症例・導⼊事例
はじめに
症例背景
60歳代、 男性、 81.5kg、 部分肺静脈還流異常
検査目的
主訴:特記事項なし
検査目的:近医での健康診断で指摘された胸部X線異常陰影の精査目的。
使用造影剤
イオプロミド370注シリンジ50mL「BYL」 / 48mL
症例解説
60代男性。近医での健康診断で施行した胸部X線検査で右肺下葉結節影と大動脈蛇行を指摘され、精査目的に胸部造影CT検査を施行した。CTでは、右肺下葉に2つの肺静脈還流異常が指摘され、部分肺静脈還流異常と診断された。特記症状はなく、経過観察の方針となった。
画像所見
撮影プロトコル
表は横スクロールでご覧いただけます。
| 使用機器 | CT機種名/メーカー名 | Aquilion Prime SP i / Canon |
| CT検出器の列数/スライス数 | 80列 | |
| ワークステーション名/メーカー名 | SYNAPSE VINCENT / FujiFilm |
撮影条件
表は横スクロールでご覧いただけます。
| 撮影時相 | 単純 | 45s |
| 管電圧 (kV) | 120 | 120 |
| AEC | Volume EC | Volume EC |
| (AECの設定) | SD 13.0 | SD 13.0 |
| ビーム幅 | 0.5×80 | 0.5×80 |
| 撮影スライス厚 (mm) | 0.5 | 0.5 |
| 焦点サイズ | Large | Large |
| スキャンモード | Helical | Helical |
| スキャン速度 (sec/rot) | 0.5 | 0.5 |
| ピッチ | 標準(PFO.813) | 標準(PFO.813) |
| スキャン範囲 | 胸部 | 胸部 |
| 撮影時間 (sec) | 7 | 7 |
| 撮影方向 | 頭⇒足 | 頭⇒足 |
再構成条件
表は横スクロールでご覧いただけます。
| 単純 | 40s | |
|---|---|---|
| ルーチン:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm) | 1 / 1 | 1 / 1 |
| ルーチン:再構成関数/逐次近似応用法 | AiCE Body Sharp Standard | AiCE Body Sharp Standard |
| 3D/MPR用:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm) | 0.5 / 0.5 | 0.5 / 0.5 |
| 3D/MPR用:再構成関数/逐次近似応用法 | AiCE Body Sharp Standard | AiCE Body Sharp Standard |
造影条件
| 自動注入器機種名/メーカー名 | デュアルショットGX7 / 根本杏林堂 |
| 造影剤名 | イオプロミド370注シリンジ |
表は横スクロールでご覧いただけます。
| 撮影プロトコル | 40s |
| 造影剤:投与量 (mL) | 48 |
| 造影剤:注入速度 (mL/sec)、注入時間 (sec) | 1.7、28 |
| 生食:投与量 (mL) | 20 |
| 生食:注入速度 (mL/sec)、注入時間 (sec) | 1.7、12 |
| スキャンタイミング | 造影剤投与開始45sec |
| ディレイタイム | ー |
| 留置針サイズ (G) | 22 |
| 注入圧リミット (kg/cm3) | 10 |
当該疾患の診断における造影CTの役割
部分肺静脈還流異常は、肺静脈の一部が体循環系に還流する先天異常で、成人での頻度は約0.1%と報告されている。異常還流する肺静脈の本数や、心房中隔欠損などの合併奇形により、動悸、呼吸困難、チアノーゼなどの症状を来しうるが、本症例のように無症状で偶然発見されることも少なくない。
異常血管は、右肺静脈の場合は上・下大静脈や右房、左肺静脈の場合は腕頭静脈、左上大静脈、冠静脈洞と、原則的に最も近い体循環に還流する。その中でも、右肺静脈から下大静脈へ還流する異常血管の走行は、単純X線写真正面像において三日月形の刀(scimitar)に類似していることから、scimitar signと呼ばれる。
本症例は、造影CTを施行したことで、右肺下葉の2本の還流異常を示す肺静脈を明瞭に描出でき、診断の確定に至った一例と言える。
以上のように、部分肺静脈還流異常の症例では、単純X線写真で異常血管が指摘されることがあるが、異常血管の詳細な評価には胸部CT、特に造影CTのMIP像やMPR像が有用である。
参考文献
- 村田喜代史ほか. 胸部のCT p850, メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2018.
- 芦澤和人編著. 困ったときの胸部の画像診断 p271, 学研メディカル秀潤社, 2019.
使用上の注意【電子添文より抜粋】
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら使用量を必要最小限にするなど慎重に投与すること。本剤は主として、腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続するおそれがある。[8.6、9.2.1、9.2.2 参照]