第31回 画像診断クイズ(消化管)
正解
正解は選択肢2
解説
モリソン窩に肝内に食い込むように存在する膿瘍がみられる。内部には点状の高吸収域がみられる(矢印)。糞石の可能性があると考え、既往歴を確認したところ、1年前に虫垂炎の手術歴があった。糞石を伴う虫垂炎で術中に穿孔をきたし、10Lの生理食塩水で腹腔内洗浄を要したとのことであった。虫垂炎術後の遺残糞石による腹腔内膿瘍と診断した。
虫垂炎術後の遺残糞石による膿瘍は比較的稀であるが、虫垂切除断端近傍、右上腹部、創下、右傍結腸溝などで報告されている。開腹手術後でも、腹腔鏡手術後でも合併し、初回手術から膿瘍発症までの期間は3日から10年と長期間で報告されている。初回手術時に糞石が落下してしまうと探索は困難であり、手術時の慎重な操作が要求される。糞石膿瘍形成後の治療は、糞石の除去が必要となることが多い。
参考文献
蛭川ら、虫垂炎術後の遺残糞石による小児腹腔内膿瘍の1例、日本臨床外科学会雑誌 Vol. 62 (2001)、1672-1676
出題者からのコメント
虫垂炎術後の遺残糞石による腹腔内膿瘍は比較的稀であるが、膿瘍内の糞石に気づくことができれば、既往歴を確認し、診断することが可能と思われる。