症例・導⼊事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

左下肢PADの症例

施設名: 医療法人社団日高会 日高病院
執筆者: 循環器内科 荒井 洋 先生、診療放射線科 高橋 咲子 先生、福島 輝泰 先生、須田 悟志 先生
作成年月:2025年1月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

症例背景

50歳代、男性、59.7kg、左CLTI

検査目的

維持透析患者。左CLTIにて紹介。
下肢CTAにて、左CFAに一部解離と高度狭窄、SFA近位に高度~subtotal
閉塞、Pop-trunkに中等度~subtotal閉塞。
下肢切断術前に血行再建目的にて下肢PTAが施行された。

使用造影剤

イオプロミド370注100mL「BYL」/ 170mL(CAG 70mL・下肢PTA100mL)

症例解説

血管造影施行。CFAに解離、SFA近位に99%狭窄あり。SFAをpoba。
poba後は造影も改善した為、CFA解離へのステント留置は見合わせ、SFAのみにステント留置。
続いてPop以遠を造影し、Pop 75%、trunk 100%、ATA 100%を確認。trunkをpobaし、SFA~PTA~planterまで造影遅延なく良好な血流を確保した。
ABIは測定不能な状態から波形が描出できるまでに回復。その後、整形外科にて足部切断を行った。

画像所見

図1.下肢CTA
CFAに解離と狭窄、SFAに閉塞(矢印1)、trunkに閉塞(矢印2)あり。

図2.下肢CTA CFA
CFAのCPR画像。矢印部に解離と狭窄が見られる。

図3.SFA Pre画像
血管造影にてCFAの解離(矢印1)、SFA近位に99%の狭窄(矢印2)が確認出来る。

図4.SFA poba
SFAの狭窄部をcuttingバルーンにて拡張。

図5.SFAステント留置
SFAに径6mm、長さ80mmのステントを留置。

図6.SFA poba2
ステント内部をバルーンにて拡張。

図7.SFA Post画像
CFAからSFAに良好な血流が確保されている。

図8.BK Pre画像
Pop以遠の造影。Popに狭窄、trunk(矢印部)とATAの閉塞が認められる。

図9.BK poba
trunkをバルーンにて拡張。

図10.BK Post画像
造影遅延なく良好な血流が確保されている。

撮影プロトコル

表は横スクロールでご覧いただけます。

使用機器血管撮影装置名 / メーカー名Infinix Celeve-i / キヤノンメディカルシステムズ株式会社

造影条件

表は横スクロールでご覧いただけます。

自動注入器機種名 / メーカー名ACIST CVi / ブラッコ・ジャパン株式会社
造影剤名 / 濃度イオプロミド370注100mL「BYL」
造影剤使用量(mL)170

通常当院では、下肢の血管撮影の際は、イオジキサノール270を使用するが、PADと同じく動脈硬化が原因となる狭心症や心筋梗塞の可能性もあるため、冠動脈造影も同時に行った。その為、イオプロミド370を使用しての下肢動脈の検査、治療となった。イオジキサノール270使用の際は、造影剤:生食を8:2で希釈して使用するが、イオプロミド370では、5:5の希釈で使用。総使用造影剤量は170mLだが、下肢では100mLの使用であり、結果として造影剤量を減らす事が出来、良好な造影効果が得られた。

当該疾患の診断における血管造影の役割

PAD(末梢動脈疾患)は、動脈硬化が原因であり、本症例は維持透析患者でもあるため、血管に石灰化が多く、CTだけでは血管の内腔の評価が困難な場合がある。また血流状態が悪いため、CTでは末梢まで明瞭な造影効果を得ることが難しい。血管造影を行うことにより、石灰化部分が閉塞なのか、狭窄なのか状態の把握が可能となる。また血流に合わせて移動しながら撮影をすることにより、最適なタイミングで画像を得られる。血管径の細い末梢血管においても、DSA撮影を行うことにより、明瞭な画像を確保し、正確な血管評価を行うことが可能となる。このため、下肢足先壊疽では血管撮影を行うことにより、末梢までの血流を確認し、病変部の治療を行うことで血流が改善され、下肢切断範囲を減らす結果に繋がる。

血管造影においての注意点としては、血流の悪い状態で造影剤を流すことで、熱感や疼痛を感じ、撮影の際に足が動いてしまい、撮影が上手くいかないことがあるので、患者への声かけや、足の固定などが必要となる。また、末梢血管の治療の場合は撮影回数が多くなる可能性があり、造影剤の使用量が増えてしまうことがあるので、注意する必要がある。