画像診断クイズ

画像診断クイズ

第37回 画像診断クイズ(肝臓)

正解

正解は選択肢3
 

解説

画像所見

肝右葉後上区域に腫瘤性病変が認められる。腫瘤は造影前T1強調像で低信号、T2強調像で淡い高信号を示し、中心部は造影前T1強調像でより強い低信号、T2強調像でより強い高信号を示している。拡散強調像では著明な高信号を示しており、腫瘤辺縁部のADC値は0.527x10-3mm2/secであった。プリモビスト造影MRIでは動脈相、門脈相で周囲の肝実質より弱い造影効果が見られ、肝細胞相では肝実質と比較して明瞭な低信号を示しているが、中心部には造影前や血管相と比較して信号上昇が認められる。また、動脈相、門脈相において腫瘍内に肝内脈管の貫通像(vessel penetrating sign)が観察される。同時期に施行されたダイナミックCT検査では動脈相、門脈相、平衡相で腫瘍は周囲の肝実質より弱い造影効果を示しており、中心部は遅延性に造影されていた。肝内脈管の貫通像も明瞭に描出されていた。

診断

肝原発悪性リンパ腫

解説

肝原発悪性リンパ腫は稀な疾患であり、悪性リンパ腫患者の約1%程度、原発性肝悪性腫瘍の0.07%である。腫瘍の形態は腫瘤形成型とびまん型に分けられ、原発性は腫瘤形成型が多いとされている。MRIではT1強調像で低信号、T2強調像で高信号、造影検査の動脈相で周囲肝実質と比較して低~高信号、門脈相以降は低信号、肝細胞相で低信号を示すことが多い。ターゲット状の造影効果と洗い出しを呈することもある。拡散強調像では著明な高信号を示し、Colagrandeらは他の肝原発悪性腫瘍や転移性腫瘍との鑑別に、0.918x10-3mm2/secをカットオフ値としたADC値が有用であると報告している。また腫瘍中心部の線維化巣が肝細胞相で造影された症例も報告している。肝内脈管の貫通像は悪性リンパ腫で見られる所見で診断の一助になるが、肝内胆管癌、細胆管癌、早期肝癌、高分化肝細胞癌などでも見られることがあり、特異的な所見ではない。本症例の病理組織では腫瘍内部に拡張した血管と僅かな門脈域を含む大きな線維化巣があり、炎症細胞の浸潤と僅かな赤血球の漏出を認められた。この部位に肝実質の混在は見られなかった。画像所見と対比すると、肝細胞相で中心部に見られた造影効果は肝細胞への造影剤の取り込みを示唆するものではなく、線維化巣の非特異的な間質造影効果を見ていると思われる。

参考文献

  1. Beaty SD, Silva AC, et al. AJR teaching file: incidental hepatic mass. AJR. 190(6 Suppl):S62-4, 2008
  2. KM Elsayes, CO Menias, et al. Primary hepatic lymphoma: Imaging findings. J Med Imaging Radiat Oncol 53(4): 373‒379, 2009
  3. S Colagrande, L Calistri, et al. MRI features of primary hepatic lymphoma. Abdom Radiol, 43(9):2277-2287, 2018

出題者からのコメント

肝原発悪性リンパ腫は非常に稀な腫瘍であり、日常診療で目にする機会は少ないと思われますが、診断のポイントとして肝内脈管の貫通像や拡散強調像における著明な高信号に目を向けていただきたいという意図で作成しました。また、稀ではありますが、肝細胞相で中心部の線維化巣に間質性の造影効果を示す場合があり、これを肝細胞への取り込み(肝細胞性の腫瘍)と誤認しないように気を付ける必要があります。