症例・導⼊事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

造影CTで診断した巨大肝細胞癌の症例

施設名: 藤田医科大学病院
執筆者: 放射線科 永田 紘之 先生
作成年月:2024年2月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

はじめに

症例背景

30歳代、女性、38kg、肝細胞癌

検査目的

右上腹部違和感にて他院を受診し,CTで肝右葉を首座とする巨大肝腫瘍を認め,精査目的に当院紹介.

使用造影剤

イオプロミド370注シリンジ 80mL「BYL」/ 62mL

症例解説

肝右葉を首座とする24cm大の多結節癒合状の腫瘤性病変を認める.単純CTでは肝実質と等吸収を示し,内部に低吸収域や石灰化を伴っている.造影後早期動脈相から後期動脈相にかけて結節間でやや不均一な早期造影効果を認め,肝静脈相以降では肝実質より相対的に低吸収を示す.門脈本幹から一次分枝レベルにて明らかな造影欠損を認めない.肝細胞癌が疑われ外科的切除が施行され,高~中分化型肝細胞癌と診断された.

画像所見

図1 ‒ 5
固定法によるDynamic CTで、肝右葉を占拠する巨大腫瘍の造影効果を認めるのみならず、肝動脈・門脈の良好な描出を認める。

図6 ‒ 9
Dynamic CTの画像データより、腫瘍と肝動脈、門脈、肝静脈の3D画像の作成を行っている。

撮影プロトコル

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使用機器CT機種名/メーカー名Aquilion ONE Vision Edition / Canon Medical Systems Corporation
CT検出器の列数/スライス数320
ワークステーション名/メーカー名Ziostation 2 / Ziosoft

撮影条件

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撮影時相単純早期動脈相後期動脈相門脈相平衡相
管電圧 (kV)120120120120120
AECvolume ECvolume ECvolume ECvolume ECvolume EC
(AECの設定)SD : 13SD : 13SD : 13SD : 13SD : 13
ビーム幅4040404040
撮影スライス厚 (mm)0.50.50.50.50.5
焦点サイズSmallSmallSmallSmallSmall
スキャンモードHelicalHelicalHelicalHelicalHelical
スキャン速度(sec/rot)0.60.60.60.60.6
ピッチ5151515151
スキャン範囲上腹部上腹部上腹部上腹部上腹部
撮影時間 (sec)7.27.27.27.27.2
撮影方向頭⇒足頭⇒足頭⇒足頭⇒足頭⇒足

再構成条件

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 単純早期動脈相後期動脈相門脈相平衡相
ルーチン:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm)5 / 55 / 55 / 55 / 55 / 5
ルーチン:再構成関数/逐次近似応用法AiCE Body
Sharp STD
AiCE Body
Sharp STD
AiCE Body
Sharp STD
AiCE Body
Sharp STD
AiCE Body
Sharp STD
3D/MPR用:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm)1.0 / 1.01.0 / 1.01.0 / 1.01.0 / 1.01.0 / 1.0
3D/MPR用:再構成関数/逐次近似応用法AiCE Body
Sharp STD
AiCE Body
Sharp STD
AiCE Body
Sharp STD
AiCE Body
Sharp STD
AiCE Body
Sharp STD

造影条件

自動注入器機種名/メーカー名DUAL SHOT GX 7 / 根本杏林堂
造影剤名イオプロミド370注シリンジ

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 早期動脈相後期動脈相門脈相平衡相
造影剤:投与量 (mgI/kg)600
造影剤:注入時間 (sec)30
生食:投与量 (mL)なし
生食:注入速度 (mL/sec)、注入時間 (sec)なし
スキャンタイミング固定法
ディレイタイム造影剤注入から
25 sec
造影剤注入から
45 sec
造影剤注入から
70 sec
造影剤注入から
180 sec
留置針サイズ (G)20
注入圧リミット (kg/cm2)15.0

本症例は通常検査枠内での腹部造影CTのため、固定法で撮像しています.

当該疾患の診断における造影CTの役割

肝腫瘍に対する造影CT検査は,画像診断のみならず,外科手術のための血管構築も役割に含まれる.肝動脈,門脈,肝静脈と腫瘍の関係性が重要であり,多時相での撮影をすることで,本症例のように血管の3D画像の作成が可能である.