バイエル画像検査室
MR室
MRIで生じるアーチファクトを読んでみた
バイエルのWebにある「MRIで生じるアーチファクト」を読みました。アーチファクトの入門編として参考になりました。この冊子の中で技師長が気になったアーチファクトはありますか?
そうですね~、不思議な直線が気になりました。答えを知ってしまえば、あぁそうですか...なんだけど、初見で見抜くのは厳しいです。この画像を初めて見たときの私の心の声を列挙してみます。
画像引用:弊社冊子MRIで生じるアーチファクト 図33より
https://radiology.bayer.jp/publication/mri-artifact/08
ふむ。脂肪抑制ムラのあるT2強調画像だなぁ。まぁ、こういうこともある。可能なら手を挙げておけばよかったのに。腹壁に白い横線があるなぁ。アーチファクトだろうけど何処からきているのだろう?
- 前後のスライス、他の撮像でも出ているのかな。
- 他の撮像でも出ているとしたら、信号強度やコントラスに違いはあるのかな。
- 位相方向のF.O.V外からの折り返しかな。そうだとしたら背中側だろうし、患者テーブルがあるから、そんな隙間ないよなぁ。
- 体幹部の大きさから長方形F.O.V(Rec.F.O.V)の絞りすぎとうい感じの折り返しでもないな。
- 白い線はF.O.Vの左右方向全てではなく、途中で途切れているな。
- 再構成エラーでこうはならないよななぁ。
- ハードウエアの故障って感じでもないな。
と、いう考えを体感速度0.5秒ぐらいで巡らしました(実際はもっと長い時間ですが)。
この画像の解説は次のとおりでした。
「腹部MR の横断像では、腹部と背景を横切る水平な高信号の直線がみられる。前後のスライスにも同じアーチファクトがみられ、他のコントラストの画像でも同様に確認できる。詳しく調べると、患者のテーブル清掃に使用した水の残りが脊椎用RF コイルの下に溜まっていたことが判明した。脊椎用RF コイルがこの水からの信号も受信しており、信号の発生源がFOV の外にあったため、これらの領域の信号は画像上部において位相エンコード方向の別の部分に「折り返し」として描出されていた。
アーチファクト防止の観点から、次のことが言える:清掃したら、乾かそう!」
F.O.V外からの折り返しまでは想像できましたが、拭き残した水からの信号とは。MRI装置が電気製品とは云いませんが、まさか患者テーブルやRFコイルが濡れているとは思いませんでした。装置は濡れていない!これも一種の思い込みですね。
検査の状況としてこのまま続けなければならない場合の対応策ってありますか。
白い線が何か判らないとしても、F.O.Vの外から飛んできていると想像しているから試せることはあります。白い線がどのように振舞うか確認するため、撮像時間は考慮しないとしたら、Rec.F.O.Vを解除するか位相方向にオーバーサンプリングして確認してみるといいかな。それで白い線が関心領域から外れるなら、検査可能な撮像パラメータを設定してみましょう。