第34回 画像診断クイズ(膵臓)
正解
正解は選択肢4
解説
画像所見
単純CTで膵体部に石灰化を含む腫瘤を認める。石灰化の分布は、腫瘤の比較的中心部にみられる。
ダイナミックCTでは、造影早期相で正常膵実質よりやや強く濃染されている。造影後期相では、石灰化部分以外は膵実質と等吸収を示している。
MRIでは、T1強調像で低信号、T2強調像で淡い高信号を示している。辺縁部に拡散制限を認める。
FDG PET/CTで、SUV max=4.2の集積あり。
今回の症例は30歳台男性の膵腫瘍で、比較的中心部に石灰化がみられ、ダイナミックCTの造影早期相でやや強い濃染を示していた。MRIで嚢胞成分や出血を疑う所見は認められず、主膵管にも異常はみられなかった。以上より、膵神経内分泌腫瘍(NET)が第一に考えられた。鑑別に、石灰化を含む腫瘍としてsolid pseudopapillary neoplasm(SPN)やserous cystic neoplasm (SCN)があがるが、嚢胞成分が特定できないことなどからNETより可能性が低いと考えられた。
最終診断:膵神経内分泌腫瘍 PanNET (G1)
膵神経内分泌腫瘍は、比較的稀な疾患で、全ての膵腫瘍の約1-2%である。ホルモン産生の有無で機能性と非機能性に分類され、最近の報告では50-85%程が非機能性であると言われている。機能性の中で最も多いのはインスリン産生腫瘍(insulinoma)で、その他ガストリン、VIP、グルカゴン、ソマトスタチンなどのホルモンを産生する腫瘍があり様々な症状が出現する。また悪性度の違いによる分類であるWHO分類が2017年に改定され、細胞分裂数とKi-67指数、腫瘍分化度を基準にNETG1/G2/G3、NEC G3に分類される。
画像の典型例は、多血性の腫瘍を反映して、ダイナミックCTの動脈相で強く濃染される。MRIでは、T1強調像で低信号、T2強調像で高信号と非特異的である。内部に嚢胞変性や線維化などが生じると、内部は不均一となり、石灰化がみられることもある。嚢胞成分や辺縁部の石灰化が明瞭である場合、その他の膵嚢胞性病変やSPNなどと鑑別は困難になる。また変性により腫瘍が乏血性を示すようになると、膵癌との鑑別が問題となる。ダイナミックCTの動脈相で強く濃染される腫瘍としては本疾患以外に、SCNや腎細胞癌の膵転移、膵内副脾などが考えられ鑑別を要する。
存在診断や転移、再発診断などにFDG-PETやソマトスタチン受容体シンチグラフィー(SRS)も推奨される。FDG-PETでは、一般的にKi-67指数と相関があるとされ、高分化なNETで集積は弱く、低分化なNETでは集積が強い。SRSではKi-67指数とは逆相関を示し、高分化な腫瘍で陽性率が高いとされる。またSRSはソマトスタチンアナログ製剤による治療の適応判断にも用いられる。
参考文献
- Classification,epidemiology,clinical presentation,localization, and staging of pancreatic neuroendocrine neoplasms : UpToDate Apr 24,2019
- PET and SPECT for neuroendocrine tumor : National Center for Global Health and Medicine, Department of Nuclear Medicine ,Kazuo Kubota 内分泌甲状腺外会誌 32(2):112-115, 2015
- 腹部のCT 第3版 編集:陣崎 雅弘 発行者:メディカル・サイエンス・インターナショナル
出題者からのコメント
検診で発見された膵神経内分泌腫瘍です。膵腫瘍の鑑別に苦慮する症例も多々ありますが、知識を整理して所見を組み合わせることで診断に近づけると思い、本症例を提示させて頂きました。