」で判定する(図1).

  • 「胸腺の厚さが正常かどうか?」は,年齢を考慮した「5の倍数の法則」を使用する.

  • 年齢を考慮した「5の倍数の法則」とは,胸腺の厚さを15歳(5×3)で15mm,20歳(5×4)で10mm(5×2),50歳(5×10)で5mm(5×1)を正常上限の目安とする方法である.この厚みを超えたら胸腺の腫大を疑うようにしよう(図2A).

 胸腺の腫大は腫瘍のみならず過形成でも生じるが,「腫瘍か過形成か?」の判定にはMRIのin phase画像とopposed phase画像(out of phase画像)を使用する(図2B,C4,5)過形成であれば小児例を除き,微量の脂肪含有を反映してin phase画像に比してopposed phase画像で信号が低下する.
 また小児(特に10歳以下)では正常の場合でも矢尻型でなく腫瘤状を呈したり,CTで高吸収を示したり,in phase画像に比してopposed phase画像で信号低下しなかったりと「落とし穴」が多いため要注意!(図32,6)

図1 胸腺のサイズ評価

図1 胸腺のサイズ評価

さまざまな評価法があるが,基本的には「厚さ」で胸腺の腫大の有無を判定する.
文献2より引用.

図2 胸腺腫大の例 (反応性過形成)
図2 胸腺腫大の例 (反応性過形成)
図2 胸腺腫大の例 (反応性過形成)

図2 胸腺腫大の例(反応性過形成)

40歳代女性.子宮体癌で化学療法後の胸腺反応性過形成(rebound thymic hyperplasia)の症例.T2強調画像(🅐)では胸腺腫大が認められ(),厚みは15mmと計測される.
in phase画像(🅑)に比して,opposed phase画像(🅒)では,腫大した胸腺の信号が明らかに低下している.この信号低下は微量の脂肪含有を示しており,腫瘍ではなく過形成であることを示唆する所見である.

図3 年齢による正常胸腺の変化(単純CT)

図3 年齢による正常胸腺の変化(単純CT)

単純CTにおける2歳から50歳までの正常胸腺を示す.最も左に示す2歳の例では,正常でも胸腺が腫瘤状を呈しており,またかなり高吸収を示していることにご注目(小児の胸腺におけるCTでの高吸収は,細胞密度が高いことが一因とされている).
文献2より引用.

まとめ

 胸腺の厚さは,15歳(5×3)で15mm,20歳(5×4)で10mm(5×2),50歳(5×10)で5mm(5×1)を正常上限の目安とする.