KVO機能でより高精度な画像を実現!
患者にもユーザーにもやさしいMRI用インジェクター 「Spectris Solaris EP」
公益財団法人ときわ会 常磐病院
〒972-8322
福島県いわき市常磐上湯長谷町上ノ台57番地
TEL:0246-43-4175
病床数:一般床150床、療養床90床、透析148床
診療科:外科/内科/小児科/泌尿器科/放射線科/整形外科/腎臓内科/循環器内科/リウマチ・膠原病科/消化器内科/呼吸器内科/婦人科/麻酔科/人工透析内科/リハビリテーション科/救急科/血液内科他
CT1台、MRI1台、血管撮影装置1台。診療放射線技師16名、看護師1名(写真下段中央:新村浩明病院長)。
タッチパネルの操作性や視認性の良さなどからSpectris Solaris EPを導入
福島県にて有数の温泉地(図1)として栄える湯本駅から、ほど近い場所に位置する、ときわ会グループの中核をなす常磐病院。同施設は128列×2管球のCT、MRI(MAGNETOM Aera 1.5T、シーメンス社)を有し、造影MRI検査においては約6年前からバイエル社のMRI用インジェクター「Spectris Solaris EP」を導入している(図2)。安藤茂樹氏(診療支援部放射線科課長)ら放射線科のスタッフは、新規にMRI装置を導入する際に大学病院や基幹病院を見学し、現場の診療放射線技師や放射線科医から造影剤やインジェクターに関するアドバイスをいただいたという。そして実際にいくつかのインジェクターを触ってみて、タッチパネルの操作性や画面の視認性、操作の簡便性などからSpectris Solaris EPの導入を決めた。
図1 湯本駅から常磐病院への道のりの途中にある足湯
同施設放射線科では、CT、MRI、PET-CT、マンモグラフィーの他、一般撮影、透視撮影、オペ室撮影など多彩な領域で活躍している。画像診断にあたっては、東京女子医科大学画像診断学・核医学講座と専用回線を接続してCT、MRI、PETの遠隔読影も採用している。というのも、泌尿器疾患や透析患者の診療が中心の同院であるが、いわき市近隣のクリニック約30施設からの依頼検査も多く、ひと月に700件以上のCT検査、300件以上のMRI検査、100件以上のPET-CT検査を実施するなど幅広いニーズに対応しているからだ。そのような中で、「検査依頼を受けてから1週間以内の検査実施」を心がけていると安藤氏は話す。
図2 Spectris Solaris EP
ボタンも少なく、シンプルな見た目で使いやすさも抜群!ボタンを押す強さで、速度も変えられる。
ユーザーフレンドリーな機構と設計
同施設で実施しているMRI検査は、前立腺、膀胱などの泌尿器が中心であるが、乳房MRIなども多い。そのうち造影MRI検査は約2割、ひと月に60件前後。「造影MRI検査を実施する場合は頭部領域を除いてインジェクターを用いて造影剤の注入を行っています」と廣木一弘氏(診療支援部放射線科)は話す。実際の造影MRI検査の流れとして、まず診療放射線技師が患者を前室に呼び入れて検査室入室前の金属有無の確認をする。その後、看護師が穿刺を行いルートをキープする。検査室に入室した患者のポジショニングを行ったうえでインジェクターのラインと患者のラインをつないで造影剤を注入して撮影へと進む。「造影剤専用のアダプターがあるのですが、回転させるだけでシリンジを簡単に本体に装着できる機構になっていますので作業がとてもスムースです(図3)。
図3 シリンジの装着も容易
また、搭載されているモーターの性能が高く、生理食塩液を引くスピードも速い点が魅力的です。あとは、バイエル独自のコイルチューブも有用ですね。患者さんをガントリーの中央部まで移動させる際などチューブにテンションがかかってしまうケースがあるので、専用のコイルチューブは抜針事故が起こりにくい設計で非常に使い勝手が良いです」と廣木氏はSpectris Solaris EPのメリットを挙げる。「CT検査と比較すると、MRI検査では腹部造影などで、特にガントリーの奥まで患者さんを移動させる必要があるので、このコイルチューブは特に良いと思います」と橋本英信氏(診療支援部放射線科)も、同社独自のコイルチューブの有用性を語った。
KVO機能で ハイクオリティな画像を実現
同放射線科では、主に乳房MRI検査の際にSpectris Solaris EPに搭載されているKVO機能が使用されている。
KVO(Keep Vein Open)は、ボアから患者さんを出さずに、点滴モードから本番インジェクションへオート切替えできる機能を備えている。
「乳房のダイナミックMRI検査ではTIC(time intensity curve)を診断に用います。患者さんが少しでも動いてしまうと撮像部位が、ROIから外れてしまい、その精度が低下してしまいます。それを低減するために乳房MRIでは、あらかじめルートと造影剤を接続しておき、KVO機能を使用して、生理食塩液を点滴注入しています。腹臥位で撮像する乳房MRI検査は、患者さんにとってつらい体制となるので、一連の流れでタイムロスなく検査を実施するうえで、重宝しています」。
生理食塩液による後押しは必須
MRI造影剤を必要量注入するうえでは生理食塩液が活躍する。「MRI造影剤を注入する際は全例で生理食塩液(50mL)を準備します。特にダイナミックMRI検査(マルチフェーズ)を施行する乳房MRIとEOB・プリモビストを用いた肝臓MRI検査では、少ない投与量と、低い注入レートでは、理想の画像が得られにくいこともあるので、十分な量を用いた生理食塩液による後押しは必須だと考えています」。
同施設のシーメンス社MRI装置にはプロトコールも多数登録してある。「前立腺や頭部のプロトコールを中心に、主要なものだけでも約60種類登録しています。最近では金属アーチファクトに強いプロトコールを新たに登録しました。ダイナミック撮像などのルーチン撮像では決まったプロトコールを使用しています。一方でイレギュラーな検査も少なくありませんので、その場合は自分たちでプロトコールを組み立てて造影のシーケンスをつくることもあります」と廣木氏が話すように、同院放射線科ではさまざまなMRI検査を施行しており、そこで、造影剤の注入条件などにおいて柔軟なプロトコール設定が可能なSpectris Solaris EPは、現場でも最大限活用されている(図4)。
図4 「ホールド機能」もプロトコールに組み込める。
今後の課題と展望
「造影CT検査のように、MRIでもガドリニウムの濃度に応じた造影の撮像法が確立されることを期待していますし、インジェクターもそれに対応していってほしいです」(廣木氏)。「MRIのインジェクターに関しては、MRI装置との連動性においてCAN(Controller Area Network)規格カテゴリー5のレベルまで行くとさらに使いやすいものになると思います」(安藤氏)。メーカーの開発魂に火をつける新たなユーザーの要望も見えてきた。橋本氏が「当院の診療科が増えてきている状況にあって、以前はできなかったことが積極的にできるようになり、MRI検査では新しい撮像方法やプロトコールが導入されるとともに造影は必須になってくると思います。我々も日々勉強をしながらそういった状況に慣れていく必要があります」と語るように、現場の勤勉さ・熱心さと相まって、造影検査は今後もさらに進歩していきそうだ。
安藤茂樹氏
診療支援部放射線科課長
廣木一弘氏
診療支援部放射線科主任
橋本英信氏
診療支援部放射線科CT担当