第74回 画像診断クイズ(下肢)
正解
正解は選択肢2 骨膜下膿瘍を伴った急性骨髄炎
単純X線撮影
骨に骨膜反応を含め、明らかな異常所見なし。骨折なし。
下肢の軟部組織の腫脹を認める。
非造影CT
明らかな骨折なし。
右脛骨の骨幹端外側周囲に横断像で三日月状の軟部陰影を認める。周囲軟部脂肪織の混濁、筋膜肥厚を認める。
非造影MRI
右脛骨の骨幹から骨幹端、骨端にかけてSTIRで高信号、T1強調像で低信号を呈する。骨幹骨周囲の骨膜下に液体貯留を認める。
腓骨周囲の筋肉や右下腿外側の軟部組織の腫脹、浮腫状変化を伴う。
臨床経過
発熱、血液検査で炎症反応の上昇を認めたため CEZ 100㎎/kg/dayでの加療を開始した。
治療後も受診前日に受傷した右外果に発赤、腫脹、熱感、疼痛が持続するため、CTやMRIを撮影し、急性骨髄炎、骨膜下膿瘍が疑われた。その後切開により骨膜下より、白色の泥状塊を含む血性排液を吸引した。排液内からStaphy-lococcus aureusが培養された。抗生剤投与前に提出した血液培養(2セット)は陰性であった。骨膜下膿瘍としてCLDM+VCMにより加療し、入院15日目に自宅退院した。
退院後、サッカーも問題なくできている。
解説
本症例は鈍的外傷を契機に発症した骨膜下膿瘍を伴う急性骨髄炎の小児例である。
小児における筋骨格感染(深部感染)の好発部位は長管骨の骨幹端である。
血液内に侵入した細菌は、血流が多く、緩やかな骨幹端の血管内皮に付着し、毛細血管を介して血管外に到達/増殖することで炎症が生じる。
その後の炎症の進展は骨の発育の程度によって異なってくる。
- 乳幼児期(生後18か月までの乳児期):血管が骨端軟骨内を貫通しているため、炎症は骨端や関節にまで波及する。関節まで炎症が波及すると、関節内圧の上昇に伴い、髄内の血流が制限され、骨端の無血管性壊死を生じることがある。
- 生後18か月以降:骨端軟骨内を貫通する血管は消退するため、骨端軟骨が障壁となり炎症は骨幹端に限局することが多い。炎症により髄内の圧が上昇すると、ハバース管やフォルクマン管を経由して骨膜下に進展する。
小児期は骨膜が成人と比較して強靭でないため、炎症が骨膜下腔に到達した後は骨幹に沿って進展し、骨膜下膿瘍が形成される。
本症例のように、急性骨髄炎の発症早期では単純X線撮影で異常を指摘できないことが多い。また単純X線撮影では、骨膜下膿瘍の検出も難しい。骨髄炎の早期診断には、MRIや核医学検査が推奨される。また超音波は骨外病変や骨膜下膿瘍の検出に有用である。
参考文献
Musculoskeletal infection https://radiologykey.com/musculoskeletal-infection-2/
青木英和, 宮嵜治, 不明熱への画像的アプローチ 全身: 骨・軟部疾患, 日本小児放射線学会雑誌 34(1) 23-30 2018年6月
出題者からのコメント
この症例では、MRで骨膜下病変が明らかで、臨床経過から、膿瘍を強く疑い、小児科、整形外科と協議の上、切開排膿を試み、診断確定に至りました。