CT線量管理におけるプロトコール管理について

北里大学病院 放射線部
秦 博文 先生

病院外観

病院外観

CT線量管理チーム。

CT線量管理チーム。
前列向って左から2人目が伊藤寛泰CT担当主任、3人目が筆者、右端が井上優介放射線部長/放射線診断科長。

はじめに

2020年4月に改正医療法施行規則が施行され、CT、血管造影、核医学における医療被ばくの線量記録・線量管理が義務化された。また、医療被ばく研究情報ネットワーク(Japan network for Research and Information on Medical Exposure: J-RIME)により診断参考レベル(diagnostic reference level: DRL)が2015年(DRLs 2015)、2020年(DRLs 2020)と公表され、各医療機関で上記以外のモダリティについてもDRLに基づく線量管理が行われるようになり、本原稿の執筆時現在(2025年2月)は2025年度版(DRLs 2025)の公表のための準備が関連学会・団体の協力により進められている。

北里大学病院(以下、当院)では、線量管理・プロトコール管理は、モダリティ別の管理チームを中心に実施しており、医療放射線安全管理責任者である井上優介放射線部長/放射線診断科長を委員長とする医療放射線管理委員会の下部組織として、モダリティ別に4つの管理チーム(CT、血管造影、核医学、一般・造影)を組織している。その1つであるCT線量管理チームは、伊藤寛泰 CT担当主任を中心に診療放射線技師7名程度のメンバーからなり、毎月、定例会を開催して以下の内容について検討している。

  • CT検査におけるインシデント事例の調査
  • 全検査対象のプロトコール毎の線量評価(外れ値の検出および調査等)
  • プロトコール逸脱事例の調査
  • 累積高線量事例の検出と調査(前2ヶ月分の累積分)
  • 検査プロトコールリストの管理(新規作成、変更等)
  • その他

その他、年1回のDRLとの比較調査、年2回の各装置のCTDIvol測定などを行っている。その他のモダリティ別管理チームも同様の活動を行い、その検討結果をもとに、医療放射線安全管理責任者、技師長・副技師長等の診療放射線技師、看護師が加わったモダリティ別QA/QC委員会で協議し、全体会である医療放射線管理委員会で審議・情報共有を行い、放射線診療の安全性と質の向上に努めている。当院のCT線量管理の概要をオープンジャーナル(文献1)に紹介しているので、参考にされたい。

当院では2019年2月に線量管理システムRadimetricsを導入し、CT、核医学、血管造影の線量管理に役立てている。本稿では、特にCT線量管理における検査プロトコール管理について、Radimetricsの活用を踏まえて紹介したい。

なお、本文中で紹介する当院のCTプロトコール関連資料(PDFファイル)のサンプルが下記リンクからダウンロードできるので、参考にしていただければ幸いである。

CTプロトコール管理の重要性

線量管理・線量記録は関係学会等の策定したガイドラインに基づいて行うことが定められている。2019年に日本医学放射線学会から公表された「診療用放射線に係る安全管理体制に関するガイドライン」(文献2)では、線量管理の一環として、以下のようにプロトコール管理を行うこととされている。

  • CT検査、血管造影及び核医学検査について検査プロトコールを一覧可能なリストを作成し、適宜見直しを行うこと。リストには被ばく線量を規定する因子(自動露出制御の設定、管電圧、管電流、撮影回数、撮影部位、パルスレート、放射性薬剤の投与量等)の記載を含めること。
  • 小児用のプロトコールは成人用とは別に作成すること。小児の核医学検査については、学会等のガイドラインを参照して放射性薬剤の投与量を定めること。

また、線量管理の実施方法として、被ばく線量の評価は年1回以上行い、診断参考レベルを使用して検査プロトコールの見直し等に反映させることが定められている。さらに、診断参考レベルが設定されていない検査プロトコールについても、診断参考レベルを使用した見直しの結果を踏まえて見直すことが求められている。

CT診療では多様な撮影が行われる。少数の検査プロトコールを用意して撮影者が随時変更することも考えられるが、あらかじめ多くのプロトコールを用意し、プロトコール通りに検査を実施することをお勧めする。これは適切な検査の実施に加え、線量管理にも有益である。肝ダイナミックCTを例に示す。この検査では、撮影時相を追加したり、門脈相で広い範囲を撮影することがある。図1はRadimetricsを使用して作成した、肝ダイナミックCTにおける体重とDLPの散布図である。図1aでは腹部だけを撮影した場合と、門脈相で胸部や骨盤部も撮影した場合を合わせてプロットしている。図1bでは両者を区別し、前者を水色で、後者をオレンジ色でプロットしている。図1aで体重の割に線量が高く、外れ値と思われる検査を赤枠で囲んでいるが、図1bを見ると、これらのほとんどが胸部・骨盤部を追加した検査であることがわかる。肝ダイナミックCTとしては比較的高線量であるが、胸部・骨盤部撮影を追加した肝ダイナミックCTとしては特に高線量と言えないことがわかる。このように、肝ダイナミックCTを1つのプロトコールとして扱うと、体重とDLPの関係にはばらつきが目立ち、外れ値の抽出精度が悪くなる。撮影範囲や撮影時相数に応じた様々なプロトコールを設定して管理すれば、詳細な線量管理が容易になり、外れ値を抽出して背景を調査する効率も向上する(図2)。また、グラフ内にある「i」ボタンをクリックすれば各プロトコールの使用数(Count)も確認できるため(図3)、広範囲撮影の検査数が増えてきたら原因を調査するなどの対応も可能となる。

図1a

CTプロトコール管理の重要性 図1a

図1b

CTプロトコール管理の重要性 図1b

図1

肝ダイナミックCTにおける体重とDLPの関係(Radimetrics画面)。
a:腹部限定プロトコールと胸部・骨盤部追加プロトコールをいずれも水色で表示。
b:腹部限定プロトコールを水色で、胸部・骨盤部追加プロトコールをオレンジ色で表示。

図2a

CTプロトコール管理の重要性 図2a

図2b

CTプロトコール管理の重要性 図2a

図2

肝ダイナミックCTにおける体重とDLPの関係(Radimetrics画面)。
a:腹部限定プロトコール
b:胸部・骨盤部追加プロトコール

CTプロトコール管理の重要性 図2a

図3

肝ダイナミックCT(腹部限定プロトコール)の詳細情報(Radimetrics画面)。
検査数(Count)の他に平均値(Mean)、中央値(Median)、75パーセンタイル値(75th Percentile)等が表示される。

当院では肝ダイナミックCT以外の検査でも、撮影時相、撮影範囲、撮影条件等に応じたプロトコールを別々に作成している。例えば、通常の体幹部CTでは、

  • 頸部から撮影の場合:「頸-胸部」、「頸-腹部」、「頸-骨盤部」
  • 胸部から撮影の場合:「胸部」、「胸-腹部」、「胸-骨盤部」
  • 腹部から撮影の場合:「腹部」、「腹-骨盤部」
  • 骨盤から撮影の場合:「骨盤部」

のように撮影範囲を分類し、さらに撮影範囲毎に単純、造影、単純+造影など撮影時相等に応じたプロトコールを別々に作成している。2.5 mmスライスを標準としているが、5 mmスライスで線量を下げたスクリーニングプロトコールも用意している。救命救急センターに設置されたCTでは、撮影時間短縮のためにヘリカルピッチを上げており、これも別のプロトコールとして管理している。救急関連を除く通常検査の検査プロトコールとして、小児プロトコールも含めて300種類以上がある。このように、事前に細分化された多くのプロトコールを準備して後述するプロトコールリストに可視化し、なるべくプロトコールに沿った検査を実施することで、検査プロトコールの最適化、検査方法の施設内での標準化、撮影実施ミスの減少、線量管理の精度向上に繋げている。多くのプロトコールを用意しても、撮影時相数や撮影範囲を調整したり、上肢を挙上するプロトコールで挙上できなかったりといったプロトコールからの逸脱も発生する。検査時に逸脱の有無と内容を記録して線量の検証に活用し、必要であればプロトコールの追加等を検討している。

CTプロトコールリスト

当院では、撮影範囲、撮影時相、撮影タイミングなど、検査の実施に必要な情報を整理した「検査プロトコールリスト」と、詳細な撮影条件・再構成条件等を撮影装置別に記載した「撮影条件リスト」の2つのリストを作成し、管理している。この2種類のリストについて解説する。

1.検査プロトコールリスト

検査プロトコールリストはMicrosoft🄬 Wordを使用して作成し、見出し機能やハイパーリンク機能を利用して、一覧性をよくするとともに各プロトコールの検索をしやすくしている(図4-6)。当院では、検査前日にプレチェックを行い、使用する検査プロトコールを選択して放射線部門システム(RIS)に登録している。検査プロトコールリストの冒頭では、オーダ項目から検査プロトコールを選択しやすいように、オーダ項目に応じて候補となる検査プロトコールを列挙し、プロトコール選択時の注意事項を簡単に記している(図5)。検査プロトコールを選択してクリックし、ハイパーリンク機能で各プロトコールの詳細を記したページに移動して、選択したプロトコールの詳細な内容や注意事項を確認する(図6)。各プロトコールについて、装置に登録されているプロトコール名称、時相毎の撮影範囲、造影剤の注入条件、撮影タイミング、適応などを記載している。プレチェックで特に注意する事項を青字で、検査実施時の重要事項を赤字で表示している。

撮影範囲は検査プロトコールリストに具体的に記載するように努めているものの、言葉だけでは誤解を生じることがあるため、撮影範囲を図示した位置決め参考資料を別に準備している(図7)。検査担当者は、朝の業務開始時にCTコンソール横のRIS端末上で検査プロトコールリストおよび位置決め参考資料を開き、各撮影前に、使用するプロトコールの記載を必ず確認している。

撮影時にはプレチェックで選択された検査プロトコールに応じてCT装置に登録されたプロトコールを選択することになるが、検査プロトコール名が日本語である一方、装置の仕様によりCT装置上のプロトコール名は英語になっている。例えば、プレチェックで「肝ダイナミックCT」を選択した場合、検査担当者は撮影時にCTコンソールで「Liver_Dynamic」というプロトコールを選択することになり、特に英語名が長いプロトコールでは取り違えが懸念される。そこで、日本語名と英語名に共通のプロトコール番号を付し、CT装置上でのプロトコール選択時に参照することで、取り違えを防ぐようにしている。プロトコール番号は検査プロトコールリスト、撮影条件リスト、位置決め参考資料の対応関係の把握にも役立ち、後述するようにRadimetricsを活用する際にも有用と考えている。

CT検査プロトコールリストの抜粋。左に見出しが表示されている。

図4

CT検査プロトコールリストの抜粋。左に見出しが表示されている。

CT検査プロトコールリストの抜粋。オーダ項目と検査プロトコールの対応。オーダ項目に対応する検査プロトコールの中から、使用する検査プロトコールを選択する。ハイパーリンク機能でプロトコールの内容の詳細画面に移動できる。

図5

CT検査プロトコールリストの抜粋。オーダ項目と検査プロトコールの対応。オーダ項目に対応する検査プロトコールの中から、使用する検査プロトコールを選択する。ハイパーリンク機能でプロトコールの内容の詳細画面に移動できる。

CT検査プロトコールリスト:肝ダイナミックCT(胸‐骨盤部)プロトコール詳細内容。

図6

CT検査プロトコールリスト:肝ダイナミックCT(胸‐骨盤部)プロトコール詳細内容。プレチェック時の注意事項を青字で、検査実施時の重要事項を赤字で表示している。

CT検査位置決め資料。検査時に各プロトコールの撮影範囲の設定を確認するための資料。

図7

CT検査位置決め資料。検査時に各プロトコールの撮影範囲の設定を確認するための資料。

2.撮影条件表

装置に登録されている詳細な撮影条件、再構成条件等はMicrosoft🄬 Excelを使用して一覧表を作成している(図8)。当院では手術室や救命救急センターに設置されたものを含めて6台のCT装置を運用しており、撮影条件表は装置毎に別ファイルを作成している。各ファイル内で撮影領域毎に別のシートに分けて記載しており、小児は別シートとして、GE社製の装置では年齢階層でも分けている。

撮影条件表の記載内容は、プロトコール番号、検査プロトコールリスト上のプロトコール名称、CT装置に登録されたプロトコール名称、スタディ名称、シリーズ名称、撮影時相、管電圧、AECの種類・パラメータ、回転時間、ピッチ係数、再構成スライス厚/間隔、再構成アルゴリズム、逐次近似応用再構成(使用可能な装置ではAI再構成)条件、撮影/表示FOV、PACS送信時のウィンドウ幅/ウィンドウレベル、送信先サーバである(図9)。撮影条件等を変更する際は、まず撮影条件表で変更案を作成し、プロトコール間・装置間の整合性等を点検して新しい条件を確定し、改訂された撮影条件表を見ながらCT装置上の登録を変更している。撮影条件表の改訂を先行することで、変更漏れや入力ミスを防ぐようにしている。

線量管理において線量に疑義が生じたら、CT装置に登録されたプロトコールを撮影条件表と照合し、誤った条件登録がないかをまず確認する。誤りがなければ、撮影された画像とともに、撮影条件表で検査プロトコール間・装置間の比較をしながら、撮影条件を検討するようにしている。

CT撮影条件表の抜粋。各装置毎に1ファイルを作成、各ファイル内で撮影領域毎に別のシートに分割している。

図8

CT撮影条件表の抜粋。各装置毎に1ファイルを作成、各ファイル内で撮影領域毎に別のシートに分割している。

CT撮影条件表。撮影条件を拡大して表示。

図9

CT撮影条件表。撮影条件を拡大して表示。
3D Mod:Auto mA + Smart mA、NI:Noise index

Radimetricsの活用

1.Radimetricsでの検査プロトコール毎の管理

検査プロトコールを細分化し、プロトコール番号を付けておくことは、Radimetricsを活用した線量管理にも有用である。Radimetricsではプロトコール毎に線量管理を行い、各プロトコールの標準的な線量を調査したり、そのプロトコールにしては線量が高かったり低かったりする外れ値を検出することができる。Radimetricsでは、対象となるデータをFilter機能を用いてDevice Protocol別に抽出できる。Device ProtocolはCT装置に登録したプロトコールに対応したDICOM tag情報であり、CT画像からRadimetricsに自動的に取得される。そのため、CT装置側で検査プロトコールを細分化しておくことで、Radimetricsを用いて詳細な線量管理を容易に行うことができる。

Filter機能を用いる際に、多くのDevice Protocolの中から解析したいものを探すことになるが、Radimetrics 画面上でDevice Protocolの欄にプロトコール番号を入力することで効率よく検索できる(図10)。また、CT装置上でユーザが同じ検査プロトコール名を登録しても、CT装置によってはDevice Protocolに独自のコードが付加されることがある。この場合も、Radimetricsでは、プロトコール番号を入力するだけで、対象となるDevice protocolを抽出できる。

RadimetricsにおけるFilter画面。プロトコール番号があれば、Device Protocol欄(赤枠)にプロトコール番号を入力して容易に検索できる。

図10

RadimetricsにおけるFilter画面。プロトコール番号があれば、Device Protocol欄(赤枠)にプロトコール番号を入力して容易に検索できる。

細分化したプロトコール管理に加えて、複数の装置をまとめて評価したり、複数のプロトコールをまとめて評価したい場合もあり、この時にはMaster Protocolが活躍する。複数のCT装置で同じ名称のプロトコールを運用している場合、Device Protocolの名称は同じでも、装置毎にRadimetrics上は別のDevice Protocolとして扱われ、リスト上では同一名称のDevice Protocol が複数行表示されてしまうこともあり、こうした場合もMaster Protocolが役に立つ。

例えば、複数の装置を運用していて、胸部CT(1相)の線量管理をしたいとする。この場合、Radimetricsでは、Master Protocolとして胸部CT(1相)を設定し、ここに各装置の胸部CT(1相)に対応するDevice Protocolを登録(Master Protocol Mapping)しておけば、まずはMaster Protocolを用いて胸部CT(1相)全体の線量を調査し、その後に装置毎、プロトコール毎に絞り込んで個別の調査を行うことができる。

また、先に例示した肝ダイナミックCTの場合では、Master Protocolとして肝ダイナミックCTを設定し、ここに関連する複数のDevice Protocolを登録しておけば、検査プロトコール毎の解析と肝ダイナミックCTオーダ全体を一括した解析の双方を容易に行うことができる。検査室では検査プロトコール毎の管理が重要な一方、依頼医に提供する情報として、肝ダイナミックCTオーダでの線量も望まれるため、Master Protocolによる管理は非常に有用であると考える。

Master Protocol Mappingを行う際は、Master Protocolを作成したうえで、該当するDevice Protocolを検索してMaster Protocolに登録していく作業が必要であり、この作業もプロトコール番号があると効率的になる(図11)。また、Master Protocolへの登録作業を行う際には、あらかじめMicrosoft🄬 Excel等でMaster ProtocolとDevice Protocolの対応表を準備しておくと確認がしやすくなる(図12)。Master Protocol機能も是非活用していただきたい。

RadimetricsにおけるMaster Protocol Mapping画面。

図11

RadimetricsにおけるMaster Protocol Mapping画面。肝ダイナミックCTのMaster Protocolを作成し、各装置の該当するDevice Protocolを登録する。プロトコール番号があると検索しやすい。
名称に「QQ」とあるのは救命救急センターに設置されたCT用のDevice Protocolである。撮影時間短縮のためにヘリカルピッチを上げており、別のプロトコールとして管理している。

Master ProtocolとDevice Protocolの対応表(胸部CTの例)。

図12

Master ProtocolとDevice Protocolの対応表(胸部CTの例)。各装置における単純プロトコールと造影プロトコールを同じMaster Protocolに登録している。Device Protocolに異なる独自のコードが付加されていてもプロトコール番号が同じであれば、同じMaster Protocolの対象として認識できる。

2.Radimetricsでの外れ値の調査

体格が大きければ画像雑音を抑制するために照射線量を上げる必要があり、多くのCT検査で自動露出制御(AEC)を用いて、体格に応じた線量調整が自動的に行われている。従って、体格が大きい患者で線量が高くても問題事例とは言えない。

CTの線量指標としては、CTDIvol、DLP、SSDE、実効線量が用いられ、Radimetricsではいずれも管理対象とすることができる。当院では、1検査全体の基本的な線量指標であるDLPを中心に管理しており、全検査を月毎に点検し、体重の割にDLPが高い検査を抽出して、問題事項がないかを調査している。患者体重は検査時に放射線部門システム(RIS)に入力しており、CT装置に送信される。CT装置に登録された患者体重はDICOM tag情報としてCT画像からRadimetricsに自動的に取得される。

DLPが外れ値であった場合には、水透過径(WED)とCTDIvolの関係をRadimetricsで評価している。WEDは断面のX線減弱強度の指標であり、Radimetricsでは軸位断像で身体部分の各ピクセルのCT値を合計し、同じX線吸収を生じる水円柱の径として算出される(文献3)。体重が同じでも体型は患者によって異なり、例えば腹部の断面積が大きく、胸部や下肢が細い患者では、体重の割に腹部CTの線量が高くなるのは画質の維持のために妥当である。しかし、体重とDLPの関係からは過剰線量であるかのように見えてしまうことがある(図13a)。WEDとCTDIvolの関係を確認して問題がなければ、腹部の断面が大きいために線量が高くなったと判断できる(図13b)。WEDとの比較には、撮影長を考慮した線量指標であるDLPよりも、CTDIvolの方が適している。

体重とDLPの関係(Radimetrics画面)。赤点が外れ値になっている。

図13a

体重とDLPの関係(Radimetrics画面)。赤点が外れ値になっている。

WEDとCTDIvolの関係(Radimetrics画面)。図13aで外れ値であった検査が、WEDとCTDIvolの関係では外れ値でない。

図13b

WEDとCTDIvolの関係(Radimetrics画面)。図13aで外れ値であった検査が、WEDとCTDIvolの関係では外れ値でない。

線量情報の依頼医との共有

CTを含む放射線検査では、放射線防護の基本原則のうち、正当化と最適化を踏まえなくてはならない。正当化は検査の利益が被ばくによる不利益を上回ることを保証することを意味し、依頼医と放射線科医の共同作業で行われる。不利益は線量に依存するため、正当化には線量の情報が必要である。最適化は、診療上の価値が保たれる範囲内で線量を減らすことに相当し、撮影条件の最適化と検査内容の最適化がある。撮影条件の最適化は診療放射線技師と放射線科医の共同で行われ、撮影範囲、撮影時相数、検査頻度を必要最低限にするといった撮影内容の最適化は依頼医と放射線科医の共同で行われる。

正当化でも最適化でも依頼医の役割は大切で、依頼医が依頼時に線量を認識し、正当化・最適化を踏まえた適切な検査依頼を行うことを支援することが求められる。当院では、オーダ項目毎の実効線量の中央値を体重40から80 kgの患者のデータから年に1回算出し(小児は別途体重別)、その一覧表を電子カルテ上で依頼医が閲覧できるようにしている(図14)。また、オーダ項目選択画面の各オーダ項目のボタンを5段階に色分けして(図15)、これから依頼しようとする検査の線量が高いか低いかを依頼医が視覚的に認識できるようにしている。

CT線量参考表。各オーダ項目の体重40~80 kgにおける実効線量の中央値を一覧表にしている。電子カルテ上で閲覧できる。

図14

CT線量参考表。各オーダ項目の体重40~80 kgにおける実効線量の中央値を一覧表にしている。電子カルテ上で閲覧できる。

CTオーダ画面。各オーダ項目のボタンに線量に応じて色を付けている。依頼時に線量が高いか低いかをわかりやすくしている。

図15

CTオーダ画面。各オーダ項目のボタンに線量に応じて色を付けている。依頼時に線量が高いか低いかをわかりやすくしている。

おわりに

CTの線量管理を精度よく行うためには検査プロトコール単位での線量管理が必須であり、検査プロトコールを細分化し、リスト化して一覧性をもって作成・管理することが求められる。Radimetricsを用いた線量管理の有効性と効率性を高めるためにも検査プロトコール管理を適切に行い、CT診療の質と安全性の向上につなげていただきたい。

参考文献

1)

Inoue Y. Radiation Dose Management in Computed Tomography: Introduction to the Practice at a Single Facility. Tomography. 2023, 9, 955-966.

2)

「診療用放射線に係る安全管理体制に関するガイドライン」日本医学放射線学会.2019.11
https://www.radiology.jp/member_info/guideline/20250217_01.html

3)

Size Specific Dose Estimates (SSDE) Calculations in Radimetrics™ Enterprise Platform. (Bayer white paper)