画像診断クイズ

画像診断クイズ

第48回 画像診断クイズ(消化管)

正解

正解は選択肢3 NSAIDsの内服を行い、経過観察とする。

解説

診断は、腹膜垂炎である。
腹膜垂は、直腸を除く結腸全域に結腸ヒモに沿って分布する脂肪組織である。通常、CTで同定することは困難であるが、本症例のように炎症を起こすと卵円形の脂肪濃度結節を取り囲む高吸収の輪郭として描出される(hyperattenuating ring sign)。炎症を反映して周囲脂肪織の濃度上昇、腹膜の肥厚を認めることがある。原因としては腹膜垂の捻転、梗塞、圧迫による血行障害や、他疾患からの炎症波及がある。

鑑別すべき疾患として憩室炎が重要である。腹膜垂炎は憩室炎と比較して発熱の頻度が低く、白血球やCRP上昇といった炎症反応は正常か軽度上昇にとどまることが多い。また、腹膜垂炎ではより限局した圧痛を認めることが多く、反跳痛を生じることは少ない。本症例においても炎症反応は軽度であるが、腹膜にわずかな炎症波及を認めることから反跳痛を生じたと考えられる。
所見が限局している場合、大網捻転や大網梗塞が類似したCT所見を呈することがある。腹膜垂は結腸に隣接する1.5-3.5cm程度の卵円形構造であることに留意し、大網との血管の連続性を慎重に評価する必要がある。

腹膜垂炎は多くの症例で自然軽快するとされ、抗菌薬の投与を必要としない。正しく診断することで不必要な入院や抗菌薬投与を避けることができるため、画像診断の果たす役割は大きい。

出題者からのコメント

画像診断が治療方針に直接寄与できるという意味で重要な疾患であり、初学者の理解を深める一助になればと思い出題させていただきました。