第46回 画像診断クイズ(肝臓)
正解
正解は選択肢4 生検
画像所見
プリモビスト造影MRIでは腫瘤は脂肪抑制T1強調像で内部不均一な低信号を示し、腫瘤内部は漸増性の造影効果を示し、一部に壊死を疑う造影不良域を認める。肝細胞相では肝実質と比較して低信号を示している。脂肪抑制T2強調像では腫瘤の内部に肝動脈の血管貫通像を認め、脂肪抑制Heavily T2WIでは腫瘤より末梢側にperiportal abnormal intensityを認める。
CTでは腫瘤は単純CTで内部不均一な低吸収を示し、不均一に早期濃染し、腫瘤内部は遷延性の造影効果、腫瘤辺縁には漸増性の造影効果を認める。一部に壊死を疑う造影不良域を認める。腫瘤より末梢側にはperi-portal collar signを認める。肝左葉に動脈相で区域性濃染を認める。
診断
G-CSF産生肝内胆管癌
解説
発熱や白血球増多、CRPの上昇を認めることから、臨床的に肝膿瘍との鑑別が重要となる。腫瘤の一部は造影効果が不良であるが、大部分は造影効果を示す充実性成分で構成されており、一般的に造影効果を認めない膿瘍腔を有する肝膿瘍の画像所見としては非典型的である。漸増性の造影効果や血管貫通像の所見から腫瘤形成型肝内胆管癌が鑑別の上位に挙がり、その他には細胆管細胞癌、炎症性偽腫瘍、悪性リンパ腫も鑑別疾患として挙げられるため、生検による組織診断が必要となる。本症例は肝左葉切除術を施行し、非常に稀なG-CSF産生肝内胆管癌と診断された。G-CSFのみでは症状は呈さないが、同時に産生されることが多いとされるIL-6などのサイトカインが発熱や炎症反応上昇などに関与しているとされる。一般的にG-CSF産生腫瘍は低分化~未分化癌が多く、原発臓器によらず、予後不良である。予後不良の原因の1つにG-CSFが腫瘍細胞の自己分泌増殖因子として腫瘍の急速な増大に関与している可能性が示唆されている。
出題者からのコメント
G-CSF産生肝内胆管癌は非常に稀な腫瘍であり、日常診療で目にする機会は少ないと思われますが、診断のポイントとして、まずは著明な白血球の増多、抗菌薬治療が無効であるという、通常の肝膿瘍とは異なる臨床経過に着目していただき、臨床診断に引っ張られずに画像所見(漸増性の造影効果を示す腫瘤、肝内脈管の貫通像)に目を向けていただきたいという意図で作成しました。