症例・導⼊事例

※ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

膀胱癌術後の尿道断端再発の診断にガドビスト造影MRIが有用であった1例

施設名: 埼玉医科大学病院
執筆者: 放射線科 原 佑樹 先生、小澤 栄人 先生、工藤 いづみ 先生
作成年月:2022年1月

※ 効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。

ガドビストを用いたMRI検査の方法

撮像パラメータ

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撮像名撮像
シーケンス
撮像時間TE
(msec)
TR
(msec)
FA
(deg)
Fat Sat
(種類)
ETL(数)P-MRI
(Reduction
Factor)
NEX
(加算回数)
k-space
T2WITSE2 min 50s99400015015GRAPPA 22cartesian
DWIEPI3 min 2s68650SPAIR
strong
1GRAPPA 2
DynamicVIBE1 min 22s1.544.215Fast Fat Sat-
uration
1cartesian

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撮像名面内分解能
(mm)
Slice厚
(mm)
FOV
(mm)
位相方向
(step数)
リード方向
(matrix数)
Slice Gap
(mm)
Slice
枚数
3D partition
(数)
3D実スキャン
(%)
3D over
sampling
(%)
T2WI0.6×0.6×3.032002243200.629296730
DWI1.2×1.2×3.0330089.61280.629290
Dynamic0.9×0.9×3.63.6280160.83200.7228287.1

使用装置と造影条件

MRI装置MAGNETOM Skyra
自動注入器ソニックショットGX
ワークステーション

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造影条件 投与量投与速度撮像タイミング
ガドビスト5.2mL1mL/secテストボーラス
後押し用
生理食塩水
20mL2mL/sec

症例

症例背景と造影MRI検査の目的

70歳代、女性、体重52kg、膀胱癌の尿道再発
膀胱上皮内癌に対し膀胱全摘+回腸導管造設後。術後2年目に残存尿道から出血が出現したため造影CTを施行。尿道再発を疑う所見を認め、さらなる精査目的でガドビスト造影MRIを施行した。

図1.腹部造影CT(A:単純、B:動脈相、CおよびD:遅延相)
恥骨結合部背側の残存尿道断端と思われる部分に、単純CTで20mm程の軟部濃度影を認める。造影後は辺縁に濃染が見られるが、内部の造影効果はあまりはっきりしない(→)。

図2.ガドビスト造影MRI(A:T2強調像像、B:拡散強調像、C:ADC map、D:造影前、E:40秒後、F:80秒後、G:遅延相)
CTと同様の部位にT2WIで軽度高信号、拡散制限を示す25×25mmの腫瘤を認め、dynamic studyでは明瞭な造影効果を呈している(→)。高いコントラスト分解能を有するMRIでは、先ほど提示したCTと比べ病変の検出が容易である。

症例解説

臨床および画像所見から、膀胱癌の尿道再発の術前診断のもと腫瘍切除が施行された。病理診断では、神経内分泌分化を伴う尿路上皮癌との結果であり、膀胱癌再発として矛盾しなかった。

本症例におけるガドビスト造影MRIの役割について

本例では残存尿道に比較的粗大な腫瘤が形成されていたものの、CTでは若干所見が不明瞭であった。しかし、MRIを追加で撮像したことで病変を容易に検出することができた。骨盤内には複数の臓器が隣接して存在しているため、MRIの高いコントラスト分解能が診断に有用であった。なお、当施設には尿道専用のプロトコルが無かったため、今回の症例では前立腺のプロトコルを転用して撮像している。

使用上の注意【電子添文より抜粋】

  • 9.特定の背景を有する患者に関する注意

    9.8 高齢者
    患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。