症例・導⼊事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

BPE(background parenchymal enhancement)がminimalである浸潤性乳管癌(ICD)

施設名: 埼玉医科大学総合医療センター
執筆者: 画像診断科・核医学科 後藤 俊 先生 / 中央放射線部 佐藤 浩彰 先生
作成年月:2024年10月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

検診で指摘された左乳房腫瘤に対してMRI精査を行った症例である。BPEはminimalで病変の同定は容易であった。拡散強調像では明瞭な高信号あり、ADCの低下を認め、細胞密度は高いと考えられた。造影MRIにて辺縁不整な形状である事が明瞭となり、ダイナミック早期相では辺縁優位に造影効果を認め、TIC( Time intensity curve)ではFast-plateauパターンを示し乳癌を疑った。

ガドビストを用いたMRI検査の方法

手順と撮像 Sequence Parameter

手順と撮像 Sequence Parameter

撮像パラメータ

表は横スクロールでご覧いただけます。

撮像名撮像シーケンス撮像時間TE
(msec)
TR
(msec)
TI
(msec)
FA
(deg)
Flipback
(有無)
Fat Sat
(種類)
ETL
(数)
P-MRI
(Reduction
Factor)
息止め
(有無)
T2 STIR TRATSE IR2:47sec645500180170Turbo factor
16
2
T1WI TRATSE2:32sec7.9550170Turbo factor
3
2
DWI TRAsingle shot
SE EPI
3:52sec72590090SPAIR
(chess)
EPI factor
76
2
3D TRA T1 FS3D GRE
(VIBE)
1:08sec2.394.7112SPAIR
(chess)
2
3D TRA T1 FS
(dynamic CE)
3D GRE
(VIBE)
1:08sec2.394.7112SPAIR
(chess)
2
3D Lt-SAG T1
FS (CE)
3D GRE
(VIBE)
3:00sec1.69511SPAIR
(chess)
3D Rt-SAG T1
FS (CE)
3D GRE
(VIBE)
3:00sec1.69511SPAIR
(chess)

表は横スクロールでご覧いただけます。

撮像名NEX
(加算
回数)
k-space面内分
解能
(mm)
Slice厚
(mm)
FOV
(mm)
Rectan
gular
FOV(%)
位相方向
(step数)
リード方向
(matrix数)
Slice
Gap
(mm)
Slice
枚数
3D
pertition
(数)
3D over
samplin
g(%)
T2 STIR TRA1Cartesian1.09×
1.09
5350100RL (90%)
288
AP
320
1.534
T1WI TRA1Cartesian0.91×
0.91
5350100RL (70%)
269
AP
384
1.534
DWI TRA6single
shot
1.56×
1.56
540059.4RL (100%)
76
AP
128
1.534
3D TRA T1 FS1Cartesian0.99×
0.99
135099.4RL (100%)
350
AP
352
1761default
3D TRA T1 FS
(dynamic CE)
1Cartesian0.99×
0.99
135099.4RL (100%)
350
AP
352
1761default
3D Lt-SAG T1
FS (CE)
1Cartesian1.00×
1.00
1256100HF (100%)
256
AP
256
1201default
3D Rt-SAG T1
FS (CE)
1Cartesian1.00×
1.00
1256100HF (100%)
256
AP
256
1201default
MRI装置SIEMENS Avanto Fit (1.5T)
自動注入器Nemoto sonic shot 7
ワークステーション

表は横スクロールでご覧いただけます。

造影条件 注入量(mL)注入速度(mL/sec)撮像タイミング
ガドビスト5.12.0dynamic
60sec
120sec
300sec
後押し用
生理食塩水
30.02.0

症例

症例背景と造影MRI検査の目的

50歳代、女性、51kg、浸潤性乳管癌
検診で左乳房に腫瘤が指摘され、精査目的にMRIを施行

図1.T1強調像
左乳房に低信号を示す1.5cm大の類円形腫瘤を認める。

図2.脂肪抑制併用T2強調像
背景乳腺と等信号を示し指摘困難であった。

図3.拡散強調像(b=800(s/mm2)
拡散強調像では明瞭な高信号あり、ADCの低下を認め、細胞密度は高いと考えられた。

図3. ADC map

図4.ダイナミックMRI 早期相
辺縁不整な形状であり辺縁優位に造影効果を認める。

図5.ダイナミックMRI 遅延相
Fast-plateauパターンの造影効果を示した。

図5.TIC

図6.造影後T1強調像
腫瘤の不整な形状や不均一な造影効果が描出されている。

症例解説

cT1cN0M0の診断となり乳房温存術、術後放射線療法が施行された。
病理では硬性型の浸潤性乳管癌と診断された。

当該疾患の診断における造影MRIの役割

病変の辺縁の性状、境界、内部の造影パターンの把握にダイナミック造影MRIが必須である。今回の症例は単発病変であったが、多発病変でBPE(background parenchymal enhancement)がある症例では病変部と非病変部の区別に注意が必要である。