MRIで生じるアーチファクト

認識、解明、除去 Harald H. Quick

アーチファクト例
生理的因子
呼吸性アーチファクト|拍動アーチファクト|フローアーチファクト
物理的因子
折り返しアーチファクト|磁場不均一|傾斜磁場の非線形|脂肪抑制不良によるアーチファクト|ケミカルシフトアーチファクト|磁化率アーチファクト
インプラント
金属アーチファクト
造影剤
造影剤のタイミング|ステント|MRA の後処理|T2* アーチファクト
システム/ハードウェア
RF アーチファクト|スパイク
稀な例
ヘアジェルと頭皮|サイボーグ、それとも鶏?|不思議な直線|解剖学的構造とは関係ない
MRIで生じるアーチファクト -認識、解明、除去 Harald H. Quick

MRIで生じるアーチファクト -認識、解明、除去 Harald H. Quick

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監修者序文

北海道大学 医学研究院 教授 工藤 與亮

画像診断における磁気共鳴画像(MRI)の役割は確立されており、日々の診療の中で欠かせない画像診断モダリティの1つになっている。著者であるHarald H. Quick博士も述べているが、MRIには多くの利点がある一方、画像の解釈において真の病変とアーチファクトを適切に区別することは正しい画像診断を行う上で非常に重要である。しかし、アーチファクトをアーチファクトとして自信を持って言い切るためには理論的背景の知識が不可欠であるため、MRI装置、撮像法、生体の環境、新しいデバイスなどの幅広い知識と経験が必要である。さらに、より良い画像診断のためにはアーチファクトを軽減させるための方策を知っておく必要もある。

本著ではアーチファクトをまず見つけること(認識)、そしてアーチファクトと言い切るための理論背景(解明)、さらにアーチファクトを低減させるための方法(除去)について分かりやすく説明されている。アーチファクトの「認識」のためには、まずそのアーチファクトがどんなアーチファクトなのか、特徴を知っておく必要がある。そして、なぜそのアーチファクトが生じるかの「解明」によって自信を持ってアーチファクトと言い切れることになり、さらにアーチファクト発生の理論背景を基に、どのようにそのアーチファクトを回避できるのか、「除去」の方法も具体的に解説されている。MRIの教科書は世に多く出版されているが、本著を読むことでアーチファクトに関する知識に加えて、MRIの基本原理についての理解もより深まるのではないかと思われる。

そして何よりも、アーチファクトは時にとても不思議で奇妙な画像を呈することがあり、アーチファクトの画像自体を楽しむこともできる。アーチファクトをより良く理解することで、MRI診断をより楽しんで行えるようになってほしい。

序文

Prof. Harald H. Quick, PhD Director

磁気共鳴画像(MRI)は、画像診断においてもっとも重要なモダリティの1つである。MRIの優れた特徴として、軟部組織のコントラストに優れること、データ収集が迅速なこと、空間分解能が高いこと、コントラスト分解能が高いこと、スライス断面を自由に設定できること、そして最後に忘れてはならないこととして、電離放射線を用いないことが挙げられる。

MRIでは、電離放射線の代わりに強力な静磁場およびラジオ波を用いる。その画像生成の原理は洗練されたものであるが、物理的には複雑なものでもある。

MRIシステムにはコントラストを得るために多数のオプションが存在し、複数のハードウェアが複雑に組み合わされているため各所にエラーを引き起こす要因が潜んでおり、これが干渉やアーチファクトとなって最終的な画像上に現れる場合がある。

Prof. Harald H. Quick, PhD Director

MRIにおける基本的な物理学を理解することは、アーチファクトを認識し、原因を解明し、それらを除去するための対策を講ずるのに役立つ。反対に、アーチファクトを慎重に分析することで、MRIの物理学をより深く理解することにもつながる。アーチファクトは、我々がもっているMRIに関する知識で視覚的に理解することが可能である。アーチファクトの中には、重要な画像所見を不明瞭にし、診断を困難にするなどの問題を引き起こす好ましくないものもあるが、将来的にMRI画像およびMRI検査の質の向上に役立つ可能性がある。最後に忘れてはならない別の側面として、想定外の所見が我々を驚かせたり、仲間との協力を促したり、笑いをもたらしたりする場合がある。

本冊子では、MRIで生じる頻度の高いアーチファクトを構造的かつ包括的にまとめている。アーチファクトの定義を述べたあとに、アーチファクトが起こる原因を理解するのに重要となるMRIの原理を概説する。本冊子の核を成すのは、MRIで頻繁に生じるアーチファクトが描出された多数の画像であり、事例は原因によってグループ分けし、これらの画像を事例ごとに「認識、解明、除去」のアプローチを用いて詳細に検討した。

まずアーチファクトを生理的因子と物理的因子に分類し、続いて、造影MRAで生じるアーチファクト、インプラントにより起こるアーチファクト、MRIシステムのトラブルにより生じるアーチファクトを示す。最後に特に非典型的な事例を提示するが、これらには独特の美しさがある。一覧表では、主なアーチファクトとそれらの特性について要約と概略を示し、それらを除去するための対策を述べる。

このアーチファクトの解説を好奇心を持って楽しんでご覧頂きたい。最後に、本冊子をご覧になっているあなたが、アーチファクトの学習を通して魅力的なMRIの世界をより深く知る過程で、自分だけの「アハ体験」を味わう瞬間が来ることを願っている。

監修 工藤 與亮

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