第29回 画像診断クイズ(乳房)
正解
正解は選択肢2
解説
超音波検査では比較的境界明瞭平滑な分葉状腫瘤が見られる。内部エコーは脂肪織と等~軽度低エコーを呈し、後方エコーが増強している。STIRでは高信号、DWIでは辺縁部が高信号で、ADCは辺縁部は低値、中心部は高値を示している。造影ダイナミックスタディでは辺縁部は早期から増強されているが、遅延相でさらに増強が強くなり、強く増強される範囲も拡大している。中心部は一見増強されていないように見えるが、よく見ると遅延性に淡く増強されている。病理では粘液癌の所見で、辺縁部は細胞成分が多く、中心部は粘液湖が主体であった。
粘液癌のMRI所見はT2WIで高信号を呈し、遅延性に増強されることが特徴であるが、細胞成分と粘液成分の割合によりその程度は様々である。本症例は早期相のみ見ると中心部が壊死や嚢胞成分のように見えるが、遅延相をよく見ると淡く増強されていることがわかる。辺縁部の早期から増強される成分についても遅延相で増強がより強くなっている。遅延性の増強に気づけば粘液癌を鑑別に挙げることができる。
出題者からのコメント
筆者も当初は壊死を伴った癌や化生癌を考えてしまった症例です。周囲乳腺とのコントラストが良好となる早期相をつい見がちですが、遅延相の所見も重要であると改めて感じ、自戒の念を込めて出題しました。