画像診断クイズ

画像診断クイズ

第21回 画像診断クイズ(肝臓)

正解

正解は選択肢1
 

解説

所見

Dynamic CT(図1-3):肝右葉後区域を中心に大きな腫瘤が認められ、早期相で腫瘤の辺縁に線状の造影効果が認められ、徐々に中心部に向かって造影されるパターンを示す。平衡相では肝左葉の腫瘤は肝実質と等濃度となっているが、肝右葉後区域の腫瘤の中心部には低吸収域が残存している。
血管造影下CT(図4,5):CTAPでは、肝右葉後区域を中心に大きな造影欠損部が存在し、他の肝実質にも多数の造影不良結節が認められる。CTHAでは、これらの造影欠損部にリング状もしくは斑状の造影効果が認められる。
MRI(図6-8):T1WIで腫瘤は低信号を示し、内部に出血を示唆する線状もしくは点状の高信号域を認める。T2WIでは腫瘤は全体的に高信号を示し、内部に円弧状もしくは結節状の低信号域を含む。拡散強調画像では腫瘤は不均一な高信号を示す。

診断および入院後経過

入院後の経皮的肝生検にて、血管肉腫と病理診断された。全身検索にて原発巣となる他病変は認められず、肝原発血管肉腫と最終診断された。
入院後、タキソテールによる動注化学療法を行ったが、症状改善なく、イムネース動注療法に変更した。その後も胸腹水貯留および肝機能障害が進行し、著明な血小板減少(2.4万)も出現した。腫瘍内出血による持続性血小板減少(Kasabach-Merritt症候群)と考えられ、血小板輸血および新鮮凍結血漿輸血により対処した。しかし胸腹水貯留による呼吸不全および肝機能障害が急速に進行し、入院後3ヶ月で永眠された。

解説

肝血管肉腫は血管内皮に由来する肉腫であり、肝原発悪性腫瘍の 0.5~2% を占める比較的稀な疾患である。60~70歳台に多く,4:1 で男性に多く認められ,塩化ビニル,トロトラスト,ヒ素,アンドロゲンによる暴露のほか,ヘモクロマト-シス,von Recklinghausen病とも関係があるとされるが,多くの症例で原因不明とされる1)。診断上有用な腫瘍マーカーは存在しない。

Dynamic CTでは血管腫や類上皮血管内皮腫に類似する造影パターンを示すことが多く、特異的所見は示さない。MRIでは内部の出血壊死を含む不均一な内部信号を示し、診断上有用である。FDG-PETにてFDGの高集積を示す報告が多いが、確定診断にはならない。
肝血管肉腫の標準的な治療は定まっていない。全身状態不良などの理由により治療困難な状況では平均生存期間は5.5カ月,治療を行っても3年以上の生存は3%未満ともいわれている2)。肝血管肉腫の15-27%で腫瘍破裂による腹腔内出血を生じる。また、経過中にKasabach-Merritt症候群を生じうる悪性腫瘍であり、これに対してgemcitabineとvinorelbineが有効だったとする報告がある3)

参考文献

1) Locker GY, Doroshow JH, Zwelling LA, et al. The clinical features of hepatic angiosarcoma: a report of four cases and a review of the English literature. Medicine 1979; 58: 48―64
2) 高橋 収,高橋 透,岩井和浩,他.肝血管肉腫破裂の 1 例.日消外誌 2001;34:490―494
3) Read WL, Williams F. Metastatic angiosarcoma with Kasabach-Merritt syndrome responsive to gemcitabine and vinorelbine after failure of liposomal doxorubicin and paclitaxel: a case report. Case Rep Oncol. 2016;9:177‒181.

出題者からのコメント

血管肉腫は稀な疾患であることから、Dynamic CTでは内部に変性を有する血管腫と誤診する可能性があり、特に発症早期ではその可能性が高いと予想される。MRIでは腫瘍内に出血壊死を反映する不均一な内部信号が認められることから診断の一助となる。
肝血管肉腫における臨床上の特徴として、腫瘍破裂による腹腔内出血やKasabach-Merritt症候群の合併にも留意しておきたい。