第71回 画像診断クイズ(膵臓)
正解
正解は選択肢3 Solid and macrocystic typeの漿液性嚢胞腫瘍(SCN: serous cystic neoplasm)を最も疑う
解説
膵尾部に径55mmの腫瘤を認める。単純CTでは膵実質より低吸収を呈している。造影後は辺縁主体に動脈相にて膵実質よりも強い造影効果を認める。門脈相や平衡相では、一部washoutを認めるが、平衡相では低吸収を呈する領域と遅延性濃染を呈する領域が混在しており、腫瘍の輪郭に沿っても遅延性濃染を認める。中心には造影効果を認めない領域もある。脂肪抑制T1強調像では、内部に出血を疑わせる高信号域は認めなかった。3D MRCP像では、腫瘍は多数の嚢胞で構成されている。
膵臓の多血性腫瘍として、神経内分泌腫瘍とSolid typeの漿液性嚢胞腫瘍の鑑別が大切である。両者の鑑別に関するCT所見に関して、文献(Hayashi K. et a. Euro J Radiology 2012;81:e203– e208)を参照して頂きたい。本症例は、単純CTで低吸収を呈しており、水の存在(嚢胞の存在)を示唆している。動脈相で濃染した領域はwashoutを認め、平衡相では低吸収を呈している領域と遷延性濃染を呈する領域が混在している。また、平衡相で腫瘍に輪郭に沿って遅延性濃染呈しており、線維性被膜が示唆される。この所見からは漿液性嚢胞腺腫が最も考えられる。また、MRCP上も、漿液性嚢胞腫瘍を支持する所見である。本症例はSolid and macrocystic typeの漿液性嚢胞腺腫の診断であった。
出題者からのコメント
膵臓の多血性腫瘍の鑑別に関して出題しました。膵臓の多血性腫瘍は、切除の対象となる腫瘍もありますが、漿液性嚢胞腺腫は、悪性の腺癌が発生することは稀であり、経過観察が基本となります。放射線科医が画像所見を的確に拾い上げ、正確な診断を行い、主治医に報告することで、今後の方針決定に役立てることが重要と思います。