画像診断クイズ

画像診断クイズ

第39回 画像診断クイズ(胆嚢)

正解

正解は選択肢4
 

解説

画像所見

肝臓の胆嚢床と胆嚢との間に結節性病変(長径25mm)を認める。境界は明瞭で、造影CT動脈相で造影増強効果が強く、やや分葉状である。後期相ではほぼ等吸収。造影CT動脈相のMPR冠状断像で病変が肝S5と連続すること、病変から肝内へと向かう造影剤の流れが明らかなことから、病変が肝由来であることが示唆される。他方、一見すると結節は胆嚢に取り囲まれるようにも見えるが、接触面は平滑で、外部から接するのみ。また、造影剤の流れる所見は通常の胆嚢静脈還流とは異なり、その走行などからもしかしたら肝静脈への還流ではないかと思われたが、5mmスライスではその連続性は判然としなかった。

MRIのT1強調像(脂肪抑制)で等~軽度低信号、T2強調像では等信号、DWIでは等信号(未提示)、化学シフトの位相差像(未提示)で明らかな脂肪を認めない。EOB造影MRIの肝細胞造影相で病変は等信号を示し、肝と同等の取込みを認める。

腹腔鏡下胆嚢摘出・肝部分切除が行われ、病変は胆嚢床の肝側と明らかに連続、また、胆嚢漿膜とも連続性を有していた。病理学的に結節は明瞭な中心瘢痕を認めない肝限局性結節性過形成(Focal nodular hyperplasia: FNH)と、胆嚢はコレステロールポリープ数個、RS sinus 拡張を有する慢性胆嚢炎とされた。

解説

肝臓に近接する腫瘤が肝由来であるか否かは、病変と肝との連続性の有無で判断される。しかし、連続する部分が索状で細い場合、逆に他臓器由来にも関わらず、癒着のためむしろ連続性が強調されることもあり、空間的な連続性のみでは限界がある。そのような場合、病変と肝内脈管との連続性が明らかとなれば大きな手がかりとなる。病変の供血路が肝内枝と連続して、その流れを捉えることが有用なことがしばしば経験されている。

本例では造影CT 1-mm thin slice軸位像と再構成冠状断像ともに、病変と肝S5との連続性が確認された。FNHは肝被膜直下の peripheral zone に好発するとされ、また、有茎性発育例も知られている点は、本例にも当てはまる。

造影ダイナミックCT動脈相のthin slice軸位像を、結節から肝上縁まで順にページング観察すると、病変からの造影剤が中肝静脈枝へと流出することが確認できた(早期静脈還流early venous return)(図A, B)。

本例は、早期静脈還流を伴う、多血性の肝由来の結節性病変であることから、当初疑われた胆嚢由来の腫瘍は考えにくく、まず鑑別診断にFNHと肝血管筋脂肪腫が挙げられる。本例は肝細胞造影相で等信号であることを併せれば、FNHがより考えやすい。

FNHは、肝細胞造影相で等~高信号の取込みを呈するのが典型的であり、その機序としてはHCCの一部と同様に肝細胞膜トランスポーターOATP1B3の高発現が関与している。また3~4割程度で、その取込み像は、中心部に低信号のあるリング状ないしドーナツ状の高信号を呈し、比較的特徴的な所見とみられる。

上記のほか一般的なFNHの特徴として、供血路は病変の中心から周辺に放射状に広がること、主として周囲肝静脈に流出すること、分葉状の形態で線維性組織が散在すること、約2/3で中心瘢痕(中心に星芒状の瘢痕組織)があることなどである。

日常臨床で動脈相を含む造影ダイナック検査をルーチンに行わない場合、FNHの検出はしばしば難しいと感じる。以前から周囲肝とあまり差がないことがFNH画像所見の特徴とされ、造影前でも、細胞外液性の造影剤を使った門脈相以降の造影時相でも、等吸収・等信号であることも少なくなく、ごく軽度の差違しか認めないためである。その点、“肝細胞性”結節であることを証明しうるGd-EOB-DTPAは、FNHを疑った場合でも重要な情報を追加してくれる。

第39回 画像診断クイズ(胆嚢)回答
A図

:造影CT動脈相冠状断像にて、病変から上方へと向かう、造影剤の流出路を順にトレースしたもの(画像7は左端、右から2番目に相当)。中肝静脈(MHV)本幹では、層流として静脈内の左側部分に高吸収の流れが認められる(造影剤の流れ:矢印、点線:MHVの範囲)。

B図

:MHV本幹レベル1mm軸位像、MHV内の左側方に沿って造影剤の層流(曲矢印)が、この動脈相で認められることから、早期静脈還流といえる(結節の還流域はMHV領域)。対して、右肝静脈(RHV)内には造影剤の還流は未だ認められない。

参考文献

  1. Kitao A, et al. Differentiation between hepatocellular carcinoma showing hyperintensity on the hepatobiliary phase of gadoxetic acid-enhanced MRI and focal nodular hyperplasia by CT and MRI. AJR 30:1-11, 2018
  2. 松井 修 他. 限局性結節性過形成. 肝の画像診断-画像の成り立ちと病理・病態 第2版 p203-4(他), 医学書院, 東京. 2019
  3. 中島 収 他. 限局性結節性過形成とその他の過形成結節. 坂元亨宇 編: 病理診断プラクティス 肝胆膵腫瘍 p139-146, 中山書店, 東京. 2014

出題者からのコメント

この問題は、肝外性に発育する病変についての画像診断の理解を助けるため、FNHを例に考えてみました。結節が“肝細胞性”かどうかを推測できるGd-EOB-DTPAはFNHを疑う状況でも重要な情報を付加してくれると思います。