第35回 画像診断クイズ(頭部)
正解
正解は選択肢4 特別な治療は要さないことが多い。
診断:Capillary telangiectasia(毛細血管拡張症)。
解説
画像所見
スピンエコー法のT1強調画像単純,T2強調画像では異常を認めないが,T2*強調画像で,橋の正中部に淡く低信号域を認め、同部は造影T1強調画像で、淡く(あるいは綿毛状の)造影を呈する。瘢痕,異常血管,周囲脳の異常,浮腫などを認めない。病変は小さいが占拠性効果は明らかではない。
疾患の解説
Capillary telangiectasia は、拡張した毛細血管からなる病変であり,同部のデオキシヘモグロビン増加に伴うBOLD(Blood oxygen level dependent)効果を見ているので,磁化率効果検出に優れるT2*強調画像で異常を認めるが,T2強調画像などはほぼ正常像を呈する。血管の間には正常な脳組織が存在するとされている。造影T1強調像では造影効果を呈する。発生の好発部位は mid pons(60~70%)で、そのほか大脳や脊髄の発生がある。鑑別診断としては,髄内の腫瘍,脱髄,傍正中枝梗塞,本疾患以外の脳血管奇形などがあげられますが,これらの疾患は通常のスピンエコー法画像で何らかの異常信号や瘢痕,特徴的な所見を呈すると考えられます。海綿状血管腫はポップコーン状の形態,mixed intensity core, hypointense rim などを呈し,静脈性血管腫ではumbrella sign が知られています。
選択肢解説
本疾患はDSAでは所見を呈さないと報告されています。
悪性リンパ腫などの髄内腫瘍,血管炎や脳炎,転移性脳腫瘍,海綿状血管腫などでは,ステロイドや定位放射線治療などが考慮されると考えられます。
出題者からのコメント
本疾患の剖検での頻度は0.4%との報告がありますので,日常検査においても一定数が存在していると推察されます。脳幹部のT2*WI低信号を認めた際には,鑑別疾患として思い出していただければと思います。