画像診断に絶対強くなるツボをおさえる!

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Part2 胸腹部領域

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乳腺の画像解剖と診断のツボ

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 乳腺腫瘍における画像診断の役割は大きいが,その画像解剖の表現はMRI,超音波検査,検診のマンモグラフィなどでそれぞれ異なる.本項ではその画像解剖の表現について復習しつつ,あわせて乳腺の画像診断のツボについても触れる.

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乳腺画像診断の解剖とツボ

  • 乳腺の画像解剖の表現には,主にMRI,CT,触診などで用いられるA~E領域という表現(図1),主に超音波検査で用いられる時計盤表示NTCMP表示を組合わせる表現(図2),そして検診のマンモグラフィで用いられるO,I,S,U,M,L,Xを用いた表現(図3)がある.

  • 乳腺の画像診断は腺葉,小葉乳管という解剖を理解し(図4),「乳管や腺葉に沿った区域性分布」を示すかどうかを判断することが良悪性の鑑別において重要である(図5).

  • MRI検査は原則としてダイナミックスタディを行うが,特に超早期相が乳癌の診断に有用である(図6).ただし血性乳頭分泌(乳管内の血性分泌)を脂肪抑制T1強調画像で,また嚢胞性病変を脂肪抑制T2強調画像で見ることも忘れてはいけない(図7).

  • BPE(background parenchymal enhancement)や背景乳腺としての乳腺症の存在に注意!

 乳腺の画像解剖の表現には,主にMRI,CT,触診などで用いられるA~E領域という表現以外にも,主に超音波検査で用いられる表示,そして検診のマンモグラフィで用いられる表示などがある.「超音波検査や検診のマンモグラフィで指摘された病変をMRIで確認する」といった状況もあるため,すべての画像解剖の表現を熟知しておくことが重要である.
 MRI,CT,超音波検査,マンモグラフィのすべての画像検査において共通していえることは,「病変が区域性分布を示すかどうかが良悪性の鑑別の鍵になる」ということである.そのため画像診断にあたっては常に図4のような乳腺の解剖をイメージし,「乳管や腺葉に沿った区域性の広がり」を示す病変かどうかを意識する.

乳腺病変の占拠部位

A:内側上部

 D:外側下部

 E:乳輪部

B:内側下部

 C':腋窩部

 E':乳頭部

C:外側上部

図1 乳腺病変の占拠部位(主にMRI,CT,触診)

主にMRI,CT,触診などで用いられる最も基本的な占拠部位の表現法で,ABCD以外にも腋窩部を,乳輪をE,乳頭をと表現する.
文献2より引用.

時計盤表示+NT

A)時計盤表示+NT

腫瘤は右乳腺10時方向,NT=4cm

時計盤表示+CMP表示

B)時計盤表示+CMP表示

腫瘤は左乳腺10時方向,P領域

C:central
M:middle
P:peripheral
X:axilla
O:out of gland

図2 乳腺病変の占拠部位(主に超音波検査)

超音波検査では時計盤表示とNT(nipple-tumor distance:乳頭-腫瘤間距離)あるいはCMP表示を組み合わせて,「右乳腺10時方向,NT=4cm」(時計盤表示+NT)あるいは「左乳腺10時方向,P領域」(時計盤表示+CMP表示)のように表現する.時計盤表示は通常30分単位まで使用する(例:3時半方向).CMP表示は乳腺の中心から辺縁部までを3等分してC(central),M(middle),P(peripheral)と記載するが,それ以外にも腋窩方向をX(axilla),C,M,P,Xのいずれにも属さない部位をO(out of gland)と表現する.
文献2より引用.

乳腺病変の占拠部位

図3 乳腺病変の占拠部位(主にマンモグラフィ検診)

🅐CC(craniocaudal: 頭尾方向)撮影では,乳頭中央を通る垂線より外側をO,内側をIとする.ただし乳頭中央から2cmの範囲は乳輪下領域としてSと表現する.
🅑MLO(mediolateral oblique:内外斜位)撮影では,乳頭中央を通る垂線より尾側をL,垂線より頭側でLと等距離の範囲をM,それより頭側をUとする.ただし乳頭中央から2cmの範囲は乳輪下領域としてS,また腋窩はXと表現する.
文献2より引用.

乳腺病変の解剖

図4 乳腺病変の解剖(腺葉,小葉と乳管)

乳腺は約15~20の腺葉から成っており,各々の腺葉が独立して乳頭に開口している.それぞれの腺葉は分泌物を産生する小葉と,分泌物を運ぶ乳管から成っており,1つの腺葉には約20~40の小葉が含まれる.
文献2より引用.

乳癌の乳管や腺葉に沿った区域性分布位(MRI)
乳癌の乳管や腺葉に沿った区域性分布位(MRI)

図5 乳癌の乳管や腺葉に沿った区域性分布位(MRI)

組織学的に乳癌が証明されている症例.矢状断のGd造影T1強調画像(🅐)にて,乳頭に向かうように乳管に沿った異常増強像が認められ( 脳のvascular territoryと脳葉の画像解剖),病変全体が区域性分布を示している.🅑は患側乳房全体の矢状断最大値投影画像で,やはり乳管や腺葉に沿った区域性分布を呈していることがわかる.
文献2より引用.

ダイナミックMRIの超早期相の有用性
ダイナミックMRIの超早期相の有用性

図6 ダイナミックMRIの超早期相の有用性

🅐横断最大値投影画像,🅑冠状断最大値投影画像.
Gd造影剤のボーラス注入開始約30秒後に撮像した超早期相の画像.左A領域からC領域を占拠する乳癌が明瞭に描出されている( 脳のvascular territoryと脳葉の画像解剖).
文献2より引用.

脂肪抑制T2強調画像で描出される嚢胞性病変

図7 脂肪抑制T2強調画像で描出される嚢胞性病変

乳腺症の症例.脂肪抑制T2強調画像にて,両側乳腺には多発性の嚢胞が描出されている().

 MRIで乳癌の診断をする際には,BPEや背景乳腺としての乳腺症の存在に注意が必要である.正常の乳腺組織がホルモンの影響により造影増強効果を示すことをBPEとよび,BI-RADS(breast imaging reporting and data system)ではBPEの程度を画像診断報告書に記載することを推奨している.しかしながらBPEは乳腺症や腫瘍による造影増強効果と鑑別できないこともあり,「間違いなくBPE」だと判断すること自体が難しいことも知っておく必要がある.
 脂肪抑制T2強調画像での嚢胞などの存在(図7),あるいは超音波検査での豹紋状パターンなどは,背景乳腺にどれだけ乳腺症がかかわっているかの目安になる.またBPEはホルモンに依存するため,月経開始5~12日目(BI-RADSでは7~14日目)の間が最も少ないとされている7~9)スクリーニング目的に近いような検査では,この期間に造影MRIを行うことが推奨されるが,月経開始5~12日目にMRI検査を行ってもBPEが目立つ症例が存在することも事実である.

まとめ

 乳腺の画像診断は,検査の種類で画像解剖の表現が異なることを意識する.乳腺の病変は,検査の種類にかかわらず「乳管や腺葉に沿った区域性分布」を示すかどうかが重要.また併存する乳腺症やMRIにおけるBPEに注意が必要!