第83回 画像診断クイズ(消化管)
正解
正解は選択肢4
解説
間膜軸性胃捻転の症例である。
胃軸捻転は、胃が生理的範囲を超えて回転し、通過障害をきたす病態であり、臓器軸性(噴門-幽門を結ぶ直線を軸とする)と間膜軸性(小彎-大彎を結ぶ直線を軸とする)の2種類に大別される。小児例では胃を固定する靭帯群の弛緩/欠損による特発性が多く、成人例では横隔膜弛緩、食道裂孔ヘルニア、胃十二指腸の悪性腫瘍などが原因となる続発性が7割ほどを占める。間膜軸性の場合において、胃管を留置すると特徴的な「逆アルファ字状」の形態を示すことが有名であり、CTがあまり撮影されなかった時代には有用な所見であったと言われている(参考画像)。CTでは幽門前庭部が頭側に持ち上がり、幽門部が噴門部と交叉している所見が確認できる。
本症例では以前から食道裂孔ヘルニアの存在を指摘されていた。消化器外科医により内視鏡下の捻転整復術が施行されたが、1か月後に同様の症状で受診されCTで胃捻転の再発が確認されたため、腹腔鏡下に整復および噴門形成術(Toupet法)が施行された。以後、再発なく経過している。
選択肢1-3は上記の通り、いずれも正しい。選択肢4は誤りで、正しくは「逆アルファ字」である。胃管留置後の特徴的なX線画像であり、覚えておくと役に立つだろう。
参考画像
出題者からのコメント
間膜軸性胃捻転の典型的な症例を提示した。
Thin-slice CTがあれば、幽門部が持ち上がり捻転していることに気づけば診断は容易であるが、厚いスライスのCTだけを一見すると単なる食道裂孔ヘルニアと誤認しがちな点に注意が必要である。教科書的症例は忘れた頃にやってくるので、いつも待ち構えて読影したいものである。