症例・導⼊事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

症候性 三叉神経鞘腫の一例

施設名: 公立館林厚生病院
執筆者: 放射線診断科 遠山 兼史 先生
作成年月:2025年6月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

三叉神経鞘腫はその10%ほどが頭蓋外に発生すると報告されており、片側性の顔面痛などの特徴的な症状にて受診するが多い。手術により機能およびQOLが阻害されている場合は手術の適応となることがあるが、発生部位により手術難度が異なることもあり、術前の画像にて進展範囲を詳細に検討する必要がある。

ガドビストを用いたMRI検査の方法

手順と撮像 Sequence Parameter

手順と撮像 Sequence Parameter

撮像パラメータ

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撮像名撮像シーケンス撮像時間TR
(msec)
TE
(msec)
TI
(msec)
FA
(deg)
Fat Sat
(種類)
ETL,TF
(数)
Parallel Imaging
(倍速数)
NEX,Averages
(加算回数)
flair traFLAIR2:42900011425001701821
t2 star traT2*WI1:4252220none20nonenone1
trufi traCISS2:316.242.7none70none21
t2 corT2WI1:574260102none1601021
t1 starvibe
fs sag
脂肪抑制T1WI3:443.291.83none9CHESSnonenone1
t2 tse traT2WI2:12400085none160922
t1 tse tra
3mm
T1WI3:3059813none1363none1
t1 se tra
fs ce
造影T1WI2:1764717none80nonenone1
t1 se cor
fs ce
造影T1WI3:1240017none80nonenone1
Gd t1 tse
tra 3mm
造影T1WI3:3059813none1363none1
Gd t1 tse
sag 3mm
造影T1WI3:3059813none1363none1
Gd t1 tse
cor 3mm
造影T1WI2:3243413none1603none1
t1 starvibe
fs sag ce
造影 脂肪抑制
T1WI
3:443.291.83none9CHESSnonenone1

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撮像名FOV
(mm)
面内分解能
(mm)
リード方向
(matrix数)
位相方向
(step数)
Slice厚
(mm)
Slice Gap
(mm)
Slice枚数Deep Learning Recon
(有無)
flair tra2200.43×0.43AP 256RL(85%) 19771.9620なし
t2 star tra2200.69×0.69AP 320RL(70%) 19671.9620なし
trufi tra1600.63×0.63AP 256RL(100%) 25611.220なし
t2 cor2200.49×0.49HF 448RL(60%) 2695130なし
t1 starvibe
fs sag
2500.98×0.98HF 256AP10.2192なし
t2 tse tra2200.57×0.57AP 384RL(65%) 22671.9620なし
t1 tse tra
3mm
1800.47×0.47AP 384RL(60%) 23030.630なし
t1 se tra
fs ce
2200.69×0.69AP 320RL(70%) 20771.9620なし
t1 se cor
fs ce
2200.69×0.69AP 320RL(70%) 21371.9622なし
Gd t1 tse
tra 3mm
1800.47×0.47AP 384RL(60%) 23030.630なし
Gd t1 tse
sag 3mm
1800.47×0.47HF 384AP(60%) 23030.630なし
Gd t1 tse
cor 3mm
1800.47×0.47HF 384RL(60%) 23030.623なし
t1 starvibe
fs sag ce
2500.98×0.98HF 256AP10.2192なし
MRI装置Magnetom Aera (シーメンス)
自動注入器
ワークステーションZiostation 2 plus

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造影条件 注入量(mL)注入速度(mL/sec)撮像タイミング
ガドビスト7.51.0・造影T1強調画像(全脳) Tra
→造影剤投与後2分30秒
・造影T1強調画像(全脳) Cor
→造影剤投与後5分50秒
・造影T1強調画像(病変部3mm) Tra
→造影剤投与後9分30秒
・造影T1強調画像(病変部3mm) Sag
→造影剤投与後13分10秒
・造影T1強調画像(病変部3mm) Cor
→造影剤投与後15分50秒
・造影 脂肪抑制T1強調画像(3D) Sag
→造影剤投与後19分50秒
後押し用
生理食塩水
201.0

症例

症例背景と造影MRI検査の目的

40歳代、男性、75㎏、三叉神経鞘腫
1ヵ月ほど前から左顔面の痺れ~疼痛、感覚低下を自覚。当院紹介となり、頭部MRIで精査された。

図1.T2強調画像 軸位断
左メッケル腔を占拠する腫瘤性病変あり、T2WIで高信号を呈する。

図2.T2強調画像 冠状断
尾側では頭蓋外に進展している。

図3.造影MRI 脂肪抑制T1強調画像 軸位断
左メッケル腔から橋前槽にかけて広がり、良好な造影効果を呈する。

図4. 造影MRI 脂肪抑制T1強調画像 軸位断
図3より尾側のスライスでは、左卵円孔が拡大し、腫瘍が通過している。

図5.造影MRI 脂肪抑制T1強調画像 冠状断
左卵円孔に沿って腫瘍が頭蓋外に進展している。

症例解説

単純MRIのT2強調画像では左メッケル腔から背側に突出する腫瘍を認め、三叉神経鞘腫と髄膜腫が鑑別となる。Gd造影剤の脂肪抑制T1強調画像では腫瘍は全体に濃染し、冠状断では卵円孔を介した頭蓋外進展が見られ、三叉神経鞘腫の可能性が高い。内側では海綿静脈洞を圧排、背側では橋の軽度圧排も見られる。有症状であり、手術が施行され、三叉神経鞘腫と診断された。

当該疾患の診断における造影MRIの役割

三叉神経鞘腫を確実に診断するためには、神経走行に沿った進展を確認することである。Gd造影剤を用いた3Dの脂肪抑制T1強調画像を撮影することで、thin sliceの造影CTと同様に後から再構成したMPRを作成するにより、腫瘍の進展方向を確実に診断することが可能であり、本症例には必須のシーケンスと思われた。