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造影剤について何か質問は?
といっても...

皆さんはここまでの大部分をただ漫然と、あるいはざっと読み飛ばしてきたかもしれませんね。でも、この第3部では皆さんの注意が引き付けられると思いますよ。この後の数ページをちょっと拾い読みしてみてください。ハッとするような質問がいくつかあるはずですから。

造影剤について何か質問は? といっても...
質問1

造影剤を使った検査の後で献血をする場合に、何か注意することはあるか?

いかがですか、皆さんが今まで考えたこともないような質問ではありませんか?

尿路血管造影剤は注入後30~90分以内にその50%が体内から排泄されることがわかっています。腎機能が正常なら24時間後には約85~90%が体内から排泄されます。

さて、腎機能に障害があっても血清クレアチニン値は正常範囲ということがありますが、この時はすでに糸球体濾過率も造影剤のクリアランスも明らかに低下しているのです。

ということは、(健常人に見えて実はそうではない場合)かなりの量の造影剤が体内に長時間残っている可能性があるわけです。一部の機関では、薬剤の半減期の少なくとも5倍の期間は献血を受け付けていません。それを考慮すれば、腎機能によって待機期間に幅があるので、ケースバイケースで判断する必要があります。

質問2

造影剤の容器を開けたらどれくらいの期間使用できるか?

造影剤は基本的に一回で使い切りの製剤です。一度容器を開封したら長期間保管してはいけません。一番の問題は細菌による汚染です。興味深いことに、細菌汚染が深刻な問題になるのは、イオン性造影剤よりも非イオン性造影剤の方です。たぶん非イオン性造影剤は微生物にとっても毒性が低いからでしょう。

状況にもよりますが、概して造影剤は容器を開けてから6~8時間たったら使わないほうがいいでしょう。しかし、使用する造影剤の製品情報をチェックして詳細を確認するようにしてください!

造影剤の容器を開けたらどれくらいの期間使用できるか?
質問3

造影剤はどうやって保管すればいいか?

他の薬物と同様、造影剤にも有効期限があり、これを過ぎたら使用してはいけません。といっても、通常の状態なら造影剤は、剤形にもよりますが、3~5年の保管も可能です。さて、「通常の状態」とは何か、知りたいでしょう?

特別な指定がない限り、造影剤は室温で保管できるし、またそうするべきです。造影剤が冷えすぎると(0°C前後)、結晶が析出します。しかしこれは、ビンを未開封のまま約80°Cに温めれば溶解します。造影剤を温度がどんどん上昇するような場所、例えば直射日光下に長時間さらしておくと、分解が加速されます。つまり、無機ヨードの解離、アミド結合の加水分解、pH値の低下が起こります。この分解は光や放射線への曝露によって促進されますが、放射線の影響はそれほど強くありません。それでもやはり、造影剤は放射線を遮断した暗い場所で保管することが推奨されます。

造影剤を加温器内にどれくらい入れておいても大丈夫でしょうか?

これは造影剤によって異なります。例えばイオパミドール(イオパミロン®)やイオトロラン(イソビスト®)は40°Cで少なくとも6ヵ月は安定しています。

訳者注:結晶析出は温度以外に容器の破損などによっても生じます。造影剤は注射剤ですので、外観に何らかの異常が確認された場合は使用しません。

質問4

造影剤には消毒薬と同様にヨードが含まれているが、消毒薬として使えるか?

消毒薬としては使えません。たしかにイオン性造影剤はヨードを300mg/mL以上も含み、そして抗菌作用があります。しかしこれはヨードだからではなく、高い浸透圧と化学毒性によるものです。

非イオン性造影剤はこのような特性がなく、忍容性に優れ毒性も弱いので、細菌や真菌にとっても「優しく」、これらが造影剤の中で繁殖してしまいます。

質問5

臨床検査値は造影剤の影響を受けることがあるか?

影響はあります。誰でも知っている例が一つあります。甲状腺の検査は、造影剤と一緒に注入されたヨウ化物、あるいは体内で酵素の働きにより造影剤分子から解離したヨウ化物によって干渉されます。甲状腺への放射性トレーサーの取り込みも、尿路血管造影剤投与後2~6週間以上も抑制されます。

結論として、心配な時は、採血や採尿は造影剤の投与前か、投与後少なくとも24時間たってから行うことが推奨されます。

他にも干渉を受ける検査を知りたいですか? 造影剤投与の影響を受ける検査のリストを挙げておきます(完全ではありませんが)。

  • 尿の比重の測定(造影剤投与後は値が高くなる)
  • ビウレット法による蛋白質定量
  • 電解質測定、特に鉄など

結論:疑わしい場合は、血液サンプルまたは尿サンプルを造影剤投与前あるいは少なくとも投与24時間後に採取してください!

質問6

造影剤は他の薬物と相互作用を起こすことがあるか?

患者の多くが毎日薬を服用していることを考えれば、この問題について少し考えておくべきでしょう。問題になりそうなことがいくつかあります。

  • イオン性造影剤の心抑制作用の一部はカルシウム結合に起因することから、当然、カルシウム拮抗薬(ベラパミルなど)がこの問題を助長する可能性があります。
  • 神経弛緩薬は造影剤のてんかん誘発性を増強する可能性があります。非イオン性造影剤(イオトロラン)を脊髄造影に使用した場合も同様です。
  • 一般的には、メトホルミン(経口高血糖治療薬のビグアナイド薬)は、造影剤投与当日に中止することが推奨されていました(腎機能が正常の場合)。そうすることで造影剤による腎障害で薬剤が蓄積されるのを防ぎ、合併症としての乳酸アシドーシスを回避するためです。しかし正常な腎機能の患者の場合、非イオン性モノマー型造影剤投与後に造影剤による腎障害が生じることは極めてまれなため、この推奨事項は変更されました。推算糸球体ろ過量(eGFR)30mL/分/1.73m2以上の腎障害のない患者では、非イオン性モノマー型造影剤の静脈内投与前後にメトホルミンを中止する必要はありません。

動脈内投与では、腎臓に問題がある場合、またはeGFRが30mL/分/1.73m2以下の場合、メトホルミンは中止しなければなりません。3日後に臨床検査をして造影剤による腎障害が生じなかったことが明らかになれば再開することができます。

詳しくは、使用する造影剤の製品情報を確認してください。

質問7

造影剤を他の薬物と混ぜても大丈夫か?

安全のためには、造影剤を他の薬物と混ぜることは避けるべきです。沈殿の可能性や、それが元で血管閉塞を起こし、副作用を招くかもしれません。

イオン性造影剤と混ぜると沈殿を生じる物質として、パパベリン、トラゾリン、ジフェンヒドラミン、シメチジン、プロタミンなどが報告されています(これは決して完璧なリストではありません)。今挙げた物質に非イオン性造影剤を混ぜても、目に見える変化は起こりません。

それでも、やはり混ぜるとリスクを生じます。それから、同一ルートから別の物質を注入する時は、その前に静脈ラインやカテーテルを生理食塩水で念入りに洗浄することが必要です。

血管インターベンション治療を行う場合、造影剤とウロキナーゼを混ぜるとウロキナーゼの線溶活性が低下する可能性があることも知っておいてください。

質問8

妊婦に造影剤を投与してもよいか?胎児に影響はあるか?

胎盤は水溶性造影剤(尿路造影剤)に対するバリアとはならないので、造影剤は胎児の血液循環に入ります。そして、胎児に甲状腺の異常をもたらすこともあります。これらの甲状腺障害の程度は、出生後に造影剤を投与された場合と同等です。造影剤投与は甲状腺機能亢進だけでなく、機能低下を招くこともあります。甲状腺ホルモンは、発達、特に脳の発達に重要なことから、ホルモン欠乏症は避けなければなりません。

母体の生死にかかわるような場合は、代替となる診断法をいろいろ検討することは必要ですが、胎児へのリスクを理由にして造影剤投与を控えるべきではありません。

質問9

造影剤としてヨードをどれくらい注入することになるのか?

造影剤中のヨード濃度がmg/mL(またはmgI/mL)で表されることを知っていれば、簡単ですね。300mgI/mLの溶液としての造影剤を考えてみましょう。これを100mL注入すると、30gのヨードを投与したことになります。通常の体内のヨード総量(約0.01g)を考えると、これはすごい量です。幸い造影剤のヨードは造影剤分子のベンゼン環にしっかり結合しているので、甲状腺にとってあまり問題になりません。

それでは、ヨウ化物はどれくらいあるのか?

今、言ったように、造影剤中には遊離した単体としてのヨードは存在しません。しかし造影剤はごく少量のヨードイオン(I)、つまりヨウ化物を含んでいます。これは現在の非イオン性造影剤の約1.5~15μgヨウ化物/mLです。長期保存後ではわずかに高いかもしれません(「造影剤と甲状腺」参照)。

さらに、酵素の作用によって注入された造影剤分子からヨウ化物が解離し、1日あたりおよそ1~10mgのヨウ化物が放出されますが、尿路血管造影剤は2~3日以内にほぼすべて排泄されます。この遊離ヨウ化物は甲状腺機能に影響を及ぼすことがあります。

ちなみに、核医学検査で通常使われる量は約0.3μgです。核医学検査の前に造影剤が投与されれば影響があることは予想できますね。

質問10

甲状腺障害のある患者に造影剤を使ってもよいか?

成人の場合、最も重大な問題は自律性細胞によるホルモン産生による甲状腺機能亢進です。これらの細胞はヨードを代謝して、制御不能な形で、甲状腺ホルモンを産生します。このホルモン追加産生は、正常の甲状腺組織がホルモン産生を抑えることで、ある程度、補正されます(「造影剤と甲状腺」参照)。このメカニズムが十分に機能しない場合、甲状腺ホルモンが過剰に産生されて甲状腺機能亢進が起こります。

この「追加的な」ホルモン産生は自律性細胞数に依存するため、一部の患者群ではリスクが高まります。

-既知の自律性結節がある患者。自律性結節は自律性細胞の大きな集合体以外のなにものでもありません。

-甲状腺腫患者。特に甲状腺容積が増大している結節性甲状腺腫(自律性細胞も増大している場合はその数。

-60歳以上の患者。自律性細胞は加齢とともに増大するため。

-ヨード欠乏地域の患者。ヨードが欠乏している場合甲状腺ホルモン産生は危険です。甲状腺単位体積あたりの甲状腺ホルモンが合成されていないと身体が判断し、甲状腺が肥大します。そして甲状腺が肥大すると、自律性細胞数も増加し、過剰にホルモンが産生される危険に陥ります。

甲状腺障害のある患者に造影剤を使ってもよいか?

-ホルモン産生増加に対する代償機能が制限されている患者。既存の活動性または潜在性甲状腺機能亢進症(グレーヴズ病等)などの症例が該当します。

-リスクのある患者や甲状腺障害の可能性がある、または既に甲状腺障害がわかっている患者は、造影剤投与前に甲状腺機能をチェックする必要があります。

最も重要な「スクリーニング」テストは甲状腺刺激ホルモン(TSH)です。甲状腺刺激ホルモンが低い場合は、潜在的な甲状腺の機能亢進が示唆され、精密検査には甲状腺ホルモン測定(遊離チロキシン(fT4)および遊離トリヨードサイロニン(fT3))が含まれます。甲状腺機能亢進症の場合、遊離末梢甲状腺ホルモン濃度は上昇します。甲状腺刺激ホルモンが低値で甲状腺ホルモン濃度が正常な場合は、潜在性甲状腺機能亢進症が示唆されます。ホルモン補充を受けている患者では、当然甲状腺刺激ホルモンも減少しています。一方で、甲状腺機能低下症などで、甲状腺ホルモン濃度が下がっている場合は、甲状腺刺激ホルモンが刺激されます。

残念ながら、甲状腺機能異常が起こるリスクが高いのは、甲状腺刺激ホルモンが低い患者だけではなく、甲状腺刺激ホルモンが正常値の患者も同様であり、このことがこの問題をよけいに複雑にしています。

甲状腺機能亢進症を発症するリスクのある患者、甲状腺機能亢進症が明らかな患者に対するヨード含有造影剤の血管内注入は、どうしても必要な場合に限るべきです。可能ならば、別の方法、例えば超音波診断かMRIを予定してください。それが無理な場合は、リスクのある患者にヨード含有造影剤を投与しなければなりませんが、いくつかの準備が重要になります。

造影剤投与の前にまず血液検査を行います(参考のためならTSH測定だけで十分です)。次に、造影剤投与後に患者の血中に出現するヨウ化物が甲状腺ホルモン合成に干渉しないように、薬物投与を行います。ここで何が必要なのか理解するために、甲状腺の代謝について少し確認しておきましょう。甲状腺はチロキシンとトリヨードチロニンという、ヨードを含むホルモンを産生します。この合成にはヨードが必須で、このヨードはホルモン産生が行われる甲状腺細胞の中に存在する必要があります。

ヨードは食べ物から摂取されますが、食物中のヨードは、ヨードとしてではなく、ヨウ化物の形で吸収され、血液循環に入ります。血中に入るのがヨードではなくヨウ化物であることには理由があります。甲状腺はヨウ化物なら取り込めますが、ヨードは取り込めないのです。この取り込みは能動輸送によって行われ、甲状腺の中に入ると、今度はホルモン合成のためにヨード(ヨウ化物ではなく)が必要となるのです。ヨウ化物からヨードを作るには、負の電荷を帯びたヨウ化物中のヨードが酸化される必要があります。この過程はぺルオキシダーゼという酵素によって媒介されます。こうしてようやくヨードが得られ、ホルモン合成が行われます。

ここに述べたすべての過程に薬物投与が影響を与えます。

  • 細胞膜を介したヨウ化物の能動輸送は、過塩素酸塩(ClO4)など、ヨウ化物と拮抗する他のイオンの投与により阻害されます。
  • ぺルオキシダーゼに作用するチアマゾールなどの薬物によって、細胞内のヨウ化物の酸化が影響を受けます。ぺルオキシダーゼはホルモン合成の別のステップにも関与すると考えられる酵素です。

リスクのある患者での推奨される予防薬レジメンはわずかに異なり、大まかに言えば:

-過塩素酸塩3x300mg/日(造影剤投与2~4時間前に開始)

-チアマゾール20~30mg/日(甲状腺機能亢進症の場合は80mgまで)造影剤投与2日前に開始。

これらの薬剤は、尿路血管造影剤では完全に排出されるのにある程度時間がかかるため、造影剤投与の2~3週間後まで投与しなければなりません(胆嚢・胆管造影剤など、体内で長く貯留する造影剤の場合は、およそ5~6週間継続する必要があります)。

患者には甲状腺機能亢進症の症状について教えておき、2~3週間間隔で確認するべきです。予防薬自体が問題を引き起こす可能性があり、ベネフィットと天秤にかけて考える必要があるので、より詳細な手順について、内分泌科医と相談するべきです。

既述のとおり、造影剤の投与およびヨードへの過剰な曝露は、一時的なホルモン産生低下を起こします。数日後にはホルモン生成が再開されますが、回復しない場合があり、その結果として甲状腺機能低下症が起こります。正常な甲状腺機能は一般的に発達、特に脳の発達に不可欠であり、幼児において特に重要です。

しかし、ここではこれ以上掘り下げるのはやめましょう。難しい状況になったときには、内分泌科医に相談することを忘れないでください。

質問11

造影剤への皮膚反応は基本的にすべて同じですか?

違います!説明のとおり、皮膚反応は造影剤投与後に急性アナフィラキシー/偽アレルギー反応として生じます。これらの症例では、肥満細胞の脱顆粒化によって、伝達物質、特にヒスタミンが放出されて、その後、局所の血管拡張および浸透性の上昇によって、紅斑、発疹が起こり、神経の刺激が痒みを引き起こします。これらの症状は自然に消失することもあれば、抗ヒスタミン剤の投与が必要な場合もあります。これにはH1受容体拮抗薬、それが効かない場合はH2受容体拮抗薬の追加投与を行います。

さらに、造影剤投与後7日以上たってから発現する、2つ目のタイプの皮膚反応もあります。これは非イオン性モノマー型造影剤よりも非イオン性ダイマー型造影剤投与後に、高頻度に見られます。斑状丘疹状皮疹または発疹性膿疱症、じんま疹、血管性浮腫として発現する可能性があり、たいてい痒みを伴います。

このタイプの皮膚反応はT細胞媒介であると考えられ、抗ヒスタミン剤や局所コルチコステロイドには反応しませんが、幸運にも、大抵の場合は治療をしなくても症状が落ちつく発疹です。

質問12

造影剤の十分量、あるいは最大投与量はどれくらいか?

これもよくある質問ですが、一般的な答えはありません。基本的に、必要最少限の量を使うべきです。

腎機能が正常な成人の場合、ほとんどの放射線科医は造影剤の最大投与量を体重の関数として計算します。通常イオン性造影剤300mgI/mLでは2~3mL/kg体重が最大投与量でしたが、非イオン性造影剤では安全域が広く、5mL/kg体重が上限とされることが多いようです。

投与量設定において重要な因子が2つあります。

  • 患者の年齢
    小児では電解質異常の危険が常にあります。高齢者では複数の疾患を持っている可能性を考慮する必要があります。
  • 腎機能
    造影剤による腎機能障害に厳格な用量反応関係は存在しません。造影剤の最大投与量を計算する式はいくつかの文献に記載されていますが、そのうちの1つは本書でも紹介しています(「造影剤誘発性急性腎障害の危険因子がありますか?」参照)。
    腎障害を避けるには水分補給が何よりも重要です。
質問13

造影剤は母乳中へ移行するか?

生理的なバリアはあるものの、経口または血管内投与されたヨード含有造影剤は母乳中へ移行することがあります。造影剤分子は拡散によって乳汁中へ移行するので、移行する造影剤の量は母体への投与量に依存します。

この他に、造影剤分子の物理化学的特性や母体からのクリアランスなどの因子も関連しています。この事項に関する研究は少ないのですが、尿路血管造影剤を母体へ静脈内投与してから24時間に母乳中で検出された最大の量は、投与量の0.5%とされています。(胆嚢・胆管造影剤は蛋白結合能が強いので、母乳中に最大約7%が検出されますが、ここではこれ以上触れません)

乳児の消化管に異常がなければ、飲んだ母乳から吸収される造影剤の量はきわめてわずかで、母乳中の造影剤の0.5%程度です。しかし少量とはいえ、まれに偽アレルギー /アレルギー類似の副作用が報告されています。

これに関して実際に主に重要なのは造影剤分子だけではなく、ヨウ化物の移動です(「造影剤と甲状腺」参照)。そこで濃縮されたヨウ化物が母乳中に分泌されます。

ヨウ化物は乳児の消化管から吸収され、これが甲状腺ホルモンの合成を阻害し、乳児の甲状腺機能低下を招くことがあります。治療しないと脳と心肺の発育不全を起こしかねません。

結論:母親は尿路血管造影剤の投与からおよそ5日間は授乳を控えるべきです。

訳者注:わが国では断乳期間は通常2~3日として、その間の水分補給と搾乳を薦めることが一般的です。

質問14

造影剤は男性と女性のどちらでよく作用するか、またより強くコントラストがでるのはどちらか?

一見すると、馬鹿げた質問のようですが・・・、しかし多くの集団で女性は男性より体脂肪率が高いことがわかっています。男性の方がより筋肉があります。そして脂肪の潅流は非常に低いこともわかっていますが、ここでは簡略化するために、潅流は問題にしないことにしましょう。もし同量の造影剤を同じ体重の男性と女性に投与した場合、造影剤は脂肪には分布されないので、分布容積は女性の方が小さくなります。したがって造影剤はより濃縮され、造影剤のコントラストはより顕著になります。実際にこのことは証明もされています。

除脂肪体重に応じて造影剤投与量を調整することで、そのような「性差」を防ぐことができるでしょう。この知見の臨床的および実際的な重要性については、今後判断する必要があります。

質問15

造影剤の中には造影剤以外のものも含まれているか?

これは予想外の質問かもしれませんね。造影剤の中には実際、添加物が少しばかり含まれています。例えば、

  • トリス緩衝液などの緩衝剤(造影剤のpHをある特定の範囲内、通常はpH7~8の生理的範囲で安定させます)。
  • キレート剤。製造過程で造影剤に混入したか、あるいは造影剤の容器の壁に付着していた重金属イオンと結合して、これを捕捉するために使われます。この重金属イオンは何よりも造影剤の分解の触媒となるのです。特に銅は造影剤分子からのヨウ化物の解離を促進することがわかっています。キレート剤を(ふつうはEDTAをCaNa2EDTAの形で)添加しておくと、この重金属イオンが捕捉され、ヨウ化物の解離を抑制するのです。このキレート剤に結合した重金属は、腎から排泄されます。

造影剤の中には造影剤以外のものも含まれているか?

他の注射剤と同様にバイアルに入った造影剤も、最悪の場合は微粒子を含む可能性があります。微粒子というのは、ゴム栓を不適切な針で刺してゴムを打ち抜いてできるゴムの小さな破片のことです。ですから、先端が丸くなったものではなく、尖ったカニューラを使う必要があります。

針のタイプや栓の材質に加えて、「針刺しの技術」もまた造影剤に微粒子が混入するかどうかを左右します。同じ場所で何度も針刺しすることは、栓の破片が生じるリスクを高めるので、避けてください。