MRIで生じるアーチファクト
認識、解明、除去 Harald H. Quick
アーチファクト例 - システム/ハードウェア
いくつかのアーチファクトはMRIハードウェアのトラブルによって、または検査室の電気機器の故障によって生じ、MRIデータの収集中に画像の不具合をきたす場合がある。これらの装置に関連したアーチファクトには、特徴的なパターンを生じるラジオ波アーチファクトとスパイクなどが含まれる。
RFアーチファクト
どんなアーチファクトか--認識--
ラジオ波アーチファクト(RFアーチファクト)は、しばしば特定のパターンを呈する画像として現れる。
RFアーチファクトは、ジッパーアーチファクトとも呼ばれる。RFアーチファクトは、位相エンコード方向に高信号と低信号が交互に現れる縞状に重なった点として現れる(図28)。不連続の縞状に描出されることもあれば、画像全体に影響を及ぼすこともある。
図28.RFアーチファクトが、画像とは無関係に発生し一定のパターンとしてMR画像上に現れており、まさに位相エンコード方向(この例では上下方向)に沿って発生している。MR画像の読み取り周波数方向(ここでは左右方向)では、まるでスペクトルのように見える。特定の周波数において干渉が存在し、それらが位相エンコードの各ステップの同じ位置で、重なり合っている。このファントム画像(A)および患者の画像(B)の例では、縞状パターンが位相エンコード方向に生じている。このRFアーチファクトはジッパーアーチファクトとも呼ばれている。検査室のドアが開いている、RFシールドの破損、検査室内に故障した機器がある、RFコイルの接続不良などが、RFアーチファクトの原因としての頻度が高い。
なぜこのアーチファクトが生じるのか--解明--
MR画像の基礎となる信号は、微弱なラジオ波による信号であり、非常に高感度なラジオ波アンテナ(RFコイル)で受信される。外部からの電磁的影響を防ぐため、MRI検査室はRFシールドにより完全に遮蔽されている。このため、麻酔器具や輸液ポンプ、造影剤注入器など、検査室で使用する可能性のある全ての電気機器は、干渉する電磁信号を発することのないMRIに適合した製品でなければならない。RFコイルに干渉する信号が受信されると、それらは位相エンコード方向に直線状の高信号の縞状パターンとしてMR画像上に重なって現れる。RFの干渉は特定の周波数を有しているため、常にMR画像上の読み取り周波数方向の同じ位置に生じ、位相エンコード方向に沿って分離した線またはパターンを生じる。
どうすればこのアーチファクトを回避できるのか--除去--
RFアーチファクトを防ぐためには、干渉するラジオ波を発するすべての原因を検査室から取り除く必要がある。以下の対処が有用な場合がある:RFコイルの接続状況を再確認する、MRI室のドアを完全に閉める、MRI室にある外部の電気機器の電源を落とすか室内から撤去する。これらの対策を行った後に、MRI検査を改めて施行することが望ましい。
スパイク
どんなアーチファクトか--認識-
再構成したMR画像全体に、格子状またはダイヤモンド型のパターンで高信号が画像上にみられた場合、「スパイク」によるものである可能性がある。RFアーチファクトは通常、画像の水平線上または垂直線上に現れ、必ず位相エンコード方向に沿って生じるが、これとは対照的に「スパイク」による干渉パターンは通常、斜め方向に生じる(図29および図30)。
図29.通常のケースでは、k-space(A)のrawデータを逆高速フーリエ変換(IFFT)することで、アーチファクトのないMR画像が得られる(B)。しかし、データ収集中に静電気の放電によりk-spaceに高エネルギーの信号ピーク(スパイク)が加わると(C)、MR画像全体にスパイクアーチファクトとして相対的に高信号の点、縞状、格子パターンが形成される。RFアーチファクトと異なり、スパイクアーチファクトは厳密には位相エンコード方向に平行に生じるわけではないが、横に移動するような縞状または格子状のパターンを呈する場合がある。
図30.腹部MR画像にランダムに斜め方向の縞模様として重なるスパイクアーチファクトスパイクアーチファクトがMR画像上の全体に発生している。
なぜこのアーチファクトが生じるのか--解明--
傾斜磁場を高速にスイッチングすると、MRI装置の周囲の金属製部品に機械的変動および渦電流が生じる。MRI装置の各パーツ類が正しく固定されていない場合、傾斜磁場コイルからの振動などにより、MRI装置の部品間に電位差が生じる。これらの電位差に加え、RFシールドに保護された検査室内の他の静電気が撮像中に放電し、RFコイルによって受信され、rawデータの信号ピークを意味する「スパイク」が生じる。画像再構成後、このような「スパイク」は、MR画像上に格子状またはダイヤモンド型の干渉パターンとして現れる。
どうすればこのアーチファクトを回避できるのか--除去--
「スパイク」の原因を探すのは時間の浪費となることが多い。このアーチファクトは多くの例で散発的に発生し、再現することは容易でない。検査室内の湿度が設定値よりも低下すると検査室内における静電気の放電が増加し「スパイク」アーチファクトが生じる可能性があるため、検査室の湿度は設定値以上に保つ必要がある。このアーチファクトの発生頻度が多く、対処できる対策を講じても発生するようであれば、MRI装置の調整を、製造業者のサービス担当者に連絡するべきである。