症例・導⼊事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

Perfusion CTで診断したMRI非対応埋め込み型心臓電気デバイス(CIED)留置患者の急性期脳梗塞の1例

施設名: 愛知医科大学病院
執筆者: 放射線科 山本 貴浩 先生、鈴木 耕次郎 先生
作成年月:2024年8月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

症例背景

90歳代、女性、41kg、急性期脳梗塞疑い

検査目的

約3時間前発症の脳梗塞疑い。現症は失語。頭部単純CTで異常なし。MRI非対応埋め込み型心臓電気デバイス (CIED) 留置中の患者の為、Perfusion CT+全身アクセスルートの造影CTを施行。

使用造影剤

イオプロミド370注シリンジ100mL「BYL」/ 96mL

症例解説

本症例では急性期梗塞の診断目的のPerfusion CTをまず撮影し、5分後に血管内治療用の全身のアクセスルートを撮影した。Perfusion CTでは左前頭葉のブローカ野にMMTの延長、CBF及びCBVの低下を認めた。本症例は発症から3時間程度であったが、CBF、CBVがいずれも低下しており、非可逆性虚血を生じていた。また、左中大脳動脈に粗大な血栓はなく、血管内治療は適応外であった。

画像所見

図1.頭部単純CT
異常所見なし。

図2.Perfusion CT (a) MMT, (b) CBF, (c) CBV
左前頭葉のブローカ野(〇)にMMTの延長を認める。CBF、CBVの低下はともに低下している。

図3.頭部CT Angiography
左中大脳動脈に狭窄や末梢の描出不良は認めない。

図4.頸部CT Angiography
頸部のアクセスルートに異常は認めない。

図5.胸腹部CT Angiography
腕頭動脈と左総頚動脈が共通幹(→)。 その他、アクセスルートに異常は認めない。

撮影プロトコル

表は横スクロールでご覧いただけます。

使用機器CT機種名/メーカー名Revolution CT / GE
CT検出器の列数/スライス数256 x 0.625
ワークステーション名/メーカー名①Vitrea / キヤノンメディカルシステムズ、②Ziostation / ザイオソフト株式会社

撮影条件

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撮影時相脳Perfusionアクセスルート
単純脳Perfusion頸部~脳血管大血管
管電圧 (kV)12080100100
AECスマートmA90mAスマートmAスマートmA
ビーム幅401604080
撮影スライス厚 (mm)0.6250.6250.6250.625
焦点サイズLSLS
スキャンモードHelicalConventionalHelicalHelical
スキャン速度(sec/rot)0.710.50.5
ピッチ0.984:10.984:10.992:1
スキャン範囲頸部~頭部頭部頸部~頭部胸部~骨盤部
撮影時間 (sec)7.5545.55
撮影方向足→頭固定足→頭頭→足

再構成条件

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 脳Perfusionアクセスルート
単純
(3D作成用)
脳Perfusion
(Perfusion解析用)
頸部~頭部血管
(3D作成用)
胸部~骨盤部血管
(3D作成用)
ルーチン:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm)5.0 / 5.05.0 / 5.05.0 / 5.0
ルーチン:再構成関数/逐次近似応用法StandardStandardStandard
3D/MPR用:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm)0.625 / 0.6251.25 / 1.250.625 / 0.6251.25 / 1.25
3D/MPR用:再構成関数/逐次近似応用法Standard / DLIR中Standard / DLIR強Standard / DLIR中Standard / DLIR中

造影条件

自動注入器機種名/メーカー名Dual Shot GX7 / Nemoto
造影剤名イオプロミド370注シリンジ

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撮影プロトコル脳Perfusionアクセスルート
造影剤:投与量 (mL)4056
造影剤:注入速度 (mL/sec)43.6
生食:投与量 (mL)2018
生食:注入速度 (mL/sec)43.0
スキャンタイミング固定BT法
ディレイタイム注入開始7sec後
留置針サイズ (G)20
注入圧リミット (kg/cm2)12

脳Perfusion+アクセスルートを造影剤1筒(100ml)で撮影した症例。最初に脳Perfusionを撮影後、Washoutを考慮して5分程度待ち、アクセスルートを撮影した。なお、アクセスルート撮影時の注入条件は、造影剤残量を加味しクロス注入法を用いている。脳Perfusion解析にはVitrea、脳血管および大血管3D作成にはザイオステーションを用いた。アクセスルートは頸部~脳血管+大血管を1回の息止めで完了できるようスキャン時間を短く設定してある。

当該疾患の診断における造影CTの役割

急性期脳梗塞の診断はMRIが一般的だが、MRI非対応埋め込み型心臓電気デバイス (CIED) 留置中の患者へのMRI撮影は禁忌である。その場合、急性期梗塞の診断にはPerfusion CTが有用である。また、MRIと異なり、Perfusion CTでは同一セッションで血管内治療用の全身のアクセスルートの評価が可能である。

CT技術や撮像プロトコル設定について

脳Perfusion+アクセスルートを造影剤1筒(100ml)で撮影した症例。最初に脳Perfusionを撮影後、washoutを考慮して5分程度待ち、アクセスルートを撮影した。なお、アクセスルート撮影時の注入条件は、造影剤残量を加味し、クロス注入法を用いている。脳Perfusion解析にはVitrea、脳血管および大血管3D作成にはザイオステーションを用いた。アクセスルートは頸部~脳血管+大血管を1回の息止めで完了できるようスキャン時間を短く設定した。

使用上の注意【電子添文より抜粋】

  • 9.特定の背景を有する患者に関する注意

    9.8 高齢者
    患者の状態を観察しながら使用量を必要最小限にするなど慎重に投与すること。本剤は主として、腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続するおそれがある。[8.6、9.2.1、9.2.2 参照]