症例・導⼊事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

膠芽腫の1例

施設名: 広島市立北部医療センター安佐市民病院
執筆者: 放射線診断科 岡田 直大 先生
作成年月:2025年7月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

膠芽腫は高い増殖活性を有し、浸潤破壊性に進展する最も高悪性度の星細胞系腫瘍で、原発性脳腫瘍の9.1%と実質内腫瘍では最多である。非常に予後不良で平均生存期間は約1~2年とされている。症状はてんかん、局所神経症状、頭蓋内圧亢進症状(頭痛、嘔気・嘔吐、乳頭浮腫)、精神症状などが亜急性に進行する。出血を合併した場合には脳卒中様の症状を呈することもある。

ガドビストを用いたMRI検査の方法

手順と撮像 Sequence Parameter

手順と撮像 Sequence Parameter

撮像パラメータ

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撮像名撮像シー
ケンス
撮像時間TR
(msec)
TE
(msec)
TI
(msec)
FA
(deg)
b-value
(sec/mm2)
Fat Sat
(種類)
ETL,TF
(数)
Parallel
Imaging
(倍速数)
NEX,Averages
(加算回数)
T2WI Ax
PROPELLER
FSE
PROPELLER
1:3660001241602421
FLAIR Ax
PROPELLER
FSE
PROPELLER
2:34900012423701603221
DWI Ax b=
1000
EPI0:40500087.8100022
MRA Ax
3Slab
TOF-SPGR5:42283.420Fat1.75
MERGE AxGRE1:417704.8201
SWAN AxGRE4:3874.247.7152
3D ASL
PLD=2025
3D ASL1:47484310.520251552
SPGR Ax 3D
Pre
GRE Fast
SPGR
3:04104.515special1.751
+Gd SPGR
3D Post
GRE Fast
SPGR
3:04104.515special1.751
MRS SV
TE=35
PROBE-P3:00150035908
MRS SV
TE=144
PROBE-P3:001500144908

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撮像名FOV
(mm)
面内分解能
(mm)
リード方向
(matrix数)
位相方向
(step数)
Slice厚
(mm)
Slice Gap
(mm)
Slice枚数
T2WI Ax PROPELLER2200.57*0.5738438461.519
FLAIR Ax PROPELLER2200.76*0.7628828861.519
DWI Ax b= 10002201.72*1.38RL
128
AP
160
61.519
MRA Ax 3Slab1800.63*1.13RL
288
AP
160
1.20.6168
MERGE Ax2200.86*1.38AP
256
AP
160
61.519
SWAN Ax2400.83*0.98AP
288
RL
244
2.6-1.3116
3D ASL PLD=20252404036
SPGR Ax 3D Pre2200.69*1.15AP
320
RL
192
1.20.6304
+Gd SPGR 3D Post2200.69*1.15AP
320
RL
192
1.20.6304
MRS SV TE=35
MRS SV TE=144
MRI装置Signa Explorer 1.5T MRI - GE Healthcare
自動注入器Spectris Solaris EP - MEDRAD
ワークステーションSYNAPSE VINCENT - FUJIFILM

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造影条件 注入量(mL)注入速度(mL/sec)撮像タイミング
ガドビスト5手押し・造影T1強調画像(3D SPGR Ax.)
→造影剤投与後2分
・MRS SV(TE=35)
→造影剤投与後6分
・MRS SV(TR=144)
→造影剤投与後10分
後押し用
生理食塩水

症例

症例背景と造影MRI検査の目的

70歳代、男性、59kg、膠芽腫
脳腫瘍の精査目的

図1.T2強調画像
右側頭葉~前頭葉に腫瘤を認め、左方へのmidline shiftが見られる。周囲には浮腫状変化を伴っている。

図2.拡散強調画像
腫瘤には比較的軽度の拡散低下が認められる。

図3.MR perfusion
腫瘤の一部に血流亢進が示唆される。

図4.造影MRI
辺縁主体に造影効果を認め、内部には造影不良域が見られる。

症例解説

2週間前からの頭痛にて前医を受診し、CTで頭蓋内腫瘤や脳浮腫を認めたため、当院へ救急搬送された。当院で施行された造影MRIでは右側頭葉~前頭葉に約7.5×4cmの辺縁不整な腫瘤を認め、膠芽腫が疑われた。その後手術が施行され膠芽腫の診断に至り、手術後は化学放射線治療が施行された。

当該疾患の診断における造影MRIの役割

受診当日に施行されたCT/MRIにて偶発的に腫瘤が発見された。非造影のCTやT1強調画像、T2強調画像、拡散強調画像などでは腫瘤の存在や輪郭が不明瞭であることも多く、本症例のように造影を行うことで腫瘤の詳細な評価が可能となる。一般的には転移性脳腫瘍や脳膿瘍などが鑑別となり、その他のシーケンスや体幹部の所見、臨床データなどとも併せて診断を行うことが重要である。

  • 9.特定の背景を有する患者に関する注意【電子添文より抜粋】

    9.8 高齢者
    患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。