第23回 画像診断クイズ(膵臓)
正解
正解は選択肢4
解説
最終病理診断:漿液性嚢胞腺腫
拡散強調像上一部に帯状の強い高信号、ADC map で低信号の部位が存在し、漿液性嚢胞腺癌を否定できないということで、膵頭十二指腸切除術が施行されたが、実際には悪性所見は認められず、出血部分を見ていたものと考えられた(漿液性嚢胞腺腫での出血は稀な所見として報告されている)。漿液性嚢胞腺腫はmicrocystic type と macrocystic type とに大別されるが、本症例はそれが混在する mixed type に相当する。CTの画像のみではmicrocysticの部位では隔壁が多血性となるために一見充実性成分を有する腫瘍に見え、IPMCとの鑑別に窮することがある。その場合でもMRIを撮像することにより充実性に見える部分がmicrocystic typeの特徴的な蜂巣状の小さい嚢胞で構成されていることがわかる。蜂巣状の構造は画像2のT2強調像や画像6のMRCP single thick imageでよく描出されている。CT上充実性に見えた部位が拡散強調像で低信号を示し、ADC map では強い高信号となっている点も腫瘍が嚢胞性病変である事を示唆する。画像5のダイナミック造影MRIではCTよりも充実性に見えていた部位が蜂巣状であることがよりわかるが、決め手には欠ける。
文献
Choi JY, et al. Typical and atypical manifestations of serous cystadenoma of the pancreas: imaging findings wih pathologic correlation. AJR. 2009;193: 136-142
Sun HY, et al. CT imaging spectrum of pancreatic serous tumors: based on new pathologic classification. Eur J Radiol. 2010;75:45-55
Ishigami K, et al. Imaging pitfalls of pancreatic serous cystic neoplasm and its potential mimickers. World J Radiol. 2014;28:36-47
出題者からのコメント
漿液性嚢胞腺腫の診断には上記のように全体が嚢胞性であること、蜂巣状の構造を見つけることがポイントなので、MRI施行後には選択肢にあるSolid-pseudopapillary neoplasm は実際の鑑別には挙がらない。あげるとするとCTのみしか施行できない場合で充実性と勘違いした場合に限りIPMCや粘液性嚢胞腺癌となるが実際的ではない。なお、Solid-pseudopapillary neoplasm は稀に高齢者に発症することもあるが、基本的には若年女性で、通常は乏血性で厚い繊維性被膜を有する出血を呈しやすい腫瘍と言われている。