症例・導⼊事例
はじめに
症例背景
10歳代、男性、36kg、静脈洞型心房中隔欠損症、部分肺静脈還流異常
検査目的
経胸壁心臓超音波検査で指摘された部分肺静脈還流異常の精査目的に心臓大血管CT施行
使用造影剤
イオプロミド300注シリンジ100mL「BYL」/ 68mL
症例解説
患者は学校の心臓検診の心電図検査で不完全右脚ブロックを指摘された。他院の経胸壁心臓超音波検査で部分肺静脈還流異常が疑われ、精査加療目的に当院紹介となった。造影CT検査で静脈洞型心房中隔欠損と右下肺静脈の下大静脈への流入を認めた。右室の拡大もみられ、将来的な右心不全や不整脈発症のリスクを考慮され外科的修復術が施行された。術後の経過は良好で、3ヶ月後の造影CT検査でも右肺静脈の還流に異常はなく、右心系の拡大は改善を認めた。
画像所見
撮影プロトコル
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| 使用機器 | CT機種名/メーカー名 | Aquilion ONE PRISM Edition / Canon |
| CT検出器の列数/スライス数 | 320列 | |
| ワークステーション名/メーカー名 | ZAIO Station / ZAIO soft |
撮影条件
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| 撮影時相 | 動脈相 |
| 管電圧 (kV) | 80 |
| AEC (mm) | 30 / 0.5 |
| ビーム幅 | 0.5×160 |
| 撮影スライス厚 (mm) | 0.5 |
| 焦点サイズ | L |
| スキャンモード | Helical |
| スキャン速度(sec/rot) | 0.275 |
| ピッチ | 0.125 |
| スキャン範囲 | 胸部 |
| 撮影時間 (sec) | 10 |
| 撮影方向 | 頭⇒足 |
再構成条件
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| 動脈相 | |
| ルーチン:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm) | 2.0 / 2.0 |
| ルーチン:再構成関数/逐次近似応用法 | AiCE Cardiac Standerd |
| 3D/MPR用:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm) | 0.5 / 0.3 |
| 3D/MPR用:再構成関数/逐次近似応用法 | AiCE Cardiac Standerd |
造影条件
| 自動注入器機種名/メーカー名 | デュアルショットGX-7 / 根本杏林堂 |
| 造影剤名 | イオプロミド300注シリンジ |
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| 動脈相 | |
| 造影剤:投与量 (mL) | 68 |
| 造影剤:注入速度 (mL/sec) | 3.0 |
| 生食:投与量 (mL) | 15 |
| 生食:注入速度 (mL/sec) | 3.0 |
| スキャンタイミング | 固定法 |
| ディレイタイム | 造影剤注入開始25秒後 |
| 留置針サイズ (G) | 22 |
| 注入圧リミット (kg/cm2) | 10 |
小児先天性心疾患では被曝低減を目的にスキャンタイミングを固定法で行っている。今回は肺動静脈還流異常の評価を主目的とし、冠動脈、心房中隔欠損の評価も兼ねていたため心電同期によるダイナミック撮影を行った。撮影後の3D作成を考慮し高いCT値になるよう造影剤の注入レートおよび撮像条件を設定した。
当該疾患の診断における造影CTの役割
心房中隔欠損(atrial septal defect: ASD)は、欠損孔の部位に基づいて二次孔欠損、一次孔欠損、静脈洞欠損(上位型・下位型)、冠静脈洞欠損に分類される。その中でも静脈洞欠損型は、心房中隔欠損全体の4-11%に生じ、さらに下大静脈近傍に両心房間の交通を認める下位型は非常に稀(ASD全体の1%未満)である1)。基本は左ー右短絡となるが、肺高血圧の進行により右ー左短絡の出現(Eisenmenger症候群)がみられる。他のASDの型と比較し、静脈洞欠損型は経胸壁心臓超音波検査では検出困難であることが多い。治療方針の決定には欠損孔の正確な位置やサイズ、冠動脈を含めた心臓の解剖学的構造の評価が重要であり、造影CT検査ではこれらの評価が可能である。また心房中隔欠損のおよそ30%に何らかの先天性心病変を合併するとされ、特に肺静脈還流異常の合併例は外科的治療となるのが一般的であり、他の心血管系病変の合併についても見落とすことがないように注意が必要となる2)。ただし、小児では造影剤を使用することや被ばくの問題があり、造影CT検査から得られる 3D 画像情報のもたらす利益が、放射線被ばくや造影剤による不利益を明らかに上回る場合にのみ実施される必要がある3)。
参考文献
1)
Brida M, Chessa M, Celermajer D, Li W, Geva T, Khairy P, Griselli M, Baumgartner H, Gatzoulis MA. Atrial septal defect in adulthood: a new paradigm for congenital heart disease. Eur Heart J. 2022 Jul 21;43(28):2660-2671.
2)
Geva T, Martins JD, Wald RM. Atrial septal defects. Lancet. 2014 May 31;383(9932):1921-32. doi: 10.1016/S0140-6736(13)62145-5. Epub 2014 Apr 8.
3)
先天性心疾患並びに小児期心疾患の診断検査と薬物療法ガイドライン(2018年改訂版)
使用上の注意【電子添文より抜粋】
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.7. 小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。