MRIで生じるアーチファクト
認識、解明、除去 Harald H. Quick
アーチファクト - 定義
アーチファクトという用語(ラテン語で「人工物」を表すars、artisと「作られたもの」を表すfactumの組み合わせで「人工的に作られたもの」を意味する)は、人為的または技術的な影響によって発生する産物または現象を指す。MRにおけるアーチファクトとは、実際の組織の空間的分布と一致しないMR画像上の構造物または干渉となる。
アーチファクトは例えば、データ収集時、再構成時、処理時の何らかのエラーによって生じる。MR画像上に、様々な形状や形態のアーチファクトが生じうる(図1)。これについては数多くのレビュー論文が報告されている1‒5。アーチファクトは、画像の評価および診断に悪影響を及ぼすだけでなく、読影不能になることすらある。MRIの画像で誤った解釈をしないよう、このようなアーチファクトを「認識」し、その原因を「解明」し、分類することが重要である。これらは、使用者がアーチファクトを減らす、あるいは「除去」するための対策を施すにあたり不可欠な要素である。
図1.MRIの画質には、複数のパラメータが影響している。画像マトリックスの大きさによって画像の明瞭度と空間的分解能が決まる。選択したコントラスト(T1、T2など)によって、画像の濃淡や組織間の差が決定される。MR画像は、MRIの物理的特性によるノイズに常にさらされている。MR画像には多様なアーチファクトが現れる可能性がある。
MRIで最もよくみられるアーチファクトを、構造化し包括的に提示していく。多数の画像を用いて、MRIで最も頻繁に起こるアーチファクトを提示し、事例ごとに「認識、解明、除去」の順を追ったアプローチに基づいて検討した。アーチファクトは原因によってグループ分けした。例えば生理的因子によるアーチファクトは、MRIデータ収集中の呼吸、血流、拍動、患者の体動によって起こる。物理的因子によるアーチファクトは、MR画像取得時の複雑な物理的過程によって起こる。ほかに造影MRA、体内のインプラント、想定外のMRIシステムトラブルに関連してアーチファクトが生じる(図2)
図2.MRI撮像の概要(上段)と、MR画像に影響する可能性のあるアーチファクトの例(下段)。MRI検査は、患者を静磁場にセッティングすることから始まる。シーケンスはあらかじめ設定した撮像パラメータに従ってMRI装置のハードウェアをコントロールし、RFコイルがラジオ波のエコー信号を受信する。これらはk-spaceに充填され、逆高速フーリエ変換(IFFT)によりMR画像に再構成される(上段)。この画像取得時の過程で、様々な部位に生理的干渉、物理的干渉、ハードウェア関連の干渉が起こる可能性があり、これらがMR画像に多様なアーチファクトとして現れる(下段)。