画像診断クイズ

画像診断クイズ

第75回 画像診断クイズ(肝臓)

正解

正解は選択肢4 偽リンパ腫
 

所見

肝S5末梢に2cm弱の小型腫瘤が認められる。腫瘤は造影前T1強調像で低信号、T2WI強調像で中等度高信号を呈し、拡散強調画像で強い高信号(ADC低値:0.5x10-3m2/sec)を呈している。プリモビスト造影の動脈相では腫瘤は淡い濃染、腫瘤周囲リング状および末梢肝実質に濃染がみられ、門脈相~移行相では内部不均一に肝実質と等から低信号、肝細胞相では明瞭な低信号を示している。肝細胞相では腫瘤周囲に境界不明瞭な淡い低信号がみられる。S6末梢にも動脈相で軽度濃染し、肝細胞相で淡い低信号の小病変が認められる。

解説

肝偽リンパ腫は反応性リンパ増殖(reactive lymphoid hyperplasia)とも呼ばれ、組織学的にはリンパ濾胞の発達を伴った成熟小型リンパ球のポリクローナルな増生であるが、しばしば炎症性偽腫瘍(特にplasma cell type、IgG4 関連疾患)や悪性リンパ腫(特にMALTリンパ腫)との異同が問題となる。病因は未だ明らかでなく、中高年の女性に好発する(8-9割が女性)。自己免疫性疾患や慢性肝疾患を背景として発生することが多く、特に原発性硬化性胆管炎の合併例が多い。偽リンパ腫の悪性転化は非常に稀とされているが、一方で原発性硬化性胆管炎をを背景とするMALTリンパ腫の報告例は散見される。末梢の門脈域・小型胆管周囲の慢性炎症を背景に発生する反応性の結節性病変か低悪性度B細胞性リンパ腫かの違いであり、病理学的にクローナリティの有無を評価することが重要である。炎症性偽腫瘍(plasma cell type, IgG4関連疾患)は肝内末梢よりも肝門部に好発する。術前に肝細胞癌と診断され、外科的切除されることが多いが、生検により正しく診断されれば、経過観察で自然縮小する症例がある。偽リンパ腫の結節は2cm前後の小型であることが多く、多発病変であることも少なくない。多発病変の場合には転移性腫瘍との鑑別が問題となることがある。背景肝は合併する疾患により正常から慢性肝炎、肝硬変まで様々である。画像では、腫瘤は動脈相で軽度濃染を呈する多血性病変として描出され、周囲にリング状濃染がみられることが多く、門脈域の密なリンパ球浸潤による門脈循環障害、動脈優位化が機序として推定されている。悪性リンパ腫同様に内部信号は比較的均一で、T2WI高信号、拡散強調画像で強い高信号を示す。本例では、EOBプリモビスト造影肝細胞相において、腫瘤周囲に淡いEOB取り込み低下がみられた。組織では主腫瘤の周囲には門脈域を拡大しながら密なリンパ球浸潤が広がり、これによる相対的な肝細胞領域の減少および門脈血流低下が肝細胞相の所見に反映されているものと思われる。
 

参考文献

  1. Zen Y, Fujii T, Nakanuma Y. Hepatic pseudolymphoma: a clinicopathological study of five cases and review of the literature. Mod Pathol 23: 244-250, 2010.
  2. Yoshida K, Kobayashi S, Matsui O, et al. Hepatic pseudolymphoma: imaging-pathologic correlation with special reference to hemodynamic analysis. Abdom Imaging 38: 1277-1285, 2013.
  3. Osame A, Fujimitsu R, Ida M, et al. Multinodular pseudolymphoma of the liver: computed tomography and magnetic resonance imaging findings. Jpn Radiol 29:524-527,2011
  4. Inoue M, Tanemura M, Tashiro H, et al. A case of hepatic pseudolymphoma in a patient with primary biliary cirrhosis. Clin Case Rep 7(10):1863-1869,2019.

出題者からのコメント

慢性肝疾患背景に発生する肝腫瘤で多血性肝細胞癌に典型的な所見を呈さない場合の鑑別の一つとして提示しました。偽リンパ腫を鑑別にあげて、生検によりある程度診断がつけば、不要な肝切除を回避することにつながります。